シャチにも更年期? おばあさん仮説をご存知ですか
いきなりですがあのシャチは閉経するそうです。
みなさん、閉経をする動物ってどのくらいいると思いますか?そんなこと考えたことないですよね。
実は、閉経することが確認されている動物は今まで知られているうちで、たったの3種類しかいません。
もちろんわれわれ人間とゴンドウクジラ、そしてシャチだけなのです。ヒトとクジラだけなのです。
だからなんだよ!といわれそうですが、この3種類には共通点があるのです。
人間の女性と同じようにシャチのメスは30歳過ぎまで子供を産みますが、その後も50年ほど生きて、家族の世話をして、知識や技能を若い世代に伝え、共同体の中で指導的な役割りを果たします。
メスがずっとそこに居続けることは、強い絆で結ばれた家族を中心とした集団全体の生存率を高めることがわかっています。
これは人間も同じで、生殖をやめ、おばあちゃんとなることで、家族、共同体の暮らし向きを向上させます。
これが「おばあさん仮説」です。【チンパンジーに閉経なし】
更年期を迎えた患者さんによくこの話をします。閉経は人類の進化の過程で選択したポジティブな戦略なのです。“月経がなくなっちゃった”ではなくわざわざ“月経を無くして”いるのです!
少し横道にそれましたが、シャチのオスは幼いときにはとりわけ弱く、母親が死ぬと、その後のオスのチビシャチの死亡率は14倍に跳ね上がるというデータもあるそうです。
一方女の子のシャチの生存率は男の子ほど母親の存在に左右されないようです。
「シャチは非常に変わった社会システムを有しており、子供はオス、メスともに自分の生まれ育った社会集団を離れることなく、母親が死ぬまで一緒に生活をする」と英国エクセター大学の動物行動学講師、Darren Croft博士は話しています。
彼は30年間に渡り、ヨーク大学のDan Franks博士たちと研究を続けてきました。
博士は500頭あまりのシャチを30年以上追跡し、シャチが閉経することを明らかにしました。データによると、メスシャチは30~40歳代で子供を産まなくなりますが、寿命は90歳代まであるそうです。人間と似ていますね。
つまり、子供を産まなくなってから50年近く生きて行くのです。
シャチの他に閉経するクジラはゴビレゴンドウというクジラで、他のクジラの仲間、特にマッコウクジラも閉経する可能性があるのですが、確実に閉経するのかはまだ分かっていません。
ゴビレゴンドウ一家
生物学的には閉経というのは奇妙なコンセプトであり、生殖を終えたあとも長く生きる種はごくわずかです。人間に近いチンパンジーも死ぬまで子づくりをします。
閉経が確認されているのは今のところ3種類のみで、もちろんそれ以外にも、特に結束の強い家族で生活する種に閉経するものが存在する可能性はありますが確認されていません。
年長の閉経期のメスが集団にいるということは、どのような利点をもたらすのでしょうか。
年長のメスは子供の生存率を高めることはわかっていますが、その具体的なメカニズムは研究中です。他のクジラとの接触や餌の獲得において、知識やリーダーシップをもたらすことで、子供たちを助けているのではないかと推測されています。
閉経に明らかな進化上のメリットがあるなら、なぜ他の生物はこの特性を発達させなかったのでしょうか。なぜ、人間とクジラだけが閉経出来るようになったのでしょうか。
これは年をとって生殖活動をやめることが、死ぬまで子供を作り続けることより利益のあることでなければなりません。
人間の女性が仮に80歳まで子供を産めたら‥‥。
40歳で2割が流産します。子供に染色体異常などの障害が残るリスクも高くなります。また母体にも妊娠高血圧など大きな危険が伴います。
閉経するための条件。それにはまず長生きであることが第一条件となるでしょう。
そしてシャチにおいて閉経が進化した理由を理解するためには、彼らの社会構造や年齢に伴うメスの集団との関わり方の変化を理解することが大切です。
シャチは結束の強い家族集団を作って生活し、子供はオス、メスともに母親が死ぬまで一緒に生活します。このような条件の下では、メスは年齢とともに自分の属する集団とのかかわりを増してゆき、ある時点までくると、自ら子供を産むよりも、既に産んだ子供や、その子供の世話をする役割りに転じるほうが、集団としての生存率を高め、もたらす利益が大きくなるのです。
なんだか、人間の社会と同じですね。
日本も一昔前まではおばあちゃんが家にいて、赤ちゃんのお守りをして、お嫁さんになんやかんやアドバイスをしていた訳です。
今の日本は、保育園に預けられないからもう一人は我慢するとか、育児におかあさん一人、相談も出来ず悩んでしまいどうにもならないとか‥‥。
進化どころか、シャチよりも退化していっているようですね。
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