ヒトの脳を操る寄生虫、その名はトキソプラズマ | かずのつぶやき

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ヒトの脳を操る寄生虫、その名はトキソプラズマ

 みなさん、トキソプラズマという寄生虫をご存知ですか。出産経験のあるかたや、妊婦さんはご存知のことと思いますが、ネコに寄生する原虫という単細胞生物です。

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 ネコの糞などを介してトキソプラズマ症として人間にも感染を起こしますが、かかってもわからないか、風邪様症状を起こすのみで通常、日常生活に支障を起こすことはありません。ブラジルやフランスで感染率が高く、世界的にみると全人類の約1/3以上、数十億人が感染しているといわれるありふれた感染症です。
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 しかし、妊娠初期の妊婦さんに感染すると、流早産や死産の原因になったり、赤ちゃんに先天性トキソプラズマ症の原因として障害を残す場合があるので、妊娠初期に検査をして、最近の感染が疑われる時は治療を行います。

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 そんなトキソプラズマですが、ちっぽけながら驚くべき戦略で生き抜いているのです。そして、それはわれわれ人間にも影響を与えているというのです。

 お話したように、トキソプラズマはネコに寄生します。そしてネコからネコへ感染するのにネズミに寄生し、仲立ちとしています。

 なんと、トキソプラズマはその寄生したネズミの行動を変化させてネコに食べられやすくさせ、そのネズミをネコが食べることで次のネコに寄生していくというのです。

 ネコに食べられやすくするために、トキソプラズマがネズミに引き起こす行動の変化は、反応時間が遅くなる、無気力になる、危険を恐れなくなるような“トロい”ネズミに変えてしまうんだそうです。また感染したネズミはネコに脅えるのではなく、ネコの尿の臭いを好むようになるとのことです。

 するとトキソプラズマに感染した“トロい”ネズミはネコに食べられやすくなるので、トキソプラズマ的には次のネコに寄生しやすくなるという戦略です。

 今まではトキソプラズマがどのような方法でそうした変化をもたらしているのかは不明でしたが、最近、スウェーデンの研究チームが、トキソプラズマが寄生した体内を移動し、最終的に脳に達するために白血球を“乗っ取る”ことが分かりました。

 白血球はそもそもトキソプラズマのような侵入者を排除する役割りがありますが、“乗っ取って”移動するだけではなく、“トロい”ネズミ化を起こさせる神経伝達物質を作らせているらしいのです。

 2009年英国の研究チームがトキソプラズマは快楽物質ともいわれるドーパミンの前駆物質であり、向精神薬としても用いられるレボドパ(L-dopa)を作る2つの遺伝子を持つことを発見しました。

 スウェーデンのカロリンスカ研究所感染症学センターのAntonio Barragan博士のチームは、マウスの血液中のトキソプラズマを調べ、意外な場所に生息していることを突き止めました。それはトキソプラズマを殺すはずの免疫細胞の内部でした。

 この細胞は白血球の一種で樹状細胞と呼ばれる細胞で、博士によると「樹状細胞は免疫系の門番」だそうで、トキソプラズマはこの門番細胞を移動手段に使っているのではないかということです。

 しかし、どうやってトキソプラズマは免疫細胞を脳まで動かしているのでしょうか。

 博士は、神経伝達物質であるガンマ・アミノ酪酸(GABA)をトキソプラズマが樹状細胞の中で作り、同じ樹状細胞の外側にあるGABA受容体を刺激して、それによって細胞に体内を移動させて、脳にまで達すると考えました。

 GABAの機能の乱れは統合失調症などの多くの精神障害の原因となり、GABAの量が増えることは、恐怖感や不安感の低下に関連しています。

 そしてチェコの進化生物学者Jaroslav Fregr博士は「トキソプラズマはわれわれの脳をコントロールしている」という学説を主張して注目を集めています。
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 ちょっとアヤシイ博士ですね。バックトゥーザフューチャーのドクみたい。

 博士は1990年にたまたま自分がトキソプラズマに感染していることを知りました。トキソプラズマがネズミの恐怖感を低下させ“トロい”ネズミ化を引き起こすことを知っていた彼は、自身もまた少し前から恐怖心が鈍くなったことに思い当たりました。

 オイオイ、そりゃボケだろう‥‥。

 「道を渡っていて、車にクラクションを鳴らされたのに飛び退かなかった」ことがあったのでした。(笑)

 そこで博士は15年間公衆衛生データによる実験と分析を行った結果、トキソプラズマと人間の行動についていくつかの驚くべき関連性があることを突き止めました。

 トキソプラズマに感染した人は交通事故に遭う確率が2倍以上高まることが分かり、これはトキソプラズマが反応時間を遅くするためだと考えました。

 また、感染者は統合失調症を発症しやすくなることも分かりました。

 感染率の高いブラジルとフランスは交通事故が多いのでしょうか。

 また、米メリーランド大学医学部のTeodor Postlache博士たちはデンマークの女性4万5,000人を対象に行った研究で、トキソプラズマに感染した女性は感染していない女性と比べて自殺を試みる割合が1.5倍高く、トキソプラズマ抗体レベルが高いほど自殺のリスクも高くなることが分かりました。

 おそるべしトキソプラズマ。

 そして、ネコが私たちを幸せな気分にさせるのは、このトキソプラズマが原因だなんていっている人もいるそうです。。。

 私はあんまりネコちゃん好きではないのできっと感染していないのでしょうね。