独断で選んだスティーリー・ダンの傑作/秀作カヴァーをシェアします。玉石混交、相当な量のカバー・バージョンがあるけれど、結構いいんじゃない?と思えるレンディションを集めてみた。複数のミュージシャンが参加しているいわゆるトリビュート盤は外した(あまり良いのがないのも事実orz)。Youtubeに上がっていない、もしくは著作権問題で聴けないものはとりあえず、今回は除外(いずれまた書きます)。

 

それでも、なかなかの名演奏があり、SDの演奏だけでなく楽曲そのものが「お好きな方」は楽しめるのではないかと。こんな分析現代ポピュラー音楽作曲の技法を考える/不定調性論のブログ)もある。

 

 

 Sara Isaksson & Rebecka  Törnqvist, "Barrytown"(2006)

 

 

サラ・イサクソンとレベッカ・トーンクウィストのスウェーデン女性シンガー・ソングライターのコラボによる全編Steely Danカヴァーのアルバム"Fire In The Hole”から。スウェーデンの北欧森林レンディションと言おうか。アコースティック楽器と2人の女性のハーモニーが主体となって、サウンドは透明感に溢れ美しいのだが、例えば"Josie"のような都会に近いシーンを前提としてた曲が、この人たちにかかると閉鎖的な田舎のホラーに転じる。残念ながら今のところ日本未発売。プレス数が少ないのか米国Amazonでも入手困難。

 

ところで、”Barrytown”にはXTCによる強烈なアレがあるが、まあSteely Dan自身もアレはあるので、目くじらは立てないのだ。

 

 


Ana Popovic, "Night by Night"(2003)

 

 

アナ・ポポヴィッチは旧ユーゴスラビア(現:セルビア共和国)、ベオグラード生まれのは美人女性ブルース・ギタリスト。Night By Nightではイカしたワウ・ギターのソロを聴かせてくれる。一発当てようと夜毎歩き回る男のブルースをしっかり表現してくれている。この人のストラト、かなり良い音が出ているように思うのだけれど。興味のある方はこちらを。タフでセクシーな"Night By Night"だ。

 

 

 

Ricky Lee Jones, "Showbiz Kids"(2000)

 

 

今や大御所のリッキー・リー・ジョーンズによるSD初期の曲のカヴァー。怪しさとダーティーさ全開。Steely Danでもドラムを叩いているリック・マロッタが参加している。

 

 

 

Herbie Hancock, "Your Gold Teeth II"(1996)

 

 

ハービー・ハンコックによるFull Jazzレンディション。あまり言う事もないのだけれど、結構気合いが入っているように感じるのは気のせいだろうか。アルバムは"New Standards"。割とアヴァンギャルドな選曲だね。

 

 

 

The Sneaker, "Don't Let Me In"(1981)

 

 

カヴァーというかスピン・オフというべきかも知れない。なぜならこのグループのリーダーは、元SDメンバーのジェフ・”スカンク”・バクスターだ。彼らしいスリリングでよく考えられた曲のアレンジとギターソロが良い。"Don't Let Me In"はスティーリー・ダンとしては正式リリースしていない、いわゆるOuttrackだが、ストレートに切ない(彼らは嫌うだろうが)良い曲だと思う。

 

デヴィッド・フォスターとか、エド・グリーンとか、パウリーニョ・ダ・コスタなどが参加していて結構ハイ・クォリティなのだが、忘れられた名盤だったりもする。

 

 

Jeff "Skunk" Baxter, "Rikki Don't Loose That Number"(2016)

 

 

このクリップは、ジェフ・バクスターつながりのおまけ。2016年に行われた、NAMM(National Association of Music Merchants)のショーのクリップ。バクスターがエフェクター・ペダルでちょっと戸惑うところと、ネイザン・イーストのベースがいいね。これはレコーディングされていないので、このYoutubeのクリップのみ。

 

 

 

Simon Apple Band, "Pretzel Logic"(2005)

 

 

サイモン・アップル・バンドは、米国ペンシルヴェニア州フィラデルフィアの地場のロックバンドだが、プログレッシヴ・ロックのコピー・バンドからスタートし、今では2枚のアルバムをリリースするレコーディング・アーティストとなっている。プログレの要素というより、プログレが持つブルースの要素をうまくアメリカン・ロックに融合している印象だ。残念ながら上のクリップは、「さわり」だけだが、iTunes Music Storeなどで簡単に手に入る。なかなか迫力があって良いです。

 

 


Kyle Gass Band, "Reeling’ in the Years"(Unknown)

 

 

いや、どうみてもちょっとギターの上手いフツーのおっさんたちでしょう。見ただけでむさい。でもこういうバンドやってみたい。たまたま見つかったバンドだけど、ウケた。ちょっぴり進歩系でぶっ飛んでる女子に振り回されて捨てられる男子のアンセムだしね。

 

 

 

Ivy, "Only A Fool Would Say That"(2002)

 

 

どこか結成時のWorkshyを思い出す感じのグループだが、この声でこの辛辣な内容の歌詞を唄わせるセンスがとっても気に入っている。ドリーミーに平和や自由を語るアイコンに対して、「そんなことを言うのは馬鹿だけさ」と。N.Yのインディー系も奥が深い。おしゃれ。

 

 

 

Kyle Bronsdon, "Kid Charlemagne"(2005)

 

 

ギリシャ人のジャズ・ピアニスト/シンガーのカイル・ブロンズドンによる名作"滅びゆく英雄"のカヴアー。アルバート・ホフマンが発見したLSDの自家抽出に成功したオウガスタス・オウスレイ・スタンレーJr.を題材にとりその栄光と挫折を歌ったハードボイルドな逸品だ。このレンディションは、ホフマンの発見とスタンレーの失意にフォーカスしたブルース・バラッド。映像もその解釈に従って映画や写真などさまざまな素材がカットアップされている。ブロンズドン本人によるuploadだ。ラリー・カールトンの伝説のソロを期待する向きには残念かも知れないが、曲の良さがよく分かる。

 

 

 

Anne Farnsworth, "Deacon Blues"(2012)

 

 

ジャズ・シンガー/ピアニストで、音楽教師で、音楽ジャーナリストのアン・ファーンズワースのレンディション。シンプルなピアノ主体のジャズ・コンボだが、聴いてお分かりの通りグルーヴがタダ者ではない。それもそのはず、レオン・”ヌドゥグ”・チャンクラー(ds)とアルフォンソ・ジョンソン(b)の”ウェザー・リポート”リズム・セクションだ。ベースソロ、サックスソロの背後で暴れるドラムなどで、見せ場を作っている。伸びのあるベースとタイトに歌うグルーヴでファーンズワースのピアノがリリカルに舞う感じ。オリジナルのTom Scottホーンズのメロディをピアノが上手くオーケストレーションを再現している。

 

歌詞もちゃんと「女歌」になっていて、崩し方もフェイゲンがライヴでやるように、音を直線的に伸ばすのを主体にしている。なにより、ハスっぱな感じの声と歌い方が、「誇大妄想に憑かれた女」の歌の情感を引き出している。

 

 

 

Nerina Pallot, "Peg"(2007)

 

 

ちょっぴりテイラー・スウィフトを思わせる声質を持った英国のシンガー・ソングライター、ネリーナ・パロットのレンディション。キャッチーで、電子ビートで可愛い。ケイリー・ミノーグらに曲を提供している。なかなかツボを押さえたアレンジ。

 

 

 

Michael Paulo, "Home At Last"(1997)

 

 

典型的な80年代スムース・ジャズ・サウンド。途中のブレークのサキソフォン・ソロがチャーリー・パーカー風なのが良い。チャカ・カーンの”チュニジアの夜”のチャーリー・パーカーを思わせる。オリジナルに比べるとゴージャス&Sweetすぎるが、このサキソフォーン・ブレークで違いを引き出している。

 

マイケル・パウロは日系人で、そもそもはハワイのカラパナのメンバーだった。デヴィッド・ガーフィールドやハービー・メイソンなど、様々な作品で吹いている。

 

アルバムの発表年を確認しにAmazonみたら、廃盤になってプレミアム付いてる。

 

 

David Garfield, "Josie"(2011)

 

 

David Garfieldによるカヴァーで、ソウル風のレンディションだ。オリジナルからすると少し品のない感じだが(オリジナルは品があるからその歌詞の内容と相まって余計に効果がある)、エンディングにむけてのギターソロが頑張っていて、少しアウト気味に展開していくのが評価ポイント。むろんガーフィールドのバンドは一流ぞろいなので演奏は悪くない。

 

---

今夜はこんなところで。S.Dのカヴァーは玉石混交で面白いけど、比較的聴けるレンディションをそろえたつもりだけけど、もっとイケてるのもある。YouTubeでは聞けないけれど、次回はアルバム紹介で行きたいと思う。

 

 

See Ya, Good Luck!