春の嵐で空路大混乱~平成27年3月1日福岡空港滑走路閉鎖と羽田空港マイクロバースト 第1章~ | ごんたのつれづれ旅日記

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バスや鉄道を主体にした紀行を『のりもの風土記』として地域別、年代別にまとめ始めています。
話の脱線も多いのですが、乗り物の脱線・脱輪ではないので御容赦いただきまして、御一緒に紙上旅行に出かけませんか。

平成27年3月1日のことを語りたい。

仕事上の所用があって、僕は前日から福岡入りしていた。
その用事が済んだ午後5時過ぎのことである。
僕は、一緒に行ったYさん、Aさん、Sさんと福岡空港ターミナルビルの居酒屋で1杯やっていた。
日曜日の夕方ということもあり、空港は、各方面への便の出発ラッシュを迎えて大変な混雑だった。

午後5時以降の首都圏方面だけでも、

JAL324便  17時00分(羽田18時30分)
JAL326便  17時20分(羽田18時50分)
SKY20便  17時40分(羽田19時10分)
ANA264便  17 時35分(羽田19時10分)
JAL328便  18時00分(羽田19時30分)
ANA266便  18時00分(羽田19時35分)
Jetstar510便 18時30分(成田20時15分)
SKY836便 17時50分(茨城19時30分)
SKY22便 18時50分(羽田20時20分)
JAL330便 19時00分(羽田20時30分)
SFJ52便 19時00分(羽田20時35分)
ANA268便 19時20分(羽田20時55分)
ANA270便 19時45分(羽田21時20分)
Jetstar512便 19時55分(成田21時40分)
JAL332便 20時00分(羽田21時30分)
SKY24便 20時00分(羽田21時30分)
Jetstar514便 20時20分(成田22時05分)
ANA272便 20時50分(羽田22時30分)
JAL334便 21時00分(羽田22時30分)
SFJ54便 21時05分(羽田22時35分)
SKY26便 21時15分(羽田22時45分)
ANA274便 21時25分(羽田22時55分)

と、多数の出発便がひしめいている時間帯である。

昭和19年に建設された板付空港が前身の福岡空港は、市街地からごく至近距離ということもあって、その利便性が福岡市民にこよなく愛されている。
しかし、年間17万4000回という発着便数の多さに比して、長さ2800m×幅60mの滑走路だけであるため、 1本の滑走路における年間発着数が日本一であり、2分に1機が離着陸するという過密空港でもある。

第2ターミナルビル4階の一角を占める居酒屋「海幸」も、大いに賑わっていた。
僕らが席を占めた壁際のテーブルには、刺身の盛り合わせやしまあじ、ゲソの唐揚げ、活さざえなど、玄界灘の海の幸が所狭しと並んだ。
仕事が無事に終ったことも手伝って、話は大いにはずんでいた。

「そういえば、O先生は?」

と僕が聞く。
福岡には5人で来たのである。

「明日が早いからって、先に出ましたよ。18時の飛行機だったかな」

とYさんが答える。

「あれ?もうなくなっちゃった。追加、頼もうよ」

と、最年長のAさんが、赤くなった顔で徳利を振りながらつぶやき、Sさんが、

「あんまり飲み過ぎないで下さいね。帰れなくなりますよ」

と言いながらも、店員さんを大声で呼ぶ。
いそいそとやって来た店員さんに「何にしましょう?」と聞かれ、Aさんは壁にぎっしりと貼られたメニューに視線を泳がせていたが、いきなり「あっ」と叫び声を上げた。

「『獺祭』がある!ここ、『獺祭』が置いてあるの?」
「ございますとも」

と、店員さんは心なしか得意げである。

「じゃあ、『獺祭』の磨き二割三分、ちょうだい」

日本酒に疎い僕は、目をぱちくりさせた。

「『ダッサイ』って、そんなに珍しいお酒なんですか?」
「旨いんですよ、これが。滅多にお目にかかれないし、なかなか居酒屋に置いてある代物でもないんです。いやあ、ツイてるなあ、今日は!」

と、Aさんは幸せそうな表情である。

だが──

注文を聞いて奥に引っ込んだ店員さんが小走りで戻ってきて、Aさんに済まなさそうな顔を向けた。

「申し訳ございません。『獺祭』の磨き二割三分が、ただ今切らしておりまして」
「ええ?期待させといて、そんな殺生な……じゃあ、磨き三割九分は?」
「そちらも生憎切らしてまして。『獺祭』の大吟醸45ならあるんですけど」
「それじゃダメなんだよなあ」

と口の中で呟きながら、がっくりと首を垂れたAさんが、「獺祭」純米大吟醸45を頼んだかどうかは、憶えていない。
耳に残っているのは、テーブルに突っ伏したAさんの、

「あー、ツイてないなあ」

という、如何にも無念そうな声だけなのである。


山口県岩国市の「旭酒造」が造る「獺祭」は、 日本一とされる米の磨きの高さから、 ヨーロッパでもっとも権威あるモンド・セレクションにおいて最高金賞を受賞した、高名な日本酒である。
「獺祭」の意味は、獺が捕らえた魚を岸に並べて、まるで祭りをするように見えるところから、詩や文をつくる時に多くの資料を並べ散らかすことを指す。
同社のHPによれば、「獺祭磨き二割三分」は、当初、 25%精米歩合として計画された。
「磨き」とは、精米して雑味となるタンパク質などを取り除く作業のことで、磨けば磨くほど時間もかかり、生産コストも上がる。
自社保有田で育てた山田錦の玄米を精米し始めた後に、灘のメーカーが24%精白の純米大吟醸を販売していることが判明し、更に2%磨いて23%にするよう精米担当者に要請、既に精米を始めてから6昼夜が経っていたが、最後のたった2%を磨くために24時間かかったそうである。
この7日間にものぼる精米時間は、今も継承されているという。

このように引用しても、僕には「獺祭」の本当の凄みは実感できない。
Aさんの落胆ぶりを横目に盃を交わしているYさんやSさんは、僕よりお酒に詳しいのであるが、アルコールであれば何でも良いという人種であるから、Aさんの「ツイてない、ツイてない」という溜息に、どうしてそこまで拘るのかと訝しげである。
「獺祭」が飲みたくてこの店に入った訳ではないのだから、あればラッキー、品切れでも、そこまで落ち込む必要はないのでは、と僕も思う。

だが、今にして思えば、ツイてない、と繰り返すAさんの呟きは、この後の僕ら福岡出張組5人の、いや、この夜に空路を利用した多くの人々の前途を暗示していたのである。

これからの話は、ツイているように見えてツイていない、またはツイていないように思えても実はツイていたという話なのだ。


帰りの航空機は別々に航空券を手配したので、一足先に帰路についたO先生は18時発のJAL328便、YさんとAさん、 Sさんは19時20分発のANA268便、僕は19時発のJAL330便の座席を確保していた。

搭乗手続きと手荷物検査を済ませて、コンコースの人混みを抜け出した僕は、喫煙ルームで一服つけた。
喫煙ルームは、どの空港でも、搭乗待合室の隅っこに追いやられている。

帰りに通りかかったANAの搭乗口が、何となく、ただならぬ雰囲気のように見受けられた。
喧噪に紛れて聞こえにくいアナウンスでも、出発便の遅れを切迫した声音で繰り返している。
「機材故障のため」という言葉も混じっているようだ。

おやおや、Yさんたちは大丈夫か──

と心配になったが、この時点ではまだ、僕にとって他人事だった。

ところが、搭乗口に人々が並び始めたJALの搭乗口も、そのうちに雲行きが怪しくなった。
打ち合わせをしている係員さんたちの表情が曇ったのである。

「日本航空よりお知らせ致します。現在、福岡空港の滑走路は全面的に閉鎖されております。そのため、19時出発予定の羽田行き330便の御搭乗開始時刻は、現在のところ不明です。お急ぎのところを誠に申し訳ございませんが、今しばらくお待ち下さい」

とのアナウンスが流れたのは、午後6時30分頃であった。
待合室にひしめく人々の間に大きなどよめきが起きる。

最初は、

え?何を言ってるんだ?──

と、全くピンと来なかった。
どうやら僕もトラブルに巻き込まれたらしいが、航空機の遅延などという状況には全く慣れていないから、切実さがすぐには身に迫ってこなかったのだ。

機内モードにしていたスマホを取り出して情報を集めようとしたが、現場で聞いたばかりの事態が、ニュースに流れているわけがない。
JALのHPを開いて運行情報を確かめても、

「現在、滑走路閉鎖のため、福岡空港を発着する運航便に欠航、他空港へ向かうなどの影響が発生しています。御利用のお客様は、最新の運航情報を御確認下さい」

と、搭乗口のアナウンスと同じ内容が書かれているだけだった。


頼りになったのは、Twitterと、掲示板の2chであった。

この日の福岡空港の滑走路閉鎖は、18時10分である。
Twitterの第1報は18時30分頃、ちょうど僕がJAL330便に搭乗しようとしていた頃にアップされている。

「 福岡空港なんかあったの ( ・ω・ )  搭乗手続きも止まってるみたいだし 」

「福岡空港滑走路閉鎖されとるやん!」

「何があった?山手線並みのペースで離着陸を繰り返す超混雑空港の滑走路を閉鎖するなんて、只事じゃねーぞ」

「福岡空港がトレンド入りしてるから何事かと思ったら滑走路閉鎖ってマジで何事」

「福岡空港事故?滑走路閉鎖したの?帰れない?」

「嫁が福岡空港で難民化している模様。空港閉鎖ってどういうことなの」

「福岡空港 (FUK/RJFF) 羽田発JAL329便羽田にダイバート(つまり引き返し)。何が起こったんだ?20:15 JL329 Tokyo (HND)Japan Airlines 773 Diverted to HND」

「福岡空港、何かあった?Fright
trader24で見ると、5機ほどホールドかかってるんだが」

Flight traderとは、飛行中の航空機の実際の飛行軌跡を追うことができるアプリである。
ホールドとは、着陸許可が取り消されて上空待機を命じられたものと思われる。

Twitterには、福岡空港発の便や、他の空港からの福岡行きに乗ろうとして足止めされた人々の悲鳴や戸惑いが、次々と書き込まれていく。

「福岡空港で足止め、全便飛ばないらしい 。帰れるかな」

「今日福岡に帰れないかも。なんかあったの?福岡。具合悪いから、今すぐ帰りたい」

「どういうことやねん。帰るの何時になるんやか」

「このまま15分羽田で待ちらしい。えぇ…帰り何時になんの?大丈夫かなぁ」

「成田を離陸しかけた飛行機が、福岡空港のトラブルのせいで飛ばなくなった」

「福岡空港滑走路閉鎖ってwwwおぉ~い、修羅の国なにしでかした!!15分が30分に延びたしwww終電までには修羅の国着いてね?ね?」

「飛行機の中で待機中。早く帰りたいよー」

「羽田の飛ばない機内で待ちぼうけ」

この書き込みには、座席から見た窓外の景色が写った写真が付いており、窓が雨で濡れている。

そっか、羽田は雨か──

と、事態とは直接関係のない感慨が湧いてきた。
傘を持ってこなかったから、面倒だなと感じたのだ。
そんな心配をするよりも、東京に帰れない方が大ごとなのだが、どうしても現実味を帯びてこない。
どうしたらいいのかもわからない。

羽田だけではなく、国内外の空港で、出発待機を余儀なくされている便が出始めていた。

「福岡空港滑走路閉鎖で小松空港に足止め」

「福岡空港封鎖で、飛行機に1回乗ったけど降ろされた。今日帰れるんかな~」

「乗る予定のGK(Jetstar)510便は出発時刻未定に。旅行してて人生初めてのトラブルだなあ」

「Jetstar成田行き、欠便です」

「関西-福岡線MM(Peach Aviation)159便(19:40発)は欠航することとなりました」

「俺が乗る伊丹行きJAL2061は欠航の模様」

「これ、仙台に行けるのか?未だに待機中」

「最悪…かれこれ1時間近くPeachの機内に閉じ込められてます。なんてこったー」

「静岡空港にも影響が…FDA147便、熊本空港へDVTのため、折り返しのFAD148便はキャンセル!!」

「五島福江空港で待ちぼうけ~。さぁどーなる?どーする!?」

「福岡空港で離着陸できないとかで仁川の滑走路に止まったまんま(泣)」

「伊丹行きは欠航し、JRへの振替案内中」

「翌日以降への変更か払い戻し、だそうだが長蛇の列。SKYのホームページに記載がないので、取り敢えず他社で明朝を予約」

「泊まりになるんならホテル代はかからないんでしょ?と聞いたら、約款上出ない規定になってるらしい。明日の便に振り替えになるらしいけど、果たしてちゃんとスムーズに振り返られるかどうか。勘弁してくださいよ、もー」

「やばい…最悪…いつ飛ぶかわからん…広島行きの最終新幹線まで1時間以上余裕持っていたけど…これ絶対ダメじゃ…取り敢えずもう諦めて福岡までは絶対飛んでくれ!そしたら朝一の新幹線で広島帰って仕事に間に合う!このまま飛ばずに沖縄のままなら…もう泣く」

なるほど、沖縄から広島へ帰ろうとしたら、福岡空港を使うのか、と感心した。
空港と駅が近い福岡ならではの活用法であろう。
福岡空港は周辺の北九州空港、佐賀空港、宇部空港などと比べても発着数や結ばれている都市の数が多いため、地元ばかりでなく、山口県や佐賀県の利用者が少なくない。

ここまでは、航空会社の発表以上に詳しいことは書き込まれていないが、その後、続々と情報が流れ始めた。

「現在、福岡空港では、滑走路内にて トラブルを起こして停止中の航空機がいるとのことで、滑走路閉鎖中。 到着便が多数旋回待機しています」

「福岡空港でどこかの会社の機体のブレーキ不具合で滑走路内で立ち往生、離着陸不能の滑走路閉鎖状態。ダイヤ乱れまくってマス。復旧はまだなのか…そして俺の乗る便は何時に出発できるのか」

「福岡空港に到着した他機が油圧系統の故障で滑走路閉鎖中。動き出すも機内で待機となる。なかなかない経験です。他機は関空や熊本などに行き先変えて飛んでいるけど出発待ちの私たちは何時になったら飛べるのか?不明」

「福岡空港でANA264便福岡→羽田が滑走路端で止まっているね。B787機なんだよね」

「ANAの787型機が福岡空港の滑走路で立ち往生してるっぽいです」

「福岡空港、Twitterで検索した限りでは『出発予定だった機材(NHのJA817A)がタキシング中に誘導路でトラブルを起こしたために誘導路が塞がれ、同時にランウェイも閉鎖』という可能性が。NOTAMも」

「福岡空港滑走路閉鎖 全日空機ブレーキ故障で」

「福岡空港、機材トラブルの当該機材から客を降ろしてバスに乗せている模様」

「福岡空港は現在、飛行機の整備により滑走路が閉鎖になっています。どうやらB787のブレーキが故障して、その場で部品交換をしている模様」

「福岡空港滑走路閉鎖のきっかけを作ってしまったANA JA817A  Boeing787-881」


これで理解した。
どうやら福岡空港の滑走路上で航空機が立ち往生しているらしい。

出発便なのか到着便なのか、情報が錯綜したが、次第にはっきりしてきたのは、ボーイング787型旅客機を使用する福岡17時35分発のANA264便が、乗客を乗せて離陸する前にエンコして滑走路を塞いでいることである。

ボーイング787型旅客機は、日本のメーカーも加わって製造された最新鋭機であるが、バッテリーなどの不具合から、一時、飛行停止処分を受けた経歴がある。
書き込みにも、また787か、という反応や、787ならしょうがないか、という諦観が伺われる。

掲示板2chの第1報はTwitterより早く、18時58分に、

「福岡空港閉鎖の情報 福岡行きピ ーチMM288は長崎空港にダイバート」

と書き込まれている。
続報は少々間があいて、19時30分前後であった。

「客降り出したから修理に相当時間かかりそう」

「NH264のJA817Aがプッシュバック後に動けなくなったとのこと。トーイングできないということは、パーキングブレーキが解除できないのか」

「立ち往生は787か!」

「福岡空港で滑走路2時間閉鎖。全日空機が立ち往生」

「787の故障も久しぶりだな。こっちはボンQ以上の大騒ぎになって、世界中の航空会社がボーイングを突っつきまくって改善したんだっけかな」

「ちょうど滑走路上で表示されてるから、復旧具合までわかるなw」

「福岡空港でどこかの会社の機体のブレーキ不具合で滑走路内で立ち往生、離着陸不能の滑走路封鎖状態。ダイヤ乱れまくってマス。復旧はまだなのか…そして俺の乗る便は何時に出発できるのか」



個人の情報収集能力は限られているが、複数の人々が、たとえ相互に繋がりがなくても、それぞれの身に起きている出来事や情報を発信して集約すれば、マスコミに匹敵する情報に育っていく過程がよくわかる。

搭乗待合室の大きなガラスから外を透かして覗いてみたが、目をこらしても真っ暗なだけで何もわからない。
様々な色彩の滑走路灯が点在しているだけである。
駐機場には何機も飛行機が羽を休めている。
その向こうの滑走路を、いつもならば、轟音を立てて飛行機がひっきりなしに離着陸する筈であるが、この時ばかりは不気味に静まりかえっていた。

ANAの搭乗口までぶらぶら歩いてみると、ガラス窓いっぱいに、停止している787の機体が見えた。
地上で複数の係員が右往左往している。
滑走路ではなく、駐機場から誘導路にプッシュバックされたばかりの位置のようである。


17時35分発の便のトラブルなら、O先生が乗る18時発のJAL328便はどうなったのか。
係員さんに聞いてみると、JAL328便は定刻18時にプッシュバックし、駐機場で立ち往生しているANA264便を尻目に、滑走路閉鎖の寸前に離陸したとのことであった。
何とツイているのだろう。

出発前に、O先生から、

「一緒に18時の飛行機を予約する?」

と聞かれたことが、併せて思い出される。
せっかく福岡まで行くのだから、慌ただしく帰りたくない気がしたので辞退したのだが、誘われた通りにすれば良かったと激しく後悔した。

ツイてない──と思う。

どの搭乗口にも乗客が詰めかけて、係員に状況を問い詰めている。
僕もJAL330便の搭乗口に近づいてみたが、女性係員さんは、

「とにかく、他社さんの飛行機が滑走路を塞いでしまっているので、私どももどうしようもないんです。復旧の見込みも伝わって来ません」

といった意味の説明を紋切り口上で繰り返すばかりで、らちがあかない。
「他社さん」に力が入った物言いで、自分たちが悪い訳ではないから、という心情があけすけだったから、思わず苦笑した。
よくわかる心理ではある。


事件の現場の真っ只中にいると、全体像がつかみにくいことが多い。
だが、 Twitterの記事を追っていると、大きく広がる波紋が手に取るようにわかる。
福岡空港から、または福岡空港へ向けて出発できない便も大変だが、もっと大変なのは、福岡空港に向けて各地から飛行中の便だった。

「福岡空港発着の欠航便が続出 、 福岡着の便は引き返し、もしくは他空港(長崎や熊本)に着陸している模様 」

「ダイバート祭発生。福岡空港は滑走路1本の空港じゃ日本一の離発着数誇るから大変だよね」

「福岡空港、着陸便は上空で旋回待機や熊本や長崎などにダイバードしてる」

ダイバート(DVT)とは、目的地以外の空港に着陸を変更することを指す。
出発した空港に戻ることは、エアターンバック(ATB)と呼ぶらしい。

「ANA427伊丹発が熊本へ、JAL2061伊丹発が長崎へ変更。他の便も19:30まで着陸待機になってるみたいね」

「FUK周辺大混雑。長崎や熊本へのDVTも出始めた。他空港での福岡空港へ向かう便の出発機への出発待機措置も始まる」

「現在、福岡空港では到着便が多数旋回待機しています」

「以下の便がDVTしています。長崎へDVT ピーチ、スカイマーク。熊本へDVT ジェットスター」

「ANA427伊丹発→熊本へDVT、JAL2061伊丹発→長崎へ、SKY19羽田発→長崎へ、SKY021羽田発→神戸へ、GK515成田発→欠航。他の便もDVTや着陸待機になってるみたいね」

「福岡空港の滑走路が閉鎖されてるらしく、中部国際空港に戻ってきました」

「〈ダイバート発生〉羽田発福岡行き日本航空325便ボーイング777-200JA773J 熊本空港へ向かいました」

「〈ダイバート発生〉羽田発福岡行きスカイマーク21便ボーイング737-800JA73NR 神戸空港へ向かいました」

「〈ダイバート発生〉成田発福岡行き 全日空NH2143便ボーイング737-700JA02AN 佐賀空港へ向かいました」

「〈ダイバート発生〉那覇発福岡行きPeach aviation288便 エアバスA320-200 JA813P 長崎空港に向かいました」

「〈ダイバート発生〉南京発福岡行き中国東方航空2879便 エアバスA320-200 B-6976 関西国際空港に向かいました」

「『天草エアラインより、お詫び申し上げます。本日、福岡空港滑走路閉鎖により、使用いたします機材が福岡へ向けて飛び立てなかったため、止むを得ず欠航云々…』『…なお、福岡市内のホテルは本日、満室となっております』(残酷な定め) 」

「KE797便が迷走してる」

「〈エアターンバック発生〉釜山発福岡行き 大韓航空#KE797便ボーイング737-900HL7718 釜山金海国際空港に引き返しました」

「福岡空港に降りれないフライト続出してるね。釜山-福岡フライトかわいそうに」

「中部→福岡でフライト中だったJJP585は福岡空港の再開時刻が不透明なためか、出発地の中部に引き返しています」

「JALは1便が熊本に変更・1便が羽田引き返し。ANAは1便が長崎に変更・1便が羽田引き返し。SKYは1便が長崎・1便が神戸に変更。更にANAとSFAは各1便が北九州へ変更の場合ありで案内」


Wi-Fiを利用して、飛行中の機内かららしき書き込みも散見された。
なかなか臨場感がある。

「福岡空港の滑走路、故障機のために閉鎖中とかで、山口県上空で待機ちう」

「おいおいおいおい、燃料あと少しやから、急遽熊本空港てやばいやろ」

「那覇発福岡行きPeach、長崎空港へ着陸。40分後、那覇へ戻るかもしれませんとアナウンス。乗客みんな意味わからんでポカーンやで」

「は。20時までに福岡空港の滑走路確保できんことがわかれば那覇空港にリターンって!笑 おい!まじかよ!笑」

「この便に託された選択肢として、20時までに福岡空港に戻るか燃料補給のために那覇に戻るかだったんだけど、、、たった今、那覇空港にリターンすることが確定した。あーめん」

「壱岐上空が大変な事になってる」

「壱岐上空で待機中」

「もう毛玉になるんじゃないかってくらいグルグルと回ってて…酔うんじゃないかなーって心配してるす…パイロットさん頑張ってぇ…というか福岡空港早く復旧してー」

「 福岡空港のかわりに熊本空港やら長崎空港に着陸してるって、降りてからが大変だねー 」

「うおぉぉぉぉぉおおおおおい!笑 最後の最後でなにごと!緊急事態で、急遽長崎空港に上陸なう!OMG!明日までに死んでも帰りたいのに!おーいおーい!笑 いや、現在まったくもって笑えない状態。福岡空港で何起こってんの?滑走路閉鎖って、天候のせい?」

「あら、長崎空港に着いた。イヤホンしてて寝てたから全然状況知らんけど、なんか調べてたら福岡空港の滑走路閉鎖?」

「長崎空港に着陸。今日中に山口に帰れるかな」

「旦那さん、長崎空港行っちゃったよ」

「思いっきり足止めくらった!1時間ぐらいずーっと旋回しよって、結局長崎に着陸!タクシーで福岡空港まで行ってますけど何百人のタクシー代ハンパないよね!」

「伊丹-福岡のはずが長崎へDVT。長崎から福岡空港または博多駅までJALの負担でタクシー←イマココ」

「長崎なう。このまま燃料入れてまた福岡空港向かうらしいけど、まだ閉鎖中らしいわ」

「え、待って、欠航になったww自費で福岡空港まで帰れって言われたorz」

「ファっ!?福岡空港が滑走路閉鎖中で熊本空港に着陸!?」

「福岡空港閉鎖で熊本空港なう(泣)」

「福岡空港到着~のはずが、阿蘇熊本空港なう。で、これから熊本駅へ向かって新幹線で博多駅へ…何時頃帰宅できるのやら」

「妹が福岡でなく熊本から帰ってくるらしい(汗)それも自費…つらいな」

「いや~参った。飛行機飛ばないわ。でも福岡空港から長崎とかに着陸変えられた人達に比べればまだマシな方かな」

「かれこれ1時間半遅れてます。もう帰るだけだから、今日中に帰れればいいや」

中には、日本の航空行政や社会情勢についてコメントする硬派な書き込みも見られた。

「 ほら、普段北九州空港を蔑ろにしているから、こういうときに救いの手が出せない、福岡空港の閉鎖騒ぎ」

「福岡空港に着陸したら何とか小倉まで帰れるが、北九州空港からだとどう帰ったらいいのよ?」

「福岡空港は滑走路が1本の上に超過密な運行スケジュールだから大変だ」

「ホールド祭りじゃい。福岡空港は一体いつ2本目の滑走路完成するんだ」

「福岡空港、早く滑走路2本になりますように」

「日曜夜の福岡空港閉鎖って…影響が大きそうですね」

「福岡空港閉鎖でDVT出てるのね。この時間のフライトとか単身赴任者が福岡戻るとか多そう、可哀想に」

「福岡空港は22時までしか使えないからねえ…街のど真ん中で交通の便最高なんだけど」

「福岡空港の発着時間問題あるからあんまりかかると飛ばないかもなー。最終も21時前だったし」

「今日の夜DVTしてる機体多数なんですが明日飛ぶんですかね」

「明日の東京行きに響かなきゃいいけど、トラブるなんて珍しい」

2chでは、 Flighttraderを開いている2チャンネラーが多いらしく、福岡に向けて飛行中だった便の混乱ぶりが生々しく伝わってくる。

「NH427(伊丹-福岡)は熊本DVTか」

「NH427、長崎と熊本どっちに行くんだよ」

「ABL144(エアプサン・釜山-福岡)は壱岐旋回やめて諦めたか北上中」

「KAL797(大韓航空・釜山-福岡)も離脱、残るはAAR136(アシアナ航空・ソウル-福岡)のみ」

「AAR136は旋回じゃないな。なんかイラつきが伝わってくる軌跡だ」

「福岡空港クローズから1時間、アシアナが待ってますが、さて、どうなるか」

「次々と諦めてDVTしていく中、ひたすら待ち続けるAAR136」

「まだ粘ってるが、他に行ける国際空港ないのか」

「JL325(羽田-福岡)も熊本へ、NH2143(成田-福岡)はどこへ行くだろうか」

「北九州?一応福岡に近いけど、スタフラのコードシェア便で就航してるからな」

「NH2143はまさかの佐賀空港じゃないか?」

「NH2143、急旋回キタ───── ( ・∀・ ) ───── !!!!! 」

「やっべー定期忘れたーって感じの U ターンだな」

「RW16へアプローチ態勢に入っていたと思われるANA2143があり得ない角度から自宅上空を通過して今背振の山を越えたところ」

「これって福岡からの出発便も全部出られない状態なのか。よりによって日曜日に故障しなくてもいいのに」

「ライブカメラのこの右端のが787に見えるがどうだろう」

「787だね。その周りを動いている作業者らしきものも見える」


乗客が詰め寄るJAL330便の搭乗改札口の向こうでは、コクピットから降りてきたと思われる機長服に身を包んだ男性が、壁に寄りかかって別の係員と立ち話をしている。
その姿を見て、今夜は帰れないかも、という不安が、初めて心の中に頭をもたげてきた。

Twitterには、

「乗るはずの飛行機が欠航。あわてて新幹線に変更してなんとか自由席確保。お土産も買えず、ご飯も食べれず。おなかすいたよ~」

という書き込みもある。

福岡空港から博多駅は地下鉄で2駅という近さであるが、東京行き最終の新幹線「のぞみ」は、18時56分に発車してしまっている。
あとは岡山か大阪まで新幹線で行き、東京行き夜行寝台列車「サンライズ」に乗るという手もないわけではない。
しかし、空席があるのかどうかは、博多駅に行かないとわからないのだ。


ANAの搭乗口の方から、Yさんが1人でトボトボ歩いてきた。

「どうします?」
「いやあ、福岡市内に泊まるしかないかなって。一緒に行きます?」
「ホテル、取れたんですか?」
「これからです」
「いや、僕は、もう少しここで待ってみますよ」
「そうですか。先生もお気をつけて」
「お互いにね。明日、東京で会いましょう!」

すっかり酔いが覚めた表情のYさんは、首を振り振り、出口の方へ歩いていった。
僕は、明日の朝に出勤しなければならない。
東京で留守番をしている妻にも会いたい。
ここで、簡単に諦める訳にはいかないのである。

この頃、ようやくANAのHPにも次の書き込みがあった。

「ANA264 定刻17:35-19:15 欠航 使用する飛行機の整備のため、欠航となりました。お客様には大変御迷惑をお掛けしましたことをお詫び申し上げます」

それだけ?──


僕は、遅延がはっきりした時点から、自宅にいる妻に電話をかけて、新しい情報が入るたびに事情を説明してきた。
電話の向こうの心配そうな妻の声に、大丈夫、何とかなるよ、と心とは裏腹の楽観的な言葉を返すのが精一杯だったが。
飛行機のトラブルは、僕ももちろんだが、妻もほとんど経験がないとのことで、よく飲み込めない様子だったので、メールも併用している。

最初のメールは、18時52分である。

「福岡空港滑走路で何かが動けなくなっていて空港閉鎖でごんす。今しばらくお待ち下さいね。のんびり過ごしていてね」

「福岡空港滑走路で動けなくなっているのは、JALの人が『弊社機』と言っているから、JALの飛行機らしい。あかんですなあ。のんびり過ごしていてね。僕も気長に待ちます」

などと、焦っていたのか、聞き間違えもしている。


待合室では、人々が諦めたようにベンチに座っている。
搭乗口に詰めかける人の姿も減った。
福岡で1泊するか、新幹線に振り替えるために空港を後にした人もいたのだろうか。
床に座り込んで、ギターを弾き始めた若いグループもある。

午後7時50分頃に、再度、妻に電話をかけた。

「これはダメかもわからんね。これから博多へ戻って、ホテル探してみようかと思ってる」

Twitterで福岡市内のホテルはいっぱいとの情報は読んでいたが、妻を心配させるだけなので言わないでおいた。

「うん、しょうがないよ。寂しいけど我慢する。あなた、疲れたでしょうからゆっくり休んでね」
「何とか東京に近づきたいんだけどね……え?ちょっと、そのまま切らないで待ってて! 」

搭乗口で、係員がそれまでと異なる晴れ晴れとした表情でマイクを取り上げたのを目にした僕は、言葉を切って耳を澄ませた。

「日本航空330便を御利用の皆様にお知らせ致します!ただ今、滑走路があいたから間もなく閉鎖が解かれるとの連絡がありました。間もなく、搭乗を開始する予定です!」

それまでと全く異なる、ハキハキとした晴れやかな声色のアナウンスに、搭乗待合室の全域から一斉に歓声が上がり、拍手が湧き起こった。
その騒ぎに負けないよう、僕もスマホに向かって大声を張り上げていた。

「飛ぶよ!滑走路閉鎖が解除されて、もうじき飛行機が飛ぶって言ってる!今夜、君に会えるよ!」
「本当に?良かったあ!」

心底安堵したような妻の声に、僕も、小躍りしたいような浮かれた気分になった。

Twitterも、ほぼ同時刻に事態の新展開をフォローしている。

「福岡空港ANA264便は移動できたもよう。ランウェイオープンか」

「福岡空港に動きあり。ANA264/JA817Aがついにトーイングされてスポットに戻った。これで滑走路封鎖は終了か?」

という書き込みが、午後7時50分に見受けられる。

「福岡空港滑走路開放きた!帰れる!帰れるぞ!」

「福岡空港滑走路復活!飛びます!」

「福岡空港オープン!!! 飛行機やっと飛びます!よかった!」

「NOTAM 福岡空港のデータ更新された。もうすぐ滑走路オープンだ」

「福岡空港滑走路再開との放送@宮崎空港」

「よし、行けます。帰れます。福岡空港頑張りました!明日学校行くよーーー」

Fright traderで事態を見守っているらしい人々の書き込みからも、何となくホッとした気持ちが伝わってくる。
誰もが固唾を飲んでいたのだろう。

「福岡空港の滑走路閉鎖は解除された模様です。待機中だった航空機が着陸態勢に入りました」

「福岡空港、ようやく滑走路閉鎖が終了した模様、AAR136も壱岐上空のホールドから抜け出してる」

「福岡空港、ランウェイオープンになったみたいね。駐機場から誘導路にずらっと順番待ちする飛行機の大行列が壮観だろうなw」

「福岡空港openされたって!飛ぶ!帰れるー!」

「よかった~!帰れる~!本気で帰れんかと思った~!でも着くの何時になる~!」

「今から1時間遅れで羽田空港発~」

「今日は飛ばないかもしれないとホテルを探し始めたんだけど、今、飛ぶ見込みができたとアナウンス。ターミナルの人達の拍手と喝采。なんか楽しい」

2chも同様だった。

「ライブの787に動きがあった模様」

の書き込みが、午後7時48分だった。

「画面からいなくなったね」

「羽は映ってるぞ。右前にいる」

「機体にタラップ付けてるように見えるね。お客さん降りたのかな」

「羽は写ってるぞ。右前にいる」

ダイバートや上空待機を余儀なくされていた便にも大きな動きが見られたようで、2chは刻々とその模様を伝えている。

「AAR136、ようやく着陸へ」

「AAR136便が福岡空港目指して旋回行動を離脱したようです」

「次はANA267便が旋回解除、福岡空港へ向かってます」

このANA267便(羽田-福岡)は幸運だった。
2本前の263便は長崎へダイバート、1本前の265便は羽田へ引き返し、次の269便と271便は欠航という中で、福岡上空で待機して、無事目的地に着くことができたのである。

「お疲れ様~、さあ一気に離陸便が出て行く」

「えらく離陸便のエンジン音が続くなあと思ったよ@福岡空港南方10km」

注目の的だったAAR136便をはじめ、じりじりと上空待機していた飛行機が翼を翻し、息を吹き返した福岡空港に向かい始める様子が、目に浮かぶ。


不意に、シベリウスの「フィンランディア」の勇ましく希望に満ちた旋律が思い起こされた。

映画「ダイハード2」で、テロリストに空港や管制システムを乗っ取られ、燃料切れの危機と直面しながら上空待機を余儀なくされていた飛行機が、ブルース・ウィリス扮する刑事の奮闘で解放された空港に次々と着陸してくるシーンで使われていた曲である。
この映画を監督したレニー・ハーリンがフィンランド出身であることから、この感動的な場面のバックに「フィンランディア」を選んだと言われているが、抑圧から解放され嬉々とした人々の感情が、ぴったりであった。

同じ頃、Twitterでも、

「福岡空港、スターフライヤー飛んだ!」

「続いてデルタ航空ホノルル行きも飛んだ!」

「燃料入り次第、長崎から福岡へ飛びます!」

「JAL325!熊本空港~福岡空港へ飛んでるんだ。20:55発21:07着って12分か!さすが飛行機速いなぁ!!フライトレーダー見てたら見つけて興奮してしまった。巻き込まれたみなさんは大変だっただろうなぁ」

「熊本→福岡の飛行機ってすごい!」

「福岡空港閉鎖になり、急遽長崎空港に着陸。予定より3時間近く遅れて今やっと福岡空港に到着。支給されたのは小さいベットボトルの水のみ」

「夫の搭乗予定だったスカイマーク福岡空港発羽田空港行きは、長崎から飛行機を回すそう。で、羽田には深夜着。はー、もっと早く明太子でご飯食べたい。あ、違う!?」

「2時間空の上で待機。ダメなら 釜山へ…。えっ。えっ。どうにか福岡空港オープンしました。の声に乗客の歓声と拍手がひやひやです。国内線も乱れているって…。とりあえず遅延書もらった」

「福岡空港出発予定 22:00 だって!羽田に 24:00 だって!!明日の起床時間4:30なんですけど!てか電車あんのかよっ」

しかし、ダイバートした便の全てが、必ずしも福岡へ戻ったわけではなさそうである。

「JL315は熊本空港 KMJに着陸して、その後FUK に再就航。JL334は出発時刻未定。NH263は長崎空港 NGSにダイバード、なんと折り返しのNH268は勝手に NGS発に変更www」

「すごいね、長崎へDVTした便が、今度は福岡へ飛ぶんじゃなくて羽田行きになるんだ。確かに、羽田へ戻らないと明日困るんだろうね」

「ふぁー『ANA263、長崎着に変更となりました。この便は福岡空港への再就航は致しません』だとー!?」

この福岡空港全日空機立ち往生事件で影響を受けた便は、わかった範囲で以下の通りである。

JAL2061便 伊丹-福岡 長崎へDVT 、そのまま運航打ち切り
JAL325便 羽田-福岡 熊本へDVT、その後福岡へ再就航
JAL329便 東京-福岡 東京へ引き返し、その後福岡へ再就航
JAL6143便 成田-福岡 熊本へDVT、そのまま運航打ち切り
JAL6335便(Jetstar による運航) 中部-福岡 中部へ引き返し、その後福岡へ再就航
JAL3818便(FDAによる運航) 静岡-福岡 熊本へDVT、その後福岡へ再就航
ANA264便(故障機) 福岡-東京 油圧系統にトラブルが生じ、運航打ち切り
ANA263便 東京-福岡 長崎にDVT、運航打ち切り
ANA265便 東京-福岡 羽田に引き返し、運航打ち切り
ANA269便 東京-福岡 欠航
ANA271便 東京-福岡 欠航
ANA427便 伊丹-福岡 熊本にDVT、その後運航打ち切り
ANA1709便 関西-福岡 欠航
ANA2143便 成田-福岡 佐賀にDVT、その後運航打ち切り
ANA445便 中部-福岡 中部に引き返し、その後運航打ち切り
ANA3126便 宮崎-福岡 大分にDVT、その後運航打ち切り
ANA4940便 対馬-福岡 欠航
JTA60便 沖縄-福岡 関西へDVT、その後福岡へ再就航
MM160便 福岡-関西 欠航
MM288便 沖縄-福岡 長崎にDVT その後運航打ち切り
MM289便 福岡-沖縄 欠航
SKY19便 羽田-福岡 羽田-福岡 熊本へDVT、その後福岡へ再就航
SKY21便 羽田-福岡 神戸へDVT、その後福岡へ再就航
GK515便 成田-福岡 欠航
中国東方航空2879便 南京-福岡 関西国際空港にDVT その後福岡へ再就航
ABL144便 釜山-福岡 釜山に引き返し
KE797便 釜山-福岡 釜山に引き返し

翌日の新聞でも、この事件は大きく取り上げられた。

「福岡空港で1日夜、福岡発羽田行きの全日空264便(ボーイング787、乗客327人)が、滑走路に向かう誘導路で動けなくなり、空港が一時閉鎖された影響は、2日午前中のダイヤにも及んだ。
国土交通省福岡空港事務所によると、全日空の福岡発羽田行き、成田行きの2便と、スターフライヤーの羽田発福岡行きの計3便が欠航した。
いずれも午前6~同7時台の便で、前日便の欠航などにより、使用する機材が出発する空港に到着できなかった。
この日朝、福岡空港は、前日欠航した34便からの振り替え客らで混雑し、航空会社の受付カウンターの前には長い列ができた。
空港事務所や全日空によると、滑走路の閉鎖は1日午後6時10分から同7時44分までの約1時間半。
全日空機が車輪のブレーキの制御機器に不具合が生じ、ブレーキを解除できないまま誘導路で自力で動けなくなった。
故障機は1日夜のうちに部品を交換し、2日は予定通り運航しているという。
ボーイング787は最新鋭の中型旅客機だが、運航開始直後、バッテリーのトラブルが相次ぎ、日米の航空当局が一時運航停止を指示した。
全日空は「今回の故障とバッテリーのトラブルの関連はないとみている」と説明している。
空港事務所によると、滑走路閉鎖によって1日に欠航したのは全日空や日本航空、スカイマークなど9社の国内線34便。
また、長崎空港などへ行き先を変更した19便のうち、18便は国内線だった。
残る1便は中国・南京からの国際線で関西国際空港にいったん着陸し、同空港から滑走路が再開した福岡空港に1日中に到着した(西日本新聞)」


午後8時、JAL330便の搭乗が開始され、待合室の人の波が大きく動き出した。
他の搭乗口でも、次々と乗客がゲートを通っているのが見える。
約1時間遅れであるが、つい先程までは全く先が読めない状況だっただけに、どの顔にも安堵の表情が浮かんでいた。

Twitterでも、

「JALの羽田行き330便は搭乗が始まった。しかしお待ちいただくかもしれないというアナウンス。完全に復旧しないなら乗せないだろう。希望が見えてきたかな(^-^)」

という書き込みがあり、思わず頬が緩んだ。
僕の周りにひしめく搭乗客の、誰かが書き込んだのであろう。

だが──

誰にも予想すらつかなかったことであろうが、3月最初の日曜日の、空の旅人たちを見舞ったトラブルは、時間経過で言うならば、まだ半ばにも達していなかったのである。

「春の嵐で空路大混乱~平成27年3月1日福岡空港滑走路閉鎖と羽田空港マイクロバースト 第2章」に続く)

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