さらに、神経・免疫・内分泌軸のホメオスタシスの三角形に、思考・感情などの精神が影響を及ぼすことが明らかとなり、精神・神経・免疫学と呼称されている。
また、エピジェネシスという学問が発展し、精神作用がDNAの働きのON・OFFに影響を及ぼすことが報告されるようになった。
この研究結果を認めるのであれば、科学の大前提である、精神と物質は相互に影響を及ぼさない実体であるという、常識が覆るのである。
他方、この研究成果は、精神と物質・心(こころ)と身(からだ)は分けることができない、相互に密接に関連しているという、伝統医学の心身一如の人間観を科学的に裏付けるものとなる。
“病は気から”という言葉を聞いたことがあると思うが、伝統医学本来の意味は、文字通り病は気の変化から起こるという意味なのである。
しかし、一般的には心の状態、気の持ち方により、病気が治ったり、病気が悪化したりするという意味で理解されている。
子供の時に、幼稚園や小学校に行きたくないと、本当にお腹や頭が痛くなるということを経験した人も多いと思うが、これらの研究成果が出るまでは、仮病(けびょう)と理解されていた。
しかし、心身は相関しているということが科学的に解明された。それ以降、心身医学が市民権を得たのである。
しかし、この働きはまだ“自己治癒力”であり、“自然治癒力”ではない。
肉体が常に一定の状態を維持しているメカニズムである“生体恒常性(ホメオスタシス)”および心身二元論の科学における土台を覆す、精神が肉体に影響を及ぼすという“自己治癒力”は科学的に解明されつつある。
果たして、“自然治癒力”は科学的に解明することはできるのであろうか。 (つづく)