月の満ち欠けが手術の転帰に影響 | かずのつぶやき

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月の満ち欠けが手術の転帰に影響

 心臓の手術の時、その日の月の周期(満ち欠け)によって、その後の予後が左右される可能性があることが新たな研究でわかりました。なんじゃそりゃ。
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 急性大動脈解離修復術と呼ばれる手術について調べたところ、満月の時にこの手術を受けた患者さんは、他の時期に同じ手術を受けた患者さんに比べて、死亡率が低く、入院期間も短かったそうです。
 (今回の研究では29日の月の周期を、新月:1~7日、満ちて行く時期:8~14日、満月:15~21日、欠けて行く時期:22~29日の4つに分けています)

 大動脈解離とは心臓から出ている太い血管である大動脈に裂け目が出来る死亡率も高い重篤な疾患で、裂け目ができる部位や範囲によって治療法も異なりますが、手術症例の場合、現在でも死亡例や重い後遺症が残ってしまう頻度も高い難しい手術です。

 米ロードアイランド病院、ミリアム病院、ニューポート病院心血管研究所のFrank Sellke博士率いる研究グループは、季節や月の満ち欠けが大動脈解離の手術後の生存率、入院期間に及ぼす影響について検討しました。

 博士はなんで、そんなこと思いついたのでしょうかね。

「心血管疾患への季節の影響に関する研究はこれまで実施されているが、月の周期の影響に関するデータはなかった」って、当たり前でしょ。

 大動脈解離の発症は冬場に多く夏場に少ない傾向があります。また時間的には活動時間帯である日中が多く、特に6~12時に多く、深夜から早朝は少ないと報告されています。曜日による差はないようです。

 今回の研究の結果、大動脈解離修復術後の患者さんの死亡率は満月期に低く、入院期間も短く、満月期に手術を受けた患者さんの入院期間は10日でしたが、その他の時期に手術を受けた患者さんは14日の入院だったそうです。Interactive Cardiovascular and Thoracic Surgeryオンライン版

 なお、今回の研究では月の満ち欠けと心臓手術の転帰との関連性について指摘されていますが、因果関係は明らかにされていません。

 また、大動脈解離は不規則に突然発症し、手術には緊急を要するので「手術は次の満月の日に」なんてことは出来ません。

 しかし、季節や月の周期など環境の影響を理解することは最終的には医療の改善につながると博士は述べています。

 大動脈解離の発生頻度自体は、月齢と関係があるんでしょうか。

 米ニューヨーク大学ランゴンメディカルセンターのAbe DeAnda先生は「時間生物学の分野では以前から季節や時間帯による疾患への影響が示されていると指摘していますが、今回の研究結果は今のところ実用的な応用性はほとんどないと言う点でSellke博士に同意しています。(笑)意味ねー。

 ちなみに、お産は「満月に多い」なんていわれて来ました。

 実際統計をとってみると、満月と新月の1日前と3日後に多いというデータもあります。引力の影響ですかねぇ。

 また、陣痛は自律神経および各種ホルモンなどの影響を受けると考えられており、私の東京医大の後輩の芥川先生たちの調査で、分娩は気象や環境の変化にも影響されることがわかりました。

 先生は同付属病院にて自然頭位分娩した2,142症例について調べたところ、低気圧時においては高気圧の時にくらべて明らかにに破水、分娩数が増加していたそうです。

 また1日あたりの気圧の変動と分娩数にも関係がみられ、この結果より破水時刻、分娩時刻と気圧は因果関係を認め、低気圧は破水、分娩を誘発することが考えられたそうです。(芥川 修:自然分娩と気圧との関連性、産婦人科の実際 Vol.55 No.3:543-548 2006)

 今、台風26号が関東に向かっています。当直の先生方、がんばってください!