先日、YouTubeの動画を見ていたら、医療関係者という方の事故に関する注意喚起の動画を見つけました。
ここで言っていたのは、
スピード出しすぎるな
プロテクターしろ
この2点についての注意喚起でしたが、少し内容が浅い気がします。
そういう私の経歴を簡単に紹介しますと、
交通外傷専門病棟 経験1年
脳外科・整形外科リハビリ病棟 経験10年
のいわゆる中堅看護師です。看護師となってこれまでの期間、ちょうどバイク事故で負うようなケガに関連する病棟におりましたので、バイクで事故するとどうなるのかについて、もう少しだけ詳しくお話しできると思います。
あ、あと、その場での死亡の場合には私のいるような病棟にはこないので、この事故で多いと感じる人の割合は、死亡率とは違いますからね。
交通事故での頭部損傷の割合
私がこれまでの経験でであってきた患者で、交通事故で頭部外傷を負った人は多く見てきましたが、そのほとんどが以下のケースでした。
車に乗っていて、シートベルトしていなかった
自転車に乗っていて車にひかれたか、横から車にぶつかった
歩行中にひかれた
原付に乗っていて交通事故に遭った
ここでみなさん、疑問に思いませんか?大型バイクの事故が書いていませんね。私の経験した中で、大型バイクに乗っていての頭部外傷は実は一度もあたっていません。
私なりの考えですが、大型バイクに乗るような人のヘルメットって、結構頑丈なんです。私自身、80kmくらいで走行中に事故った時、ヘルメットは少し削れましたが、あれが壊れるようなことはなかったです。
対して、もっと昔、原付で走行中、ホームセンターで買ったヘルメットで事故った時は、表面がかなり削れました。ヘルメット。大きな通りを走行中に真横から跳ね飛ばされて、結構な距離吹っ飛ばされたんですけど、周りで見ていた人の話ではうまく受け身のような感じで転がっていったので、頭を強打はしなかったようです。
このような実体験も踏まえると、多分、ヘルメットの性能が頭部外傷に繋がるんだと思います。
ちなみに頭部外傷の場合、本人は高次脳機能といって、認知症のような状態になることが多くみられますので、この場合、迷惑をこうむるのは家族で、自分は何もわからないという事例を本当に数多く見てきました。
交通事故による頸髄損傷と、これによる四肢麻痺
四肢麻痺、怖いですよ。リハビリ病棟ではよく見る患者さんですが、これどういう状態かと言いますと、首から下が全く動かないんです。
イメージをわかりやすくお伝えしますと、砂風呂を想像してもらえればわかりやすいと思います。
この状態では、まずスマホも触れませんし、何だったら鼻に蚊がとまってもどうにもできません。かゆくても、掻けません。
どうですか?怖くないですか?この状態、頭はほぼ全員、クリアな場合が多いので、頭でわかっていても動けないのはかなりつらいと思います。ちなみにナースコールが多い患者さんは、このタイプの人ですね。
で、経験上どんな人が多いかと言いますと、
車でシートベルトをせずに事故をして、窓ガラスを突き破って飛んで行った
シートベルトはしていたが、変な風にしていて、事故の時に首が引っ張られて頸部を損傷した
酒を飲んで転んだ
高いところから落ちた
とこのように、バイクの事故で四肢麻痺になった人は、いまだであっていません。頭部外傷(脳挫傷)になってからの半身麻痺はよく見ますけど、どちらにせよ、意外に車の事故が多い印象です。
バイク事故による骨折 -手・腕-
これは多いですね。私自身、実はまだ左手親指の骨が欠けていますが、ギプス固定してもひっつかないくらいに小さな骨折なので、そのまま放置されています。これが雨の日には痛いんです。
まあそれは置いておいて、バイクで転ぶと、人間は防御反射で手をついたり、肘で頭や体幹を守ろうとします。そこで、手の弱い部分を骨折する人が多い印象です。
手首
肩甲骨および鎖骨
この2つが骨折で多いです。写真に色付けましたが、鎖骨(赤丸部分)は、上腕骨(青丸部分)に比べて細いですよね。細くて弱いところに力が集中し、折れるということですね。
あと、事故したとき、グローブはめていたんですけど、80kmでの転倒では、手をついた状態で滑って行ったので、グローブは擦り切れ、手のひらは表皮の下、真皮まで削れました。これに砂利が入り込んで、洗浄されるとき、地獄の苦しみを味わいました。
バイク事故による骨折 -胸部-
この胸部の骨折は見たことがありません。胸部は心臓・肺のような重要臓器があり、これを失うと死んでしまうために、体の中で頭部と胸部のみは骨で保護されています。
なので、バイク事故での死亡の3割がこの胸部打撲によるものと言われています。ここを思いっきり打つようなことがあれば、死亡する確率のほうが高いので、それで見たことないんでしょうね。
バイク事故による骨折 -背中-
ここも頸部(首)と同じくらい危険です。背骨って上から見ると、このように脊柱管という空洞があり、神経がこの中を走っています。ということは、頭部、胸部のように神経は重要ということですね。
で、これが障害されると、その傷を負った部分より下側の部分が動かなくなったり、麻痺がでたりします。これも四肢麻痺と同様に、結構生活に影響あります。
仮に腰のあたりの神経やられたとしても、尿意・便意がわからないというようになると、おむつ生活確定です。嫌ですよね?
なので、ライダージャケットは着ましょうね。あれには背中を保護するものがついています。
バイク事故による骨折 -足-
脚は何回か見たのが、このように一番弱そうな骨の集まり、足先の複雑骨折・粉砕骨折ですね。
手もそうですけど、手は多くの場合、手のひらから転倒することって少ないのか、手を骨折した人って少ないんですよね。
私は骨折しましたけど、珍しいと思います。ふつうは投げ出されたりしますからね。手首を骨折したときは、バイクに足を挟まれて引きずられましたので、こういう体制になったんですね。
骨折以外にも、私のように皮膚が削れた人も何人か見ましたね。私の場合は、皮下脂肪が目視できるくらいまでえぐれ、一部筋膜が見えるほどに皮膚がえぐれました。
とはいえ、脚の傷の場合は、神経とかやられていなければ、基本治ることが多いですね。足を引きずるなどの後遺症が残ったり、足首より先の骨折では、バイクのペダルが踏めずに二度とバイクに乗れなくなったりはするかもしれませんが、少なくとも生活はできることのほうが多いです。
まとめ
長々と解説してきましたが、あくまで私の10年の経験からくる印象をまとめてみました。たしかに、最初に書きましたYouTubeの映像を作られた方が言うように、
スピード出しすぎるな
プロテクターしろ
は間違ってはいないんですけど、例えばレーサーレプリカのうようなバイクに乗っている人が、素直に制限速度で走るとは思えません。法律違反だといえばそうなんですけど、医療者として考えるというのなら、起きてしまっている事実を基に、どう啓もうすべきかが大切なんじゃないのかと個人的には思います。
ではどうすればバイクでの事故の危険性を知ってもらえるのかを考えますと、医療という分野に関わったことのない人にもわかるような言葉で、簡単にまとめて周知すべきだと思います。そこで、ここまで書いてきた内容をまとめてみました。
バイクで事故ると、最悪の場合、死ぬか、蚊に鼻を刺されてかゆくなっても、自分で蚊をつぶせないし、自分で鼻をかけなくなるよ
これが私が伝えたいことをぎゅっと濃縮した言葉になります。骨折しても、正直生活が不便にはなりますが、生活できなくなるレベルでの動作の低下はありません。
しかしこれが麻痺となると別です。頸椎損傷による四肢麻痺・下半身麻痺、頭部外傷による半身麻痺では、かなり高い確率で介助者が一生必要となります。費用面は保険や公的扶助でどうにかなったりしますが、どうにもならないのは、介護です。
これを防ぐためにして欲しいことは、
いいヘルメットを買おう
ライダージャケットは必ず着よう。半袖禁止。
かなり攻めた走りをするなら、レーシングスーツを必ず買おう
靴は必ずライダー用を使用し、できればショートブーツを買おう
この4つです。上の方でも書きましたが、ホームセンターの安物のヘルメットは実体験として思いっきり削れます。ジャケットとショートブーツは、自分の体がこれを着用していても事故をしたときに削れましたので、してなかったら、骨見えた案件だったと思います。
こうならないためにも、安全対策をしてバイク乗りましょうね。