アンモニア臭の原因と解決方法 | 症例と解説 | かわせカイロプラクティック

症例と解説 | かわせカイロプラクティック

症状に対する私なりの考え方や症例の解説などを書いています。

今回は、体臭、特にアンモニア臭の原因と解決方法について説明します。まずアンモニアの事から説明しましょう。

アンモニアはアミノ酸の代謝産物です。アミノ酸には必ずアミノ基というものが含まれていて、そのアミノ基に水素が1つくっついたものがアンモニアなのです。ですからアミノ酸(蛋白質)を摂取すると大なり小なりアンモニアが生成されます。アンモニアには高い毒性があるので、肝臓の尿素回路によって無害な尿素に代謝された後に腎臓から排泄されるようになっています。

また骨格筋でもアンモニアを無毒なグルタミンに変換しています。しかしそのグルタミンはそのまま排泄されるのではなく、肝臓に送られて再びアンモニアに戻してから尿素回路で代謝しています。このようにしてアンモニアを一度グルタミンにする事により、グルタミンが肝臓に運ばれるまでの間、アンモニアの毒性から保護しているのです。

次に、アンモニア臭をどのようにして防げばよいのかについて説明します。

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もし尿素回路においてアンモニアを代謝する能力が低下しているならばカルニチンや亜鉛が効果的かもしれません。

カルニチンは尿素回路の代謝スピードを決定するカルバミルリン酸合成酵素Ⅰを間接的に活性化する働きがあります。もうちょっとだけ詳しく説明すると、カルニチンには脂肪酸からアセチルCoAを合成させる働きがあります。合成されたアセチルCoAはさらにNアセチルグルタミン酸に変換され、それがカルバミルリン酸合成酵素Ⅰを直接活性化しています。

カルニチンはリジンとメチオニンというアミノ酸から合成する事もできますが、4分の3は食事からの供給です。しかし、加齢によってカルニチンの合成能力が低下したり、肉類の摂取が少ないと体内のカルニチンが不足します。また一部の抗生物質や、てんかんの薬のデパケンなどを飲んでいる人は体内のカルニチンが不足します。

そこで体内のカルニチンが不足している人はカルニチンのサプリメントを使うと良いでしょう。私の場合はARテストという方法でカルニチンが必要かどうか調べてからアドバイスしています。カルニチンにはLカルニチンというサプリメントの他にアセチルLカルニチンというものがありますが、使うなら断然、アセチルLカルニチンです。基本的にアセチルと名のついたサプリメントは、小腸からの吸収が良く、血液脳関門を効率よく通過するため脳内にも効率よく届きやすいという特徴があります。

亜鉛は尿素回路にオルニチントランスカルバミラーゼという酵素を活性化する働きがあります。ですから亜鉛不足によってアンモニアの代謝が悪くなります。亜鉛は不足しがちなミネラルですが、むやみに高用量の亜鉛サプリメントを摂取する事はおすすめしません。よくわらかない人は摂取したとしても15mg程度までにしといたほうが良いと思います。私の場合はARテストで必要性を調べてからアドバイスしていますが、その場合でも最大30mgです。また亜鉛の拮抗ミネラルである銅のほうが不足している人もいますが、そのような人が亜鉛のサプリメントをなんとなく摂取すると、さらに銅が不足しますので注意が必要です。

蛋白質の摂取量については、ボディービルダーやウェイトトレーニング愛好家のように体重1kgあたり2~3gのタンパク質を摂取しないようにする事が大切です。しかし、逆に減らしすぎても良くないです。多すぎず、少なすぎず、適度なタンパク質を摂取しながら、必要に応じて亜鉛やアセチルLカルニチンのサプリメントを摂取したりしてアンモニアの代謝を促してゆけば良いでしょう。

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BCAA(分岐鎖アミノ酸)について

肝臓でのアンモニアの処理能力が低下している場合には骨格筋のアンモニア処理能力が重要になってきます。骨格筋の構成成分であるBCAA(分岐鎖アミノ酸)がBCAAアミノ基転移酵素の働きによってグルタミン酸に変換され、そのグルタミン酸がアンモニアを無害なグルタミンに変換してします。

そのため、骨格筋量が十分にあるとアンモニアを代謝できる量も多くなります。また、肝硬変の人がどんどん骨格筋が減少してやせ細ったサルコペニアという状態になるのは、肝臓で処理できないアンモニアを筋肉で処理するために骨格筋の構成成分であるBCAAを大量に消費してしまう事と関係しています。ですから、筋肉量を増やしたり、BCAAを摂取する事はアンモニアを処理するために重要なのです。

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ピロリ菌によるアンモニアについて

ピロリ菌は胃酸にとても強い細菌なのですが、それでも酸が弱いほうが生きやすいので、ウレアーゼという酵素を出してアンモニアを産生します。アンモニアは強力なアルカリ性なので胃酸は中和されてピロリ菌には住みやすい環境となります。ピロリ菌が産生するアンモニアは胃だけでなく全身に影響を与えますので、アンモニア臭(特に口臭)がして胃の調子が不安な人は病院で検査をしてもらうと良いと思います。特に中年以降はアンモニア臭がしなくても胃の検査はしっかりやっておいたほうが良いでしょう。

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腸で産生されるアンモニアについて

腸内環境が悪化すると悪玉菌がアンモニアを産生します。悪玉菌もアンモニアを産生するウレアーゼという酵素を出すからです。ですから、腸内環境を良くする事もアンモニアを減らすために重要です。

また善玉菌が増えると、善玉菌が作り出す有機酸によって腸管のPHが低下するとアンモニアが血中に移行しにくいアンモニウムイオンになったり、便秘が解消されることにより、体内に吸収されるアンモニアが減少します。

腸内環境の改善のためには、悪玉菌の除菌のためにARテストによって選んだハーブサプリメントの使用をアドバイスする事も多いのですが、こういった除菌サプリは善玉菌も減らしてしまうので、だいたい2週間くらいの期間限定で使用する事が大切です。

体臭が気になる方の中には、こういった除菌サプリをかなり長期間飲んでいる方が時々いらっしゃるのですが、善玉菌が減少してしまい、かわりにそのサプリに耐性のある悪玉菌が増える可能性があるので逆効果です。また除菌サプリを使わなくても、善玉菌を増やすサプリメントだけで悪玉菌の除菌ができる場合もあるので、可能ならそのような方法をとります。私の場合、ファーストチョイスとしてとしてプレバイオティクス、つまりフラクトオリゴ糖やイヌリンなどの善玉菌の餌になるものから選びます。
 

東京都町田市

かわせカイロプラクティック

河瀬 哲也