~♪

笹の葉 さらさ~ら
軒端に揺れる
お星さま き~らきら
金銀 すなこ~



シナト村の子どもたちと歌いながら、我らの団のハンターと受付嬢が楽しそうに笹の葉に色とりどりの短冊を飾り付けている。

「へえ? 綺麗ですね~」

離れた場所からその様子を見守っている団長と加工屋の隣に、作務衣に身を包んだ大僧正が並んだ。

「あれは七夕飾りと言ってだな。 東の果てにある小さな島国に、古くから伝わる風習なんだ。あの短冊に願い事を書いて笹の葉につるすと、願いが叶うらしい。」

団長が名称と発祥の地と内容を説明してくれたので、大僧正は驚きに軽く目を見張った。

「ずいぶんお詳しいんですね?」

大僧正の言葉に、団長は豪快に笑う。

「ハッハッハ! なんてったって、我らの団は世界各地を回っているからな!」

団長の言葉に、大僧正はああ、と頷いた。

「それにしても… 短冊が風に揺れるさまは、風情がありますねぇ…」


「うむ。 さすがは我らの団のハンターだ。」


「ハンターどのが何か?」


「いやな、ハンターが『風車の回るシナト村なら、きっと七夕飾りも風に揺れて綺麗なんじゃないでしょうか?』と言うもんでな。 なるほど、と思って、ここに飾らせてもらったのだ。」

団長の言葉を聞いた大僧正は、きゃあきゃあ言いながら飾り付けをする子どもたちを見て、ふわっと嬉しそうに微笑んだ。

「ハンターどのがそんなことを…」

いつも穏やかな笑みを浮かべている大僧正の嬉しそうな顔を見て、団長はほほう?、と何やらひとり頷いた。



その日の夜、ハンターは七夕飾りをひとりで見に来ていた。

一年中穏やかな風が吹くシナト村は、子どもたちが飾り付けた短冊や、いろんな色の輪を長く繋げた飾りを、優しく揺らしている。

思った通りの美しさに、ハンターの顔がほころんだ。

そして、ふと1枚の短冊が目に留まった。

薄い水色の短冊には

『いつか、ハンターどのにこの想いを告げられますように』

と書かれていた。

「……っ!?」

まさか自分のことを書かれているとは思わなかったハンターの目が丸くなる。

流れるような美しいその文字には、見覚えがあった。

「まさかね…?」

ハンターがじっと短冊を見ていると…


「あっ…」


後ろで小さな声がした。


振り返ると、そこには思い描いていた彼が立っていた。


「見られてしまいましたね…」


「大僧正さま…?」


恥ずかしそうに頬を染めた大僧正は…


しかし、思い切ったように顔をあげた。


そしてゆっくりとハンターに近寄り、その手をそっと握った。


「私は僧侶なので、この地を離れることはできませんが…」


「はい?」


「いつか、あなたの旅が終わった時…」


「………?」


「ここへ来て、私の妻になってくれませんか?」


「……っ!?」


思いがけない言葉に、ハンターの目が丸くなる。


みるみるうちに真っ赤になりながらも、ハンターは小さく頷いた。


やがて、二人の影がゆっくりと重なるのを隠すように、笹の葉が穏やかに揺れていた…