「2021 表現者クライテリオン⓫」② | ウインのワクワク「LIFE」

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            琴線に触れるものを探して

 

 

 

気にかかった文章】

 

「道」は日本人の故郷である 菅野覚明

 

道が実現すべきところの「本来の自己」とは~特定の共同体の一員たるべき自己なのであった。

 

 

宮本常一は、かつての村人にとって、「人並みに暮らす」ことこそが真の幸福であったという。村では、どんなに出世していても、人並でなければ「高慢者」といって馬鹿にされる。逆に、たとえ貧乏はしていても、人並でさえあれば、村人はすべて対等の仲間である。

 

 

明治時代の終わりまで、日本の「国民」の多くは、地方の村落共同体で育った「村人」であった。

 

 

生まれ育った故郷そのものが一つの道の世界であったからこそ、商いやものづくりの徒弟修業も、また徴兵制の軍隊でのきびしい訓練も、多くの国民は抵抗なく受け入れることができたのであろう。

 

 

近代日本の故郷は、仲間と修業を共にする道の世界であった。おそらくその記憶は「地元で恥ずかしいことはできない」といった形で、今も日本人の故郷の観念の中に生きている。

 

 

柳田の言う通り、他のどこの国とも異なるこの国の運命を切り開いていく力は、道というわれわれ故郷の中に秘められているはずなのである。