ブルーバックス読書記録 No.26『ブロックチェーン』 | BLOGkayaki1

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『ブロックチェーン 相互不信が実現する新しいセキュリティ』 岡嶋裕史著、2019.1

 暗号資産で注目される「ブロックチェーン」は、概念としては単純なものだ。作成ファイルを数珠つなぎに紡ぐようにして、後に改ざんができないようにする仕組みだと言える。
 そのセキュリティを確保するにはどうすればよいか。これも、「ハッシュ」の役割さえわかってしまえば、簡単に理解することができる。

 本書はこの基本的概念を理解しやすいよう、実に明解なコツを伝授してくれる。
 最初にいきなり「ハッシュ関数」と「ハッシュ値」が出てくる。だが怯(ひる)んではいけない。この20数ページさえ諦めずに理解できるように努めれば、後は難なく読める。
 逆に言うと、最初の部分をなんとなく分かったつもりで読み飛ばしてしまえば、ブロックチェーンへの理解は閉ざされる。すべては「ハッシュ」があってこその技術だからだ。

 私もブロックチェーンについて勘違いしていたところがあった。
 暗号資産はP2P(Peer to Peer)を用いているという話を聞いたことがあった。だから暗号資産のデータは、各自のPCに分割保存されているものだと思い込んでいた。
 実際は、暗号資産の取引にかかる全てのデータを、各PCが持たねばならない。バックアップが無数にあるという利点はあるが、ファイル量の重さが難点である。
 すると、官公庁の文書を改ざんできないようブロックチェーンを用いる、という話も聞いたことがあったが、データの容量からして(現在の技術では)不可能ではないか。しかしここで、ハッシュを用いた応用が役に立つ。文書の作成日もしくは署名の部分のみ、ブロックチェーンに組み込めばいい。
 文書本体のデータをブロックチェーンに入れないとなると、あとで「消去」(「隠蔽」とか「焚書」ともいう)される懸念は残る。しかし少なくとも、「改ざん」を防ぐことはできるし、そのデータがあったという「痕跡」は残せる。これもハッシュを知った上で理解できることだ。

 ブロックチェーンの理屈自体、何ら難しいものではない。しかし、ちゃんと理解していないと、「万能な技術」または「怪しい技術」という両極端な考えに陥ってしまう。
 しかし、ブロックチェーンを理解できたところで、さらに注意が必要である。

 

 

「ブロックチェーンが信用できること」と、「システム全体が信用できること」とは別問題だ。(本書235ページ)


 結局、その技術を社会がどう使うかによるのだ。その使われ方が適切かどうかを監視するためにも、技術の基本的知識を押さえておかなくてはならない。
 まずは本書にある通り、自分のPCのコマンドプロンプトを使って、ハッシュ値を算出してみよう。同じ数値が出たとき、私は感動しちゃいました。