「ユズ合体木」と「里帰りのサクラ」 | 驚きの日々!祖師谷公園をめぐる四季

驚きの日々!祖師谷公園をめぐる四季

森林インストラクター。ラジオ体操と太極拳で毎朝訪れる祖師谷公園には樹木や花、昆虫や鳥たちもたくさん。そんな公園の四季の変化をお届けしています。祖師谷公園散歩のお役に立てばうれしいです。なお写真のご利用はお控えください。

 

 

 

しつこいようですが、

また合体ユズの続きです(笑)

 

先日その存在を教えていただいたユズの合体木は、

サクラの「品種」を説明するのにもうってつけ!です。

 

サクラの季節になると一度は必ず聞くのが

「オオシマザクラ」と「ヒガンザクラ」の交配種が「ソメイヨシノ」です。

というもの。

樹木医でさえ、新聞の記事にそう書いていたので、

ますます皆が信じて疑わない。

 

そのたびに「う〜ん、ちょっと違うんですけど〜」と心の中でつぶやいてしまう。

その誤解を解くのに、この「合体ユズ」はまさにぴったり!です。

 

オオシマザクラとエドヒガンを交配させてできる苗は

このユズ同様、一種類ではなくて、

さまざまな特徴を持っていて、

葉が大きいもの小さいもの、花が大きいもの小さいもの、

花の色が白っぽもの、赤いものさまざまなはずです。

その中にソメイヨシノにあたる苗があるかといったら、ないかもしれない。

 

そもそも「ソメイヨシノ」は偶然の産物なんです。

他の品種の多くがそうであるように。

花つきがよく花が大きく華やかなサクラが見つかって、

そのルーツを探る研究をしたのが「国立遺伝研究所」の竹中要博士。

その当時は現在のようなDNA解析などはありませんでしたから、

長い年月をかけて交配実験を繰り返しそれを探っていった。

その実験過程でできた品種が小石川植物園の

「天城吉野」や「御帝吉野」だったりするわけです。

 

その結果

ソメイヨシノは「オオシマザクラ」と「ヒガンザクラ」の

交雑種ではないかと結論を出したのが1961年のことでした。

 

これを語るのに祖師谷公園にはもう一つ、興味深い題材があります。

仙川沿いの「里帰りのサクラ」です。

明治45年、尾崎東京市長がワシントンに贈った友好の桜。

その苗木が平成2年、80年ぶりに東京へ里帰り。

この祖師谷公園に栽植され、毎年見事な花を楽しませてくれます。

その里帰りのさくらの案内板には

「実生から育てた苗」とあるのです。

(普通は挿し木で増やしたクローンの苗なのですが)

 

そう思って見ると、ソメイヨシノの木の1本1本が

開花時期にしろ、花の色合い、大きさなど

微妙に違うように思えるのです。

そんな目で来春の開花を見ていただけると

なにかまた見えてくるものがあるかもしれません。