B型事業所とは何か | 社会保障を考える

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障害者福祉施設の報酬改定では放課後デイサービスが問題視されていますが、B型事業所も減収に苦労しています。厚生労働省は工賃アップだけを物差しにして報酬を決めたようだ。だが、工賃アップだけが基準になるとB型事業所とは何かということが問われるのではないか。工賃アップに貢献したという評価は別の方向で可能だ。

 

「B型事業所、多くが減収に 報酬改定「福祉主眼」を直撃

 障害福祉サービスを提供する事業所に支払われる国の基本報酬が四月に改定され、一般就労が難しい障害者が働く「就労継続支援B型事業所(B型)」の多くが減収となっている。利用者に支払う工賃の金額に応じて報酬が七段階に分けられたことなどで、大半のB型で報酬が下がったためだ。しかし、福祉の意味合いを持つB型では、収益を上げて工賃を上げるのは容易でなく、今後の運営を不安視する声も上がっている。

 「ここに来ると生き生きする。ここがいい。でも、工賃は本当に安い」。名古屋市のNPO法人「つくし」が運営する愛知県春日井市のB型「聴覚・ろう重複センター桃」。休憩中、愛知県犬山市から通う盲ろうの女性(70)が手話をすると、同僚たちがどっと笑った。

 だが、法人代表の村上栄子さん(66)の表情は晴れない。「報酬改定で前年より百万円は減収になる」。箱を折る内職の収入は箱一個につき〇・七円。別の内職や自主製品販売の収入もあるが、毎日通っても平均工賃は月約千円。事業所が受ける報酬は、七段階で一番下だ。

 センターは、高齢なろうの人の行き場をつくろうと十三年ほど前に開所。一日に五十~九十代のろうや盲ろうの人たち十五人ほどが作業する。居場所づくりが目標だったため、作業以外も重視する。点訳されていない行政文書の説明などの生活支援や、卓球などのレクリエーションもあり、利用者たちの交流の場となっている。

 しかし、最近は「就労に重きを置いて」と行政から指導を受けることもある。「一日の利用者を増やし、仕事をさせれば収入が増え工賃を上げられるかもしれない。でも、通院日もあり無理して来てもらうわけにいかない。意思疎通が難しい利用者の支援には手間が掛かり、大勢を受け入れるのも無理。国はこういう部分は考慮してくれない」

 工賃を引き上げてきたB型でも、報酬が下がるケースがある。名古屋市の「ワークセンターフレンズ星崎」は、ダイレクトメールの発送代行業をする。十年前の工賃は月約一万五千円だったが、収益性の高い業務に切り替えるなどで、現在の平均工賃は月五万円で、報酬は一番上の区分になった。ただ、昨年度までは、国の制度で工賃が県の最低賃金の三分の一以上をクリアしたことによる加算があったが、報酬改定でこの加算がなくなった。

 利用者を増やして報酬の減額分を補い、減収は回避できたものの、所長の山崎利浩さん(43)は「頑張っているB型がマイナスになっているのはおかしい。このやり方では、小規模の事業所で、職員を減らさざるを得ないところも出てくるのでは」と危惧する。

 

◆「役割と真逆の方向」

 障害者向け作業所の全国組織「きょうされん」が三月に実施した報酬改定の影響に関する調査では、全国の七割で減収が見込まれた。改定後の実態調査は八月下旬にまとめる予定だが、担当者は「見込み通りの結果となりそうだ」と話す。

 調査では、平均工賃が一万円を下回る事業所で報酬が減る傾向が見て取れた。担当者は「障害が重く、短時間しか勤務できない、毎日は来られないといった利用者ほど、福祉的就労の場で受け止めないといけない。工賃で評価するという単純な物差しをB型に持ち込むのは、真逆ではないか」と指摘する。 (出口有紀)

 

 <就労継続支援B型事業所> 一般就労が難しい障害者が働いて工賃を得る。利用者と事業所が雇用契約を結ぶA型と違い、障害や体調の問題で安定した勤務が難しく、契約を結んでの就労ができないといった人が利用する。全国で約1万1600カ所あり、月の平均工賃はA型の約7万円に対し約1万5000円。」(2018817日 中日新聞・東京新聞)

 

B型の存在意味を吟味し、工賃向上を評価することは可能だと思う。