BOM(bill of materials )と部品表は厳密には同じかでない。部品種と使用個数があれば一応部品「表」にはなるが、BOMになると、これとこれを合わせてこれを作り、そっちのこれと組み合わせる、という作り手としての思想が込められる。階層構造によってはA部品はB部品ほど早く使用しない、ということになり、買いのタイミングを遅らせキャッシュフローを楽にする可能性がある。

部品表で十分ですよ、という会社は常に全量を全力購入、さらに製造プロセスも担当者の頭の中、と言っているに等しい。
いや、BOMを組むのも工数足りない、なんてところは開発が設計しながらBOMが出来上がるようなツールを導入しよう。BOMは開発が組むのか?製造が組むのか?議論のある会社なら開発内にBOM設計者をあてないといけない。製造でいきなりBOMを考えるのはかなり乱暴に思える。
今期の新製品はこれこれです。とマーケティング部門は示すが、それによってこれこれがなくなります(無くします)、とは言わないマーケティング部門は時々ある。風呂敷は広げるが畳むことがない。お客がある限り作り続けます、ということなのだが年間数台のビジネスを維持するコストは想定利益を上回ることに気付きにくい。
マーケティング部門のミッションに製品のトータルライフサイクル(開発から生産終了、サポート迄)を持たせることが大事になるが、製品の幕下ろしは手早くするに越したことはない。欧米に比べ日本企業はこの「引き際」が悪い。戦略的に切るものは切る判断が必要。増え続ける製品は材料品番の増加を意味し、あと工程である購買、製造のクビを絞めることになる。

扱っているSKU(stock keeping unit )の数を把握されてるだろうか。何品番マスター登録ありますか?という意味だが会社によってはSKU という言葉自体馴染みがないかもしれない。
SKUは増え続ける。毎日三件くらい登録してます、というところは果たして日々何件削除しているだろう。増える品番は在庫管理、ディスコン管理、仕入先管理を複雑化する。動いていない品番は定期的に見直して管理SKU数を適正値に保つ。重要なKPIの一つにしておくと良いと思う。

KPI(key performance indicators)の重要性は認知されているにしても購買部門の中で設定しているケースはなかなか少ない。新しい購買部長が入って一年以上経っても決まらないなんてところもある。一つに目標を決めると達成しない場合に部長の評価が下がる、という理由もあるだろう。ただまずは体重計がないことには健康状態がわからない。それに業界や会社によって適正値は違うのだから、まずは何か決めて測ってみよう、と会社ぐるみで気楽に取り組んでほしい。
納期遵守率
欠品発生率
リードタイム長さと安定度
一人当たりのハンドルした物量
受入検査合格率
仕入先品質達成度
等々
モノによってはシステムから単純に落とせない場合があるが、どうしても必要なデータであればクエリを作って簡単に取り出せるようにしたい。

煎餅菓子を作るプロセスは材料の混ぜ合わせ、カットし、窯で焼く、のように(多分)ある。それぞれのプロセスはチェーンのように連携して最終形をもたらす。最終形の品質を高めようと思えばそれぞれのプロセスに磨きをかけないといけない。
購買も同じで、いろんな会社で違うやり方には一見思えるが、実は共通なプロセスが必要とされる。発注計画⇨発注⇨納期管理⇨受け入れ⇨支払い。それぞれのプロセスの品質を上げれば「すごい購買」となるはず。それぞれのプロセスは他企業、他業界とのベンチマーク可能となり、将来的なブレイクスルーが生まれるかもしれない。
しかしながら購買をプロセスとして捉えられない会社は大い。プロセスオリエンテッドではない人オリエンテッドである。そうなる原因として担当者が社内の一事業向けに発注から受け入れ配送まで一貫して対応しがちな組織構成がある。きめ細やかな日本人的なサービスは裏を返せば、その人独自の属人化プロセスである。そういう組織は慢性的に忙しくして担当者はつらそうである。
もしプロセス指向がうまくいけば、会社としても効率アップ、担当者としても他の会社でも通用する汎用性あるスキルを得て、いいことだらけではないかな。

購買職は激務である。昨今市場予測は難を極めるので営業からのオーダーは上に下にぶれる。小さめの受注製造式の装置メーカーなどいったん受注が入ると祭り状態となる。何千となる構成部品の在庫状況、発注状況を精査しながらどの部品をいつ手配するのか?発注すれば納期管理、不良品の対応、受け入れ、支払いとプロセスは続く。うまくいけば当たり前、問題が発生すると叩かれるのが購買の常。社内での購買部の発言権は低い。おのずと若手はキャリアプランというものに疑問を抱く。去年と比して進歩したのか?会社に貢献したのか?購買責任者はこういった部員の言葉になら無い疑問に答える術を持たねばなら無い。

購買は利益を創出する部門としてより評価されなければならない。野球で言えば守備の要のキャッチャー、サッカーで言えば戦術を実行に移すハンドル役としてのボランチ。ロックバンドで言えば全体ノリを気持ちよくドライブさせるリズムセクション。元気のある会社は購買の人が勉強しているし活力がある。逆に元気の無い会社は購買担当者が定着しない。

数値的に今購買プロセスがどのような状況にあるのか、メンバー内でKPI(key performance indicator)が共有されているだろうか?去年の自分と今年の自分が理解できれば将来の予測も可能になってくる。

ちかごろセールスフォースなるサービスが流行っている。低価格で導入しやすいこともあり比較的小さめの会社でも入れているようだ。数年前に日本での宣伝イベントに参加したことがあるが、ベニオペ社長登壇時にストーンズのスタートミーアップなどかけたりして、かなりロックな会社なのである。ご存知無い方に簡単に言うと営業の活動をプロセスに分解し、案件各々の進捗をインプットさせ、数値化し将来予測しようというもの(他にもいろいろあるがもっとも知られているものとして)。営業マンはアポを取った見込み顧客に対して契約成立確率や営業プロセスの深度を入力すると営業部長は将来予測ができるという仕組みである。いかにも末端の従業員を疑ってかかるシステムでは無いか?? しかし日本の問題として、営業マンはなかなか契約成立確率を上げない。かなり受注できる、もしくは受注した、という段階になってセールスフォースに入力するのは日本人の「非有言実行主義」「頑張ったやつブラボー」的な気質に原因があるのではと思う。営業部全体としても言った事が出来ない、というのはネガティブに捉えられるので営業部長はさらに数字を下に読む。

さて、購買の立場からこれを見るとどうなるか。先月言われていなかった受注がどんどん入ってきて生産キャパはいっぱい、納期遅れ、営業からは「せっかく受注したのに機会損失しているのは購買の責任だ」論調で言われる。購買としてはいかなる対抗策があるのであろうか。

先月での予測数字と実際の今月数字の対比による予測精度の悪さは毎月ベースで指摘し原因を営業自身に考えさせたい。

また年間の販売予算を年間でどのようにブレークして毎月受注する予定か、それが外れた時はどこで挽回する予定なのか、営業に答えさせる事が必要だろう。受注が年始から低めに動いた場合期末に集中して挽回するのがかなり非現実な状況が見えてくる場合もありうる。

全体として、予測は予測、適宜修正して社内調整をおこなってバランスをとる、どこかの部門にしわ寄せし無いカルチャーは大事だと思う。

 

 

仕入先に発注予測を送っていない会社が多い。発注すればすぐ発送してもらえてますから、と担当者は言う。予測のないところに在庫を用意するのは大変だ。その分手間賃、さらには廃棄費用迄含めて値付けされていると考えて良い。
さて、それでは何とか発注予測を出したい貴方は営業部にかけあって先四ヶ月の販売予測を出してもらわないといけない。それがあれば部材手配の予測がつく。
「先の予測はできない」これが営業の常套句。我が社はシェアが低いから大口が取れるかどうかです云々。ともあれ自分の部の未来予測のできない営業部長の管理能力を憂う前に購買部門としてやることはいくつかある。予測がないとそもそも入手困難に陥ってしまう部品はないか。予測があればもっと安くなる高額部材はないか。予測が必要となる根本的背景をネタ集めしよう。
日本人気質として目標を公言して出来ない事を恐れるひとは多い。これについてはまた別の機会に。
熊本で地震が起きました。被災された方にはお見舞い申し上げます。
さて、地震などが国内で発生した場合、会社の調達は大丈夫か?と購買に問い合わせがある。「今の所問題ありません」(仕入先から問題があると言う連絡はありません)というところはヤバい。仕入先の本社が被災地に無くても工場や、また二次仕入先が被災地にあると言うことがある。素早くリアクションするためにはそういうデータベースを日頃から備えておく必要があるが、いつあるかわからない事態のためこういった活動は負担である。特に中小企業には難しい。
全仕入先の情報は難しいので経営に影響の大きいコア部材だけでもデータベースが欲しい。その他の部材については企業をまたいだで共有を構築する方向は模索していくべきだろう。
注文書に購買責任者の印鑑が押されていたとしても、それがメクラ判である…そんな会社は意外とよくある。何をいつ、どこに対して発注すべきか、は購買の仕事の一丁目一番地なのであるが、注文書に打ち出されているアレコレが、どのような仕組みでそこにあるのか?理解できていない責任者は果たして責任者と言えるのであろうか。世の中にはエムアールピーなる1960年代からの計算ツールもあるのだが、一介の購買担当者がエクセルの関数と鉛筆なめなめでこなしている会社はまだまだ多いのである。したがってその難解な関数を一から理解しようとしないそこここに管理職が居ても仕方ない事情もあるが、ホントはダメであるよ。一度発注仕事を購買部長もするべきです。数ヶ月後にはその発注結果を原因とした在庫管理で忙しくなります。先に悩むから後に悩むかの違いしかない。