宇宙はなぜこのような宇宙なのか-人間原理と宇宙論 | とある投資家の備忘録(ブログ)

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宇宙はなぜこのような宇宙なのか――人間原理と宇宙論 (講談社現代新書)/講談社」・・・人間原理に関連する本は何冊か読みましたが、タイトルに人間原理と明記されているものは私が読んだ中ではこれが初めてだと思います。

タイトルに記載されているだけあってこの本はまさに人間原理について書かれたものです。とはいっても前半は人間原理が登場するに至った宇宙論の変遷を綴った内容で、非常に丁寧かつ詳細ではありますが、どこかで一度は目にした内容がほとんどです。

後半になると焦点である人間原理について、これでもかという位さまざまな論点から語られています。人間原理そのものを理解するという意味では今まで読んだ中で最も解りやすいものだと思いますが、一方で人間原理を崇拝(?)する者の一人としては、余りにも科学的に説明され過ぎていて、浪漫の部分がない寂しさも感じます。

著者は、インテリジェント・デザインやファイン・チューニングなどの目的論(宇宙は観測者たる人間を生み出すために作られた)を持ち出すことを一切否定し、その上で今の我々にとって常識的な宇宙の姿である、1つの宇宙(ユニバース)ではなく、多宇宙(マルチバース)の存在を前提とすることで、純粋な科学者には拒否反応が強いであろう「強い人間原理」でさえ、科学的な立場のみで肯定しています。

いち宇宙論ファンの身としては、相対性理論、量子論、素粒子論、超ひも理論と、素人には難解すぎる理論に宇宙論の争点が移っていく中で、この人間原理だけは複雑な数学を抜きに考えることができるいわば「ラストリゾート」と言える存在であり、結論を急がず大事に温めていきたいと思っています。

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