唐人町物語 第2話 | 宇宙の森探索

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風ノ意匠サスケの変態ブログ



第2話


黒門橋を渡ると焼け焦げた柳並木の枝向こうに

当仁小学校の校庭が広がっていた。

校庭と言っても戦時中に掘られた防空壕が今もそのまま放置され、うず高く積まれた土嚢の山があちらこちらに埃まみれで残っている。


早足で歩いていた京子の視界の端に

その時

何かが入った。


ん?あれは


校庭の隅、4.5人の小学生たちが遊んでいるその中に弟の愼二郎を見つけたのだった。

小学3年の愼二郎が5年生か6年生かと思しき少年たちと一緒に何かを蹴って遊んでいた。

ゾワッとした気持ち悪い寒けが京子を襲った。

鳥肌が立ち、足が震える。

が、次の瞬間、

京子は我を忘れて駆け出していた。

気がつくと嫌がる愼二郎を半ば抱き抱えるようにして家まで連れ帰っていたのだった。


姉ちゃん、なんばするとや!

せっかくオイが勝つとこやったとに


弟の愼二郎は上級生のお兄ちゃん相手に

何かを賭けて遊んでいたらしい。


シンちゃん、

あんた、あれが何か知っとると?

あれはねアメリカの飛行機が落としていった

爆弾とよ!


そんなん知っとるくさ。

ばってんあれは不発弾ばい。印ば付けた穴に早く

蹴り入れた者があればもらえるっちゅう

勝負ばしよったったい。

せっかくオイが勝ちそうやったとに。


弟はよっぽど悔しかったらしく、

頬っぺたを真っ赤に膨らませて涙目になっている。


その時だった。

小学校の方向からドーン!という鈍い爆発音が響いてきた。


あ!


京子と愼二郎は顔を見合わせた。

もしかして、あの不発弾が、、


今にも飛び出そうとする弟を

京子はそれこそ死ぬ気で抱き寄せた。


ダメ!行っちゃダメ!

見たらいかん!

シンちゃん、あんたは見たらいかん!


愼二郎を抱きしめながら、京子の脳裏には

あの着物姿の老婆の姿がクッキリと浮かび上がるのだった。


「あなた、早く帰りんしゃい」




あの人は


いったい、、、だれ?





つづく



(この物語は事実を元にした創作です。

登場人物の名前は全て仮名です)