起立性調節障害を回復させるポイント | 症例と解説 | かわせカイロプラクティック

症例と解説 | かわせカイロプラクティック

症状に対する私なりの考え方や症例の解説などを書いています。

起立性調節障害の実態はおそらく副腎疲労でしょう。なので当院における起立性調節障害のアプローチは副腎疲労症候群とほぼ同じです。しかし起立性調節障害と診断されて当院にくる子供は特に低体重と貧血が目立ちます。身長と体重から算出するBMI指数では18.5未満で「痩せ」という判定になりますが、起立性調節障害の子供は17未満の「痩せ気味」や16未満の「痩せすぎ」の子も珍しくありません。起立性調節障害における疲労感は、エネルギーの消耗を防いで今以上に痩せないようにするための防御反応であると考えられます。

起立性調節障害ではちゃんと食べて標準体重に近づける必要があります。しかし多くの場合、食欲が無く食べられない、あるいは食欲はあるけど食べると胃腸が苦しいといった問題があります。また貧血の子供に何の準備もなくいきなり鉄剤を補給すると体調は悪化する事もあります。最初にやるべき事は、食欲が無い原因や食べると胃腸が苦しくなる原因にちゃんとアプローチする事が必要です。

食欲不振や食べると気持ち悪い原因には脳内のヒスタミンによる満腹中枢や嘔吐中枢の刺激や、ストレスや炎症による機能性ディスペプシアがあります。鉄を摂取していても鉄不足になる原因は活性酸素、それからカンジダや細菌などがあります。

栄養療法

メチル化が不十分な状態(低メチル化)ではヒスタミンの分解が低下するため過剰なヒスタミンによって満腹中枢や嘔吐中枢が刺激され食欲が低下します。また、低メチル化ではシナプス間隙のセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質が減少するため不安が強くなったりやる気が起きなくなります。メチル化でよく使うサプリメントはメチオニン、SAMe、亜鉛、メチルコバラミン、メチル葉酸、P5Pなどです。

しかしメチル化にいきなりアプローチしても成功しません。栄養療法においては基本的な事からスタートします。具体的には、水分と電解質の補給(細胞の健全な働きに必須)、酸化ストレス対策、解毒、細胞膜の修復、ミトコンドリアの活性化、リーキーガット、腸内細菌など腸内環境の改善、消化を良くする(胃酸・消化酵素・胆汁などの分泌)など。鉄が不足している人には酸化ストレスを減らしたり腸内環境を整えてから補給を開始します。

心理療法

親が子供の事でイライラしやすかったり、子供の事を憂いて落ち込んだり、受験や定期テストなどで「今さえ乗り切れってくれれば・・・」と期待していると子供の起立性調節障害は悪化します。子供は親から落ち着かせてもらうという体験を繰り返す事によって自分で自分を落ち着かせる事ができるようになります。しかし親の自律神経が落ち着いていなければ我が子を落ち着かせる事はできないでしょう。その場合は親もセラピーを受けて自律神経を落ち着かせる必要があります。

子供の心理療法でまず取り組むべき事は、ストレスのない状態ではしっかり落ち着いている状態を目指すセラピーです。それができてから身体志向のトラウマセラピーを開始します(考え方や感情にアプローチする従来の心理療法だけではあまり効果がない)。トラウマセラピーは回数をかなりかけて非常にゆっくり取り組む必要があります。短期間でやろうとすればするほど逆効果です。スロー・イズ・ファスト(ゆっくりやるのが早い)が大切だという事を親子でしっかり理解しておく事が大切です。

 

こちらのページで起立性調節障害について詳しく解説しています