『イッツ・オンリー・トーク』 | 本がともだち

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イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)/絲山 秋子

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スポーツを題材にした話が好きなのですが、実際自分でやっている乗馬の話は読んだことがありません。
それがテーマでなくてもいいから、キャラがちょろっと乗馬している描写があるだけでもいいから、乗馬が出てくる作品が読みたい! と思っていたら、あっさり紹介してくれた方がいらっしゃいました(笑)。
併録されている「第七障害」が障害馬術が絡む話でした。




内容 「BOOK」データベースより

引っ越しの朝、男に振られた。
やってきた蒲田の街で名前を呼ばれた。
EDの議員、鬱病のヤクザ、痴漢、いとこの居候―遠い点と点とが形づくる星座のような関係。
ひと夏の出会いと別れを、キング・クリムゾンに乗せて「ムダ話さ」と歌いとばすデビュー作。
高崎での乗馬仲間との再会を描く「第七障害」併録。



わたくし根が単純な人間なもので、女性の性(さが)みたいなものを描いた作品が苦手なのです。
なんというか「わ、わからん……」と思ってしまうので。
そんなわけで、スカッと爽やかな高校生ラブ的な話とかスポーツものとかを選ぶのでした。

絲山作品に関しても、わたしの苦手系かな~と思っていたので避けていたのですが、読んでみて

「あれっ?」

精神を病んで入院歴があったり、すぐに男と身体の関係を持ったりする主人公の話なのに、なぜだかカラッとしていて、わたしが苦手な湿っぽさがないのです。
思いがけずさらっと読めてしまいました。
評価が高いのもうなずけます。



しかし、やはり最初の目的の『第七障害』の方が、わたしにとっては心に残る作品でした。


主人公は障害馬術の試合中に障害を飛び損ねて、乗っていた馬を骨折させ安楽死に至らしめたことが心の傷となっています。
乗馬クラブのインストラクターに「生きているものは必ず死ぬんだよ」と慰められますが、どうしてもそのことがひっかかり、付き合っている男の部屋に他の女の痕跡を見つけたことをきっかけに東京に出る決意する……というストーリーです。

この馬に対する感情は、もしかしたら乗馬をやったことのある人でないとわかりにくいかも知れず、あまり評価の対象にならないのかなぁ……なんて思いました。
わたし自身は主人公と同じような意味で馬を亡くしたことはありませんが、乗馬というスポーツは常に生き物の生き死にを意識しなければならないものです。
そして洗い場でかわいい馬が、乗ると曲者である、なんてこともよくある話。
わたしが大好きだった馬も、洗い場では甘えんぼでものすごくラブリーでしたが、レッスンとなるとインストラクターが自分の方を見ていないと思うとサボる、というスキルの高い技を発揮しておりました。



その辺りの心情がとても良く書けているので、もしや絲山さんは乗馬をやったことがあるのかしら? と、先日ブログで「絲山祭」を実施されていた惠さんに伺ったところ、
「乗馬のために高崎に引っ越されたみたいですよ」
と教えていただきました。
ご本人のサイトを確認したら、障害馬術2級とかΣ(゚д゚;)!
いや、それはすごいです~~!



なにはともあれ、絲山作品、気になります。
また読もうと思います。