田中 肇氏の新刊『花と昆虫、不思議なだまし合い発見記』 | 驚きの日々!祖師谷公園をめぐる四季

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森林インストラクター。ラジオ体操と太極拳で毎朝訪れる祖師谷公園には樹木や花、昆虫や鳥たちもたくさん。そんな公園の四季の変化をお届けしています。祖師谷公園散歩のお役に立てばうれしいです。なお写真のご利用はお控えください。

せきれい橋周辺や仙川沿いには

キンシバイが咲き始めました。

うっとうしい曇り空の気分を吹き飛ばしてくれるような

鮮やかさです。。

 

以前もご著書をブログでご紹介させていただいた

田中 肇先生から

新刊のお知らせをいただき、

さっそく購入しました。

 

新刊ですが、

2001年に講談社から出版されたものがその後絶版になり、

筑摩書房から文庫本になって、19年ぶりに復活したものです。


19年を経ての新刊とは、

内容がいかに今日的で

普遍的なものであるかという証でもあります。

 

文庫本で手軽なうえ、

イラストが多用されているのでわかりやすく、

その上、文字が大きいのでとても読みやすい。

 

内容はタイトルにあるように

花と昆虫の関係を詳細に観察することで見えてきた

驚きの花生態学の世界です。

 

例えばヤツデの花には花粉を出す雄性期と

雌しべが受粉する雌性期があること、

 

受粉を媒介する虫の種類、

そして寒い冬、その虫たちの体温測定をして

体温を保つ工夫にまで推察は及びます。

その全てが自ら考えた実験による徹底したものなのです。

 

徹底といえば、

ミズバショウの花にくる虫の調査も

「のべ2744個の花を観察したが、止まっていたのはハエ類二十七匹と

その他の昆虫五匹にすぎなかった。」

などと、とさりげなく記されているのです。

気が遠くなりそうな数・・・

 

しかも文章は決して難しくなく、

血が通っているというか、暖かいんです。

 

そんなわけで本棚には先生の関わった本が増えていきます。

すべて古本ですが、

出版全盛期のころだったと中身を見て感じます。

 

読み終えると、

「まえがき」の

「日本には花の咲く植物が五千種類以上もあるのに、

花の生態のほんの一部でもわかっているのは八百種類ほど。

残る四千何百種類の花は手つかずのままの、不思議の宝庫なのだ。

本にはわかったことだけが並べられているので、

ほとんどの謎は解けているものと誤解されがちだが、

青空の下には書かれたことの十倍、二十倍、

いやもっと多くの花たちの策略が

秘密のベールにおおわれたままおかれている。

したがって、花の策略を明らかにするチャンスはあなたにも

たくさん残されている、と断言できる。」

 

という文章に、

単純でその気になりやすい私は

背中を押されてしまうのです・・・