”陳日君枢機卿を逮捕国安法、バチカンに一矢香港” | ウインのワクワク「LIFE」

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記事より】

国安法、バチカンに一矢 香港
枢機卿逮捕、例外なき掟に
対中苦慮の教皇庁、正念場に

 

香港警察は11日、カトリック教会の香港教区トップの司教だった陳日君・枢機卿(90)ら5人を香港国家安全維持法(国安法)違反の疑いで逮捕し、即日保釈した。

民主派の基金運営を主導した5人が外国勢力と結託し、国安法に抵触したとしてカトリック教会の司教経験者でさえも例外なく逮捕される衝撃にローマ教皇庁(バチカン)は対中交渉での動向を慎重に注視している。(深川耕治)

 

▲612人道基金の信託人となった左から陳日君氏、呉靄儀氏、許宝強氏、何韻詩


逮捕された5人は、陳氏のほかに歌手の何韻詩(デニス・ホー)氏、元立法会(議会)議員で弁護士の呉靄儀氏、嶺南大学の許宝強・前客員副教授、何秀蘭元立法会議員(懲役14月で収監中)。許氏は香港国際空港で独フランクフルトに向けて出国する直前に逮捕された。

 

バチカンと中国政府は9月に司教任命問題の協議を行う見通し。この微妙な時期に枢機卿が逮捕されたことは司教任命問題にも影を落としかねない。逮捕後、すぐに保釈されたことでバチカン内での中国融和派と牽制派の対立が表面化しないまま、一筋縄では行かない協議に向かうことになりそうだ。

 

 

 

香港カトリック教区の陳日君枢機卿に聞く
中国の宗教弾圧、改善せよ
天安門事件犠牲者は“殉教者”

(聞き手・深川耕治、写真も=2015年6月30日インタビュー再録)

香港カトリック教区の陳日君枢機卿(名誉司教)は単独インタビューに応じ、香港の一国二制度の問題点や中国内の宗教弾圧、バチカンと中国の国交正常化に向けた中国司教の任命権問題など信仰の自由と民主化について実情を訴え、天安門事件の犠牲者を“殉教者”として追悼すべきだと述べた。

 

 

――バチカンと中国政府との国交正常化に向けて香港教区は関与しない意向を示しているが、中国政府が官製聖職者組織「愛国協会」を通してバチカンの指示と違う司教を任命し、管轄し続ける動きは、今後の中国国内のカトリック信者にとってどんな障害をもたらすか。

 

中国政府は香港に対し、宗教については特に弾圧したりしていないが、(香港で多くの小中高校を運営するカトリック教会にとって)学校建設については管理運営の内容精査を厳しくしている。中国大陸では地下組織は認めていないし、表面で現れている教会活動は信仰に基づく真の自主権がない。

唯一、残念なことは中国本土での宗教弾圧の現状をバチカンに正確に伝えて説明しても理解してもらえず、楽観視し過ぎている点だ。中国では宗教の自由は得られておらず、真の自由には程遠い。

 

――中国大陸の司教は最初のキリスト教殉教者である聖ステファノのような勇気をもって教会の教義をとるべきだとの立場だが、中国大陸の司教が行うべき牧職行為とは何か。

 

カトリック教会の規則があるので、地下教会は真っ向から中国政府の司教の任命権について反対している。しかし、表向き、中国の愛国教会から指名される司教は銃や刃物で脅されれば仕方なく従うしかない現状がある。そういう一部の人は受任し、譲歩して受け入れたか、心の中では拒絶しながら受け入れたか、現状のままで良いと妥協する人もいる。いろいろな状況がある。

 

――1989年6月4日の天安門事件をどう評価するか。中国政府の主張する動乱を鎮圧する行為だったのか。犠牲者を追悼し、事件の再評価を求める香港での動きは進展するのか。

 

宗教上の殉教者は信仰のために命を犠牲にすることだが、一般的に社会の理想のために自らの命の犠牲にすることも殉教者だと思う。

 

天安門事件の場合、学生たちが中国の民主化のために運動を行い、人民解放軍によって数多くの貴い命が虐殺され、迫害された。迫害された彼らのために支援しなければならない。

 

まずは中国政府が天安門事件で行った武力弾圧の非をを認めてなければならない。謝罪するまで何度も何回も闘い続ける。事件で迫害を受けた中には海外に亡命した人もいるし、投獄されて長期間、自由を奪われた人もいる。親、兄弟、親族まで監視され続けて不自由な生活を送るケースもある。

 

中国政府が正式に謝罪を認めなければ、再び天安門事件のような武力弾圧が起きる可能性があることになり、安心できない。再び天安門事件のような政府による弾圧を行わないということを保証、約束してほしい。そのために徹頭徹尾、活動を続けている。