慶應SDM公開講座 参加レポート | B&Fab「本」と「ものづくり」と「珈琲」

B&Fab「本」と「ものづくり」と「珈琲」

本(Book)とモノづくり(Fabrication)を中心に、人が集まり会話が生まれる憩いの場、そんな場所を作りたく、ただいま奮闘中!(または迷走中)

季節はずれの七夕伝説を観ているような錯覚にとらわれた。
ステージ上の織姫と彦星は1年越しの想いを募らせて、いまにも抱き合わんばかりの様相だ。
会場中にその熱い想いが伝播して、ステージを見つめる参加者の視線は、真剣そのものだ。
 
11月9日水曜日、慶應SDM公開講座の題材として、映画『未来シャッター』上映会&セッションが、慶應義塾大学日吉キャンパスにおいて開催された。
 
SDMとはSystem Design and Managementの略で、新しい領域の学問である。
以下慶應SDMサイトから引用
理念 ―全体統合型学問体系により、未来世界の先導を担う
現代社会の大規模・複雑化した諸問題を解決するためには、従来の縦割り型学問分野のみでは不十分です。マクロな視点から問題を俯瞰的に捉え、全体統合型の解決策を提案(デザイン)するとともに、解決策をミクロまで確実に精緻化する、システムデザイン・マネジメント(SDM)学という全体統合型学問が不可欠です。このため、SDM学を身に付け、新しい時代を先導できる次世代リーダーを輩出するとともに、SDM学に基づく実践的研究成果を世に出すことによって、よりよい世界の構築に貢献することが、私達システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科の理念です。
引用終わり
 
そのような講座の題材に、なぜ『未来シャッター』が選ばれたのか……。
 
会場となった教室は、さすがに新しい学問を学ぶ場所だけあって、最新の機材に囲まれていた。画像を移しだすスクリーンはメインの大画面液晶ディスプレイの両脇に、サブディスプレイもある3画面構成。音響も前面後面に2台ずつ計4台のスピーカーで構成されていた。
 
80名ほどが収容できる会場はほぼ満席の状態で、定刻の19時に当研究科委員長の前野隆司教授の開会挨拶で公開講座が開幕した。そして19時5分、映画『未来シャッター』の上映がいよいよ始まった。
…………
70分間の上映後、パネルディスカッションが行われた。パネラーは前野隆司教授、株式会社ウイル代表取締役で当研究科学生であり、さらに当映画出演者でもある奥山睦氏、そしてNPO法人ワップフィルム理事長で当映画監督の高橋和勧氏の3名。
 
冒頭いきなり、
「この映画はまさに、僕が慶應SDMで研究していることそのものだ」
前野教授の興奮度は最高潮、いきなりのトップギアである。
 
パネルディスのモデレーター役としては、ゲストに問いを投げかけるのが常道だろうが、いきなりオキテ破りの大技が炸裂。会場の参加者も驚きを隠せない様子。
 
どうも前野教授が提唱している『幸福学』の考えに、ぴったりと『未来シャッター』がはまったらしい。
 
予想外の熱烈ラブコールを送られた高橋監督は、こちらも興奮気味だ。
「いや、そう言っていただけて、たいへんうれしいです」
と応えるものの、互いに熱くなっているためか、なかなか会話が噛み合わない。
 
そこに登場したのが奥山氏
「私が、通訳します」
と二人の間をつなぐトランスレーター役を買って出た。
そもそもこの上映会の開催は、奥山氏が入学のときから前野教授に進言していたことが、ようやく今回実現したもの。奥山氏にとっては、積年の想いが叶った晴れの日だったのだ。
 
ひたすら世界平和を目指し映画を作り続ける「織姫」高橋監督に、幸福学という新種の栄養で次世代の人を育てる「彦星」前野教授、二人の出会いの架け橋となるきらめく「天の川」は奥山氏。こうして季節はずれの七夕伝説が、横浜日吉の地で起こったのだった。
 
パネルディス後半は会場の参加者も交えたトークセッションとなった。ほとんど高橋監督への質問コーナー状態で、たくさんの質問が投げかけられた。
質問の内容は、どちらかというと映画の内容よりも、映画製作のことの方が圧倒的に多かった。
 
高橋監督の言葉を借りると、
「この映画は観た人の心に「もやもや」を植え付ける。その「もやもや」を持つことが大事なんだ」
とのことなので、おそらく参加者の中にはまだ消化しきれていない「もやもや」となっていて、この場で自分の言葉として発するのをためらったのだろう。
 
実はこれには後日談があって、この「もやもや」を持つことが、何かを考え行動を起こす原動力になり、そして想いを実現させると「キュン」となるとのことだ、
この一連の作用を「もやキュン♡」と呼び、未来シャッターのこれからのコンセプトキーワードとなるらしい?
 
そしてもうひとつ重大なニュースがある。『未来シャッター』は『幸福学』研究の題材となり、慶應SDMとの共同研究が決まったのだ。
 
映画『未来シャッター』は、これからも世界に平和と幸福ともやキュン♡を発し続ける。
 
(了)