自家製スーズリキュール(ゲンチアナリキュール)作ってみた | 西新宿 Bar BenFiddich(ベンフィディック)

西新宿 Bar BenFiddich(ベンフィディック)

BenFiddichの店名は店主の鹿山博康から由来【Ben】→【山】【Fiddich】→【鹿】
畑を持つ農家バーテンダーであり『Farm to glass』を提唱
日本在来種の自生する草根木皮をもカクテルに変える新しい可能性を模索
アブサン、薬草酒、古酒がゴロゴロ転がるBar

こんにちは



鹿山です







日本市場においてみんな大好きスーズ(SUZE)について書く









BenFiddichに鎮座する歴戦のスーズ達だ
いくばくかはもう空でBenFiddichのお客様の胃袋に収まった
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左から
①現行のSuze
②Suze apéritif 1940's
③Suze digestif 40度 1930's
④Suze digestif 40度 1940's
⑤Suze digestif 40度 1940's 後期
⑥Suze digestif 40度 1950's 
⑦Suze apéritif 1980's

1950年代後期まではdigestifのSUZEが作られていた














古酒のスーズ(SUZE)を集めるほど鹿山は大好きなのだ















なので自家製スーズ(SUZE)を作ってみた
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作った過程は後述する













ではSUZEとはなにか?












いわゆるフランス圏における
ゲンチアナリキュール













ではゲンチアナとはなにか?












リンドウ科の一種であり
正式名称はGentiana lutea(ゲンチアナルテア)
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おっさんが左手に持っているのが採掘用の
【悪魔のフォーク】
と呼ばれるゲンチアナ採掘用の三つ又のフォークだ

右手に持っているのがゲンチアナだ


根の部分を使うのだ






まずゲンチアナの根は,ヨーロッパ諸国において薬用として古くから利用されてきた

ゲンチアナの名前の由来は紀元前2世紀ごろのイリリア国(アドリア海沿岸地方)の王ゲンティウス(Gentius)の名前に因む


古代ギリシャ薬草学の父

ペダニオス・ディオスコリデスによると

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ディオコリデスの薬物誌』

ゲンチアナには「その根は温性で収斂作用がある。搾り汁は脇腹の痛み,高い所からの転落による障害,痙攣に効果がある。水とともに服用すれば肝臓や胃病の患者を救う。創傷治療薬として外用する。搾り汁は深く浸蝕した潰瘍の薬になる。また炎症を起こした眼を治療する軟膏にもなる。根は白斑をきれいにする作用がある」






そう、古くから利用されてきた







そして現代においても

 食欲増進や消化不良,胃痛,胸やけ,胃炎,下痢,吐き気などの治療に使う

エキスやチンキ剤としてもよく出回っている

エキスは強壮剤として(ツムラの胃腸内服液にも使用)

その他、ネットでも

健康食品、ティーとしても買えるのだ










黄色味を帯びた黄金色の色彩である
ゲンチアナの根のリキュールは
いつから【嗜好品】として使われ始めたのか?










商業レベルになる前はフランス オーヴェルニュ地域圏の農夫が白ワインにゲンチアナの根を浸漬して滋養強壮剤として使っていたのを
商業化させたのが1885年
『Gentiane Salers』が皮切りだ



以外に新しいのだ



因みにSUZEにおいても創業は
1885年  同時期だ
初期のブランド名は
Gentiane SUZE』

度数は当時37度とアルコール度数が高かった
今日においてはアルコール度数15度だ。






第二次世界大戦以前のゲンチアナリキュールは
度数も高くビターな味わいだ。
これはリキュール全般に言えることだが、
第二次世界大戦以後のリキュールというのは
ゲンチアナ以外においても度数は下がり、万人受けするような造りでまろやかになる
世界的な一つの大きな時代の転換期により
全般生活レベルの向上なのか、文化の転換なのか、
人々の嗜好は変わり、各社メーカーそれにアジャストしてゆく












日本においてのフランス式ゲンチアナリキュールは
スーズ(suze)一辺倒でこのブランドしか正規輸入はなされていない















ではフランス式と述べたが、フランス式とはなんだろうか?

いわゆる黄色味を帯びた黄金色のゲンチアナリキュールはフランス式だ











ゲンチアナの根は様々な薬草種に使われる。
そう、イタリアの苦味酒アマーロ(Amaro)やクロアチアのペリンコバックにもゲンチアナの根は使用




アマーロの話しにしよう
アマーロ(Amaro)の『嗜好品』としての商業レベルは
1800年代初頭に始まる



フランスにおけるゲンチアナリキュールより100年近く早く嗜好品として売られる



無論、アマーロ(Amaro)の苦味酒の苦味に関しては
ゲンチアナだけではない。
ゲンチアナ以外にもワームウッド(ニガヨモギ)
キナの皮(トニックウォーターの原料)
様々だ


いわゆるリキュールの商業化というのは
もっと歴史が古い
元々は薬だ
ただ、商業化レベルに関しては
16世紀には様々な果実やハーブ、スパイスを使ったリキュール達が商業ラインにのっている。

ゲンチアナなどを使ったもの達は16世紀、17世紀、18世紀においては嗜好品としてではなく、医薬品としての立ち位置だ。
修道院、薬屋、もしくは手作りで行商が売っていた。19世紀になって苦味酒はようやく
嗜好品としての立ち位置として商業生産されるのだ





ではここでフランスの黄金色に帯びたゲンチアナリキュールとイタリアのアマーロ(Amaro)の類に含まれる
黒ずくめの差異はなんだろうか?

①フランスのゲンチアナリキュール
高純度のアルコールにゲンチアナ、柑橘のピール、
バニラなどの芳醇系を少々、
カルダモンなどのスパイス系を少々
砂糖

ほぼゲンチアナで構成されこの黄金色は
高純度のアルコールによるゲンチアナルテア(黄色リンドウ)の色素吸着によるものだ


②アマーロ(Amaro)の類
Amaroは広義だが、
主には高純度のアルコールに苦味は
ゲンチアナ、ワームウッド、キナにより、
そこから柑橘のピール
そしてあの黒ずくめは多めのスパイス類により浸漬する事により色彩が重めになる。
仕上げはカラメルで綺麗な黒ずくめにするのだ









大なり小なりの規模の会社が
フランス国内においてゲンチアナリキュールを作っている








特にゲンチアナリキュールの産地であり
ゲンチアナ.ルテアの自生地は



アブサンabsintheのメッカであるフランシュ=コンテ地域権のジェラ山系のあたりなのである。

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この地域は鹿山的聖地アブサン文化圏だ

それとは別に

パンリキュール(モミの新芽のリキュール)が特産。


さらにはゲンチアナリキュールも特産である。







なぜ特産なのか?







言わずもがな一大自生地であり、ビュンビュン生えてるのだ







毎年鹿山はこのフランスとスイスの国境線の両国のアブサン蒸留所へ自己研磨の為赴く








毎年車を走らせての国境線の山間道中に元気よく生えてるのだ

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上記写真は2016年7月に赴いた時の写真だ
夏場により大輪の花を咲かせている



下記が2017年10月に赴いた写真だ
花は枯れているが根は準備万端となる
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これを採掘するのだ
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そしてザックザク掘るのだ
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はいどーん!

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このスイス、フランスの国境線の山間部には
先ほど書いた通りアブサン蒸留所がひしめき合うエリアでもあり、アブサン発祥の地だ。
100ℓ前後の小型蒸留機で日本では考えられないくらい小さな造り手がたくさんいる
absinthe蒸留家の彼らも片手間で夏〜秋にかけて
自身でゲンチアナを掘り起こし
ゲンチアナリキュール、又はゲンチアナから糖化、発酵させ二回蒸留し、ゲンチアナのオードヴィーを造る。
とても小ロットで作るのだ。

彼らの作るゲンチアナリキュールのレシピは
今日のSUZEなどの万人受けする度数15度などの優しい味わいではなく
いわゆる19世紀後期から第二次世界大戦以前の
度数が高く、尚且つゲンチアナ特有の土臭さを出したゲンチアナリキュールを作るのだ

自身で掘り起こし、自身で作る為、基本はあまり出回らない


今回のゲンチアナリキュールのレシピは
鹿山が崇拝する新進気鋭
若手absinthe蒸留家であり、
Aymonier蒸留所のフランソワさんに教えてもらった
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①高純度のアルコール(スピリタス)
②ゲンチアナの根(メインです。)
③レモンピール(爽やかさが生まれます)
④オレンジピール(レモンとの対比で少々)
⑤バニラビーンズ(芳醇さを伴います)
⑥カルダモン(入れすぎ注意)
⑦リコリス(膨らみをもたせます)
⑧生姜 (フランソワの独断独自材料)
⑨砂糖
⑩水






では、始めよう
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もう諸々、剥いたり、ザク切りにしたり、砕いたり




トクトクと アルコール投入だ
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これを1ヶ月間寝かせる
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そして、フィルターで濾し
砂糖と水を加え度数調整をすれば....
完成だ!
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全部で3種類を作った

アルコール度数
28度
30度
33度
柑橘のピールの量、ゲンチアナの量、スパイス配合などを変えた
三つのタイプを作った




数に限りがあるのでお早めにどうぞ






今宵、西新宿 Bar BenFiddich
お待ちしております