ブルーバックス読書記録 No.27『いやでも数学が面白くなる』『数学とはどんな学問か?』 | BLOGkayaki1

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読書記録、環境問題について

『いやでも数学が面白くなる』 志村史夫著、2019.4
『数学とはどんな学問か?』津田一郎著、2021.8


 いまこそ、大阪の政党所属議員に伝えたい──
 数学がどれだけ世の中の役に立っているか。いや、数学を知っておかないと、どれだけ世の中で生きていく上で不利になるのかを。
 もっとも、渦中の人は「数学よりも金融工学を」という本末転倒なことを叫んでいるようだから、まずご本人には金融工学よりも数学の入門からやり直してもらった方がよいのだろう。

 数学の入門書と言えば、ブルーバックスだ。その中でも、直近の2冊を読み比べてみた。
 同じ領域を解説しているはずなのだが、問題のアプローチの仕方によって、書き方が異なってくるというのも面白い。
 だから、どの入門書がその人にとって心を打つか、興味をそそられるかは、その人の趣味嗜好次第だし、その人が実際に手に取ってみないと、分からない。

 歴史が好きな人にとっては、前者の『いやでも数学が面白くなる』に興味を持ってもらえるのではないか。
 本書にはまさしく、日本史や世界史のエピソードがちりばめられている。
 「座標」を発明したデカルト、その少し後に「重力」を発見したニュートン。時は17世紀で、日本は江戸時代の前期に当たる。言い換えると、「犬将軍」綱吉の代までには、方程式をグラフに描写する方法が確立され、さらに曲線の接点を求める微分が開発されたということだ。
 また、「0(ゼロ)」を最初に発見したのは7世紀のインド人……ではない、ということも書かれており、話は古代文明にまで及んでいる。古代史好きにはたまらない記述となっている。

 一方で、英語や言葉の語源に興味がある人は、後者の『数学とはどんな学問か?』が面白いと思う。
 指数の「log(ログ)」は、logarithmの略なのだが、元はギリシャ語の「logos」から来ているという。
 でももしかしたら、「ブログ」や「ログアウト」などネット用語として使う「ログ」とも関係しているかも?という著者の邪推は、本書の内容としては蛇足なんだけれども、いや蛇足であるが故か、とても楽しい。(なお、この場合の「ログ」は、「ログハウス」と同じlogである。蛇足でした。)
 ほかにも、「tangent(タンジェント)」は「接する」という意味であり、接線は英語で「タンジェント・ライン」であるということも教えてくれる。あの「sin・cos・tan」のタンジェントである。それが分かれば、タンジェントは一体何を求めようとしているかが、すっと理解できるようになるのではないだろうか。私も高校時代に知りたかった。
 ただし、本書の序章は、如何に数学が役に立つか、または数学を学ぶ必要性について説かれているのだが、これが少々冗長というか、くどさを感じる。この文章を読んで、数学好きな人はますます数学に惚れこむかもしれないが、数学嫌いの人がその病を治せるとは思えない。読み飛ばした方がよいだろう。