*けっこう大きな年次改良
夏にはすでに、年次改良でC型になることが公表されていたZD8型BRZ。
ZD8は(ZN8も)A→B型ではさほどの進化がなく、近年の例でいえばC型までが前期型、ビッグマイナーチェンジのB型から後期型で・・・と思っていたら、意外にもC型で大きな改変がされました。
大きな点は、MT車にもアイサイトが搭載されたこと。
自動ブレーキが必須となりつつある新車界隈のせいで、もはやスバルのMTは絶滅かと言われていたものが、このMT対応アイサイトのおかげでZD8の延命だけでなく、WRX-STIの復活の可能性まで見えてくるからです。
次の点は、最上位グレードとして「STIsport」が設けられたこと。
STIsportは専用ダンパーが奢られ、そしてオプションでブレンボキャリパーが選べるようになりました。
正直なところ、昔のSTIバージョンのようにバランス取りエンジンなわけではなく、また駆動系に機械式LSDが搭載されるわけでもないので、STIなんていう名称はどうなのかという気もしますが、それでも専用ダンパーがついてきてブレンボが選べるようになったのは嬉しい話。
まあ、結論から言っちゃいますと、どうせダンパーは社外に替えられがちですし、純正ブレンボなんてそれほどゴニョゴニョなのでアレですが、商品力としてはかなり高まったと思います。
*外観はそれほど違いはない
・・・というわけで、早速試乗車が来たとのことで、いつものディーラーに試乗しに行ってきました。
今度は黒か!
カッコイイ!
青も白もいいけど黒もいい!
ぱっと見は従来の上級グレード「S」のようにも見えますが、外観は細かい部分が違っています。
例えばホイールは「S」と同形状なものの、ダークグレーから黒に。
なんかGRヤリスみたいです。
それから、ルーフのシャークフィンアンテナと、ドアミラーがクリスタルブラックになっています。
(ボディも黒なので分かりません)
個人的にはこの2か所を黒くするのには反対で、なぜボディ同色じゃイカンのか?コストダウン?と勘ぐってしまいます。
あとはフロントグリルとトランクリッドに「STI」のエンブレムが。
しかしいくらSTIsportと名乗っても下位グレードと動力性能は変わらず、昔のSTIエンブレムのような重みが感じられないのがちょっと悲しいところです。
ヘッドライトの端の「BRZ」のモールドは、赤くなっていました。
車内に目を転ずると、一瞬はウチのRと何の違いもないように思えますが、まずはシートの質感が違うのが目に入ります。
うちのRグレードはジャージ地で、ちょっと滑りやすいので、アルカンターラ生地のコイツはまあ悪くはないです。
シートやメーター、シフト回り、空調ダイヤル周りの色味がちょこちょこ変わっています。
あとはそれまでオプションだったプッシュエンジンスタートスイッチが赤くなった・・・という程度です。
ドアの部分はアルカンターラか何かのスウェード生地が貼られていて高級感がありますが、コレって手の跡が残るんですよね・・・
とりあえず外観と内装だけで感想を言うとしたら、これで「STIsportです!」と言われてもなあ、というのが正直なところ。
シートの形状もステアリングも変わっていないので、運転席に座ってハンドルを握っても、言われないと細かい違いについては分からない人もいるかもしれません。
でもこのSTIsportの醍醐味はやはり運転しないと分かりませんね。
車内の細かいデザインなんておまけで、
「STIsportなのに下位グレードと同じなんて!」
と言われないためのアリバイのようなものでしょうか。
*やはり憧れる「ブレンボ」
試乗の前には傷のチェックをしつつ、タイヤの銘柄を確認します。
タイヤはそれまでのSグレードと同様、215/40R18のミシュラン・パイロットスポーツ4。
グリップ力もそれなりに高く、ウェット性能も悪くなく、そして不快な騒音もない良いタイヤ。
ホントうちのRグレードのエコタイヤはなんとかしてほしい。
ブレンボのキャリパーが、金色・・・というか黄土色に光って存在を主張しています。
まあこれ、GDBのインプレッサのと多分同じで、ブレーキダストですぐウンコ色になるやつですね。
フロント対向4POT、リア対向2POTです。
「そこまで要らない」とは言いつつ、でもやはり「ウチのにもついてたらなあ」と思ってしまうのが、やはりブレンボの威力なのでしょうか。
それより気になるダンパーは見ただけでは分かりませんが、「STIチューニング・日立astemo製sfrdフロントダンパー」というようです。
リアは「STIチューニングリアダンパー」とのこと。
で、その日立アステモ以下略って何?と思ったのですが、すでにスバルの他車種には採用されているそうで、BRZのパンフには
「力強くしなやかに路面を捉えるSTIチューニングダンパー」
としか記載がなく何がどうすごいのか分かりませんが、そこは実際に乗って感じてみようということで、事前情報なしのまま、発進します。
*クラッチに悩みながら試乗へ
やけに高いクラッチとブレーキを踏み、エンジンをかけ、シフトを1速に入れてさあミートを・・・あれっ?
つながらない?
1速に入ってなかった?
…と思ったら、ものすごい高い位置でミートします。
うええっ、ウチのも新車時にはこんなにクラッチのミート位置高かったっけ?
どれくらい高いかというと、ほとんどつながってる位置と同じくらいと言えばいいかな・・・。
この画像で伝わるか微妙ですが、ブレーキを基準とすると、アクセルペダルが異様に低く、そしてクラッチペダルが異様に高い。
というかウチの車のクラッチはミートポイントを低く調整しているので、余計に違和感があります。
おかげで何度もギクシャク発進してしまいました。
(信号待ちでパシャり)
まだ走行距離も200kmとほぼ新車なこともあって、シフトも何もまだ角が取れてないような感じがあります。
一般道を信号にひっかかりつつ乗った感想は、ブレーキがよく効くということ。
特にハイμパッドになったわけでもなさそうなので、単にキャリパー自体の力が高まったことと、パッドの面積が増えたことによる初期制動力の増加でしょうか。
騒音や振動はまあありますが、ウチのRグレードのようにエンジン+ミッションマウントが強化品じゃないので、そこまでではありません。
ただ、停止時にシフトを1速に入れるたび、車体の後ろのほうから「ゴン」という衝撃がありました。
うちの場合はミッションマウントを強化したら消えましたが、これメーカーの人は気にならないんだろか。
しかし信号発進の度にミートポイントがつかめず、何度も出遅れたりブオンと無駄に吹かしてしまったり。
あ~クラッチのミートポイント下げたい~!
*このダンパーはイイ
肝心のダンパーは、勝手に「どうせ乗り心地がイイとか、そういうヤツでしょ」と思い込んでいたのですが、予想に反して意外にカタい。
ウチの純正脚よりカタい。
もっともウチは今、純正脚に戻してホイール+タイヤも純正に戻し、タイヤも17インチの45扁平なので、この18インチで40扁平のタイヤで余計にウチより固く感じられるのかもしれません。
ただ、2年前にSグレードを試乗した時に感じた、「固いんだけど衝撃を押さえ切れてない」というのが緩和されてる感じ。
つまり、トンと路面の凹凸を拾ったあと、少しポヨポヨするのがすぐ収まる感じ。
それが、ダンパーが固く感じられるのかもしれません。
このダンパー、いいかも。
高速に乗ります。
まさかプリクラッシュブレーキの作動実験をするわけにはいきませんが、アイサイトがついていると言うだけ安心感がありますし、車線逸脱をしかけるとピピッと警報がなったりしてくれるのもヨシ。
前車追従クルーズコントロールは、XVに乗っていた際にも試したことがありますが、今は一定の速度を保てないヘタクソさんが多いので、それに伴ってこちらも増速・減速を繰り返すハメになって不快なため、使うことはありません。
ちなみにアイサイトは、メーター内でオン/オフ選択できるので、モータースポーツでも邪魔になることはないでしょう。
大黒PAでいったん休憩。
う~ん、かっこいいなあ!
ホイールの間から覗く金色のキャリパーが目を引きます。
・・・が、車高たけえな~。
ちょっとこのフェンダーとタイヤのスキマはどうなんでしょうか。
でもまあ、純正というのはそういうものでしょう。
帰りにちょっと感じたのが、
@アクティブサウンドコントロールは邪魔
ということと、
@アクセルの反応がちょっと鈍い?
こと。
アクセルの件は、まだECUの学習が進んでいないからでしょうか?
*STIsportの感想は…
・・・というわけで、高速も含めた1時間の試乗は終了。
STIダンパーは、かなりいいと思います。
またブレンボも、実際には例えばエンドレス等の社外キャリパーには全くかないませんが、それでもほしいパーツではあります。
でも個人的には、STIという冠を被せるのであれば、さすがにエンジンまでバラせとは言わないですが、最初からSTIのスポーツパーツであるショートストロークシフトやフレキシブルVバー、ラテラルリンク、ミッションマウント等を装着してる…とかだったらいいのになと思います。
あとはせっかくいいダンパーなのだから、オプションの10ミリダウンのスプリングを入れるとか(※C型では当初はアイサイトとの相性でダウンスプリングのオプション設定ナシでしたが、後で適合確認取れたとのことです)。
あ、でもSTIレカロとかはダメですよ、意味なく高くなるだけなので・・・。
(Rグレードと全く同じエンジンルーム)
ちなみにGR86もこのBRZも、ブレンボの供給数が上限に達したとのことで、早々に受注停止になったそうです。
もしかするとSTIsportじゃなくて、ブレンボがユーザーに求められているのでしょうか。
このブレンボオプションがC型ではもう完全にダメなのか、あるいは部品が揃えばまた受注を開始するのか、その辺は分かりません。
でも個人的には、性能的にはそれほど・・・だと思っています。
*C型を買うとしたら
さて、実際にもし自分が今BRZを所有しておらず、新たにC型を買うとしたら。
資金に余裕があるのであれば、もちろんSTIsportはアリだと思います。
が、オプションのブレンボが選択できない現状だと、ちょっと決定打にはなりにくい。
ブレンボをつけなくても、ナビ等のオプションを全部載せすると500万円くらいになってしまい、車格からしてその値段はどうなの?という疑問符がついてしまいます。
それなら、30万円近く安く済むSグレードのほうがまだいいとも言えます。
ダンパーの違いはあるにしても、社外ダンパーに替えてしまうなら意味がないですし、外装や内装の細かい違いは無視できるレベルでしょう。
しかし、もしモータースポーツをする、あるいはしたいという方なら、迷わずRグレードをお勧めします。
STIsportより基準価格が46万も安く、だからといって動力性能に違いはありません。
それどころか(明確な資料がなく断言はできないのですが)、SグレードはVSC(VDC)をオフにしても完全には介入がなくならないとか・・・(Rグレードは完全に電子制御がオフになるらしい)。
それが本当だとすると、例えばドリフト時に加入してほしくない制御が入ってドリフトが維持できないとか、そういう問題点が出てきそう。
そういうこともありますし、あとはダンパーやホイール、シートなどもどうせ替えてしまうでしょうから、走る方にはRグレードがオススメ。
試乗したのにスバルさんごめんなさい。
(※ペダルの調整はしたほうがいいです)
なお、こういう車を買うとまずホイール替えて車高調にして~・・・ということになると思いますが、まず必要なのはクラッチのミートポイント調整と、アクセルペダルの嵩上げだと思います。
クラッチペダルはMT車なら必ず踏むものですし、アクセルも常時踏むもの。
なのでダンパーよりまず先に、ペダルの調整をしましょう。
こちら(みんカラ)で紹介していますので、参考にどうぞ。
アクセルが低いのは、ウチ製の「アクセルスペーサー6mm」をお勧めします。
またアクセルペダルカバーもいいでしょう。
常に手で触るステアリングも、好みに合わせて交換してもいいと思います(ワシは純正に戻しましたが)
*アイサイトは良い
モータースポーツ勢からは
「アイサイトなんて要らない。その分高くなる」
ということでC型の情報が確定してからB型の駆け込み契約が増えたとかいう話も聞きましたが、ワシ個人としては金で安全が買えるなら買いたいもの。
だって、車の人生はモータースポーツよりも日常遣いの時間が圧倒的に多いですし、モータースポーツばかりやっている人だって、自宅から現地までは普通は自走するもの。
そんな最中の事故の可能性をいくらかでも下げることができるうえ、モータースポーツの帰りは早起き+疲労で眠気に襲われるでしょうから、車線逸脱警報も有難いし、信号待ちで前車が発進した時にも教えてくれる機能はとてもいいと思います。
そんな、少しでも事故の確率を下げ、運転をアシストしてくれるものがお金をだせば買えるなら、そうしたほうがいいと思います。
ただ気になるのは、アイサイトのカメラの都合で、車高をあんまり下げることができないという話を聞いたことがあり、その辺りが実際にどうなのか気になるところです。
*結論:どれでもいいから今すぐどうぞ
スポーツカー、それもエンジンで動くマニュアル車は、これからいつどうなるか分かりません。
アイサイトのおかげでちょっと延命ができそうですが、まだ排気の騒音規制がどうこうとかいうこともあるうえトヨタとの共同開発のため、トヨタ次第でD型を待たずに消滅してしまう可能性もあります。
そして人生の時間は有限です。
いつ寿命を迎えてしまうかもしれませんし、あるいは加齢やケガでマニュアルの運転ができなくなってしまうかもしれません。
そんなことで後悔しないためにも、今まだ新車で買えるのだから、悩んでいる方はぜひ思い切ってしまいましょう。
さあてワシも見積書も~らおっと(ただしRグレード)
(おしまい)