セロトニンとトリプトファン | もものブログ

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41歳。元々疲れやすい体質で最近は更に体調悪化…でも少しずつ改善中。
妊娠&将来やりたい事の為に、今は体調を整えることが目標。
体質改善に向けて、健康、妊娠、アンチエイジング、栄養などの情報をまとめる為の自分用のメモとして、他のサイトからコピペしています。

こんなのも見つけた。
おもしろそうだったので。


~栄養学のメモと活用より~
http://d.hatena.ne.jp/kuiiji_harris/20100119/1263911266

 古い本ですが図書館で偶然『栄養と行動*1』なるものを見つけましたので、トリプトファンに関係する箇所でも見てみましょう。なぜトリプトファンなのかといえば、

 セロトニンは、私たちの気分を向上させ、幸福感をもたらす伝達物質である。(略)セロトニンは、脳内で必須アミノ酸のトリプトファンから作られる。だから、ふだんの生活でトリプトファンを多く含む食べ物を摂取するように心がけたい。
(『脳は食事でよみがえる*2』p172-173)
 また、『元気な脳を取り戻す*3』でも、脳を助けるサプリメントの欄に

 L-トリプトファンと5-HTPは、セロトニンの前駆物質であるアミノ酸だ。これらのサプリメントを摂ることによっても、脳内のセロトニン量を増やすことができる。
(『元気な脳を取り戻す』p341)
とありました。脳にいいのが本当なら、こりゃあひとつ試してみようかしらんと2年ほど前に思ったまま、取り立てて実行に移さず過ごしていたのを思い出したからなのでした。

合成経路
 脳にいいかどうかはともかく、まずはトリプトファンからセロトニンへの合成経路を見てみましょう。

血液中のトリプトファンが脳内に取り込まれる。
(脳のニューロンで)トリプトファンはトリプトファンヒドロキシラーゼで、5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)に変換される。
5-HTPは5-HTPデカルボキシラーゼによって、セロトニン(5-HT)に変換される。
 ここで、この反応の律速段階はトリプトファン → 5-HTPであって、脳内で普通に見られるトリプトファン濃度では、トリプトファンヒドロキシラーゼは未飽和であるといいます。ということは、脳内のトリプトファン濃度を増やすことができれば、まだ働いていないトリプトファンヒドロキシラーゼによって、5-HTPががっしんがっしん合成されるというわけです。

脳内のトリプトファン濃度はどうすれば上がるのか
 では、どうすれば脳内のトリプトファン濃度を上がるのか。

 トリプトファンは必須アミノ酸のひとつですから、当然多くのたんぱく質を摂ればいい、と思いがちです。しかし面白いのは、ラットを用いた実験によれば、高たんぱく質食を摂取させたラットは、血漿トリプトファン値は上昇したものの、脳内のトリプトファンとセロトニン量が低下した一方で、高炭水化物食(無たんぱく)を与えたラットでは、無たんぱく質食にも関わらず、脳内のトリプトファンとセロトニンの量が増えたそうです。

 多くトリプトファンを摂取したはずの高たんぱく質食のラットで脳内トリプトファン濃度が低下し、まったくトリプトファンを摂取しなかったラットで、それが上昇している。これは一体、どうしたわけでしょう。

 実は、脳内に入るためには血液脳関門を通過する必要があるのですが、高たんぱく質を摂取すると、トリプトファンとその輸送経路で競合するほかのアミノ酸(LNAAs*4)も増加するため、結果として血液脳関門を通過するトリプトファンが少なくなるんだそうです。

 逆に高炭水化物食(無たんぱく)だと、たんぱく質はないけれども、上昇した血糖からインスリンが分泌されて、それがトリプトファン以外のLNAAsの筋肉への取り込みを刺激するので*5、血漿トリプトファン/LNAAs比が上昇して、競合が少なくなって脳に取り込まれる量が増えるというわけです。

セロトニンは睡眠にも関係する
 トリプトファンから脳内で作られるセロトニンは、どうやらいろいろなことに関係していそうですが、そのひとつとして睡眠にも関わります。

 実験動物での研究では、5-HTは睡眠に重要な役割を果たすことを立証した。脳の5-HTレベルを低くする操作は不眠症を生じ、5-HTレベルを上昇させる操作は眠気を催させる。
(『栄養と行動』p223-224)
 トリプトファンは健常人の睡眠も増加させ、不眠治療に推奨されている。
(同 p224)
タンパク質よりも炭水化物食を摂った後の方が、女性達は眠気が強いようだといい、男性達はより沈静化したと述べている。これらの影響は朝食*6でも昼食でも起こり、被験者の年齢は影響なかった。
(同上)
 というように、脳内セロトニンレベルの上昇が落ち着き、鎮静、眠気をもたらして、不眠治療にまで活かされていることがわかります。

 さて、先ほど見たことが正しければ、高たんぱく質食の摂取は脳内トリプトファン濃度の低下をもたらし、セロトニン量を減らします。したがいまして、

炭水化物を少なく、タンパク質を多めに取る
睡眠の質を最高にする、ちょっと変わった夕食のとり方
と、睡眠の質を高めるために高たんぱく質摂取を勧めているけれど、これは少なくとも眠気に関してはマイナスに作用しそうな気がします。

 同様に、

セロトニンは脳内で作られ、その材料となるトリプトファンというアミノ酸は肉や牛乳から摂ることができます。肉ばかりそうそう食べるわけにもいきませんから、セロトニンのもっとも効果的な取り入れ方は牛乳をたくさん飲むことです。
ぐっすりネット
とこちらでもたんぱく質摂取を勧め、なかでも牛乳をお勧めしているわけですけれども、

 食事中のカゼインのような良質のたんぱく質は微量(熱量の約5%)でも脳のトリプトファンレベルへの炭水化物の影響をブロックすることができることに注目することが重要である。
(『栄養と行動』p222)
というので、逆効果になったりしないんでしょうか*7。

で、脳にはいいの?
 最初の疑問は、脳にいいのかどうかでした。

 実際のところ読んでみても「脳にいいか」なんて抽象的なことはわかりませんでしたが、冒頭の「幸福感」に繋がる抑うつについででしたら、それなりのスペースが割かれていました。

抑うつは少なくとも部分的にはCNS*8内のセロトニン活性の欠如によると仮説される。
(同 p227)
というのがそれで、冒頭の記述を追認してくれそうです。また、

多くのSAD*9患者は高炭水化物食を切望する。肥満している炭水化物切望者は、純粋な炭水化物食の摂取後に覚醒感と活力感を生じ、抑うつが減少したことを報告している。
(同上)
という記述も、これを補強してくれるものでしょう。

 しかしながら、これがこの本の素晴らしいところでもあるのですが、これらの仮説に対する問題点も挙げられています。

過剰な炭水化物摂取量というのが客観的に定義されていない。
高炭水化物食品と定義する食品の多くは、同時に脂肪も含む嗜好性食品が多い。
セロトニンニューロンは強力なフィードバック機構を備えている。
 1番目から、どの程度の炭水化物摂取量で覚醒感や活力感を感じたのかわからず、2番目から、単に嗜好品と幸福感が結びついてそれを切望しているのかもしれず、3番目から、食事の変化によって生じたセロトニン量変化の影響は、限定的であると考えられるというのです。

 まとめて考えると、SAD、PMS*10、COO*11を患う人が高炭水化物食品を摂取すると、脳の5-HTレベルがかなり変化し、そのために気分が改善する、という考えは疑問である。
(p228)
 このように、食事による脳内トリプトファン量の増加と気分の変化は、疑問符をつけられて終わっているのでした。

そうはいっても、古いんですけどね
 一方的な持ち上げ記事ではなく、反対研究や研究自体の問題点の記述があるなど、大変素晴らしい本だと思うんですが、残念なことに初版が1994年とかなり古くなっています*12。


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