ナットのベートーヴェン・ソナタを聴きたくて購入した15枚組。
ベートーヴェンの他に何があるのか、良く見ないで買ってしまった。
こういうのは通信販売(ネット)だから、こそ、かも。
で、曲は
ブラームス、ショパンのソナタ二曲、そしてストラビンスキーやフランクなども。
そして最後の1枚はナットの自作(あまりに怖くてまだ聴いていない)。
1番の儲けもの?はシューマンが4枚も入っている。
協奏曲もあるし、子供の情景は二度録音しているが、それにしてもかなりのボリューム。
残念なのはソナタが入っていない事だが、あまりにも欲張り過ぎというもの。
イブ・ナットは1890年-1956年だが、40代半ばで一旦演奏活動を中断しているようだ。
晩年の1950年台に演奏活動を再開し、ここでベートーヴェンを録音している。
基本的には生まれも育ちもフランスのピアニストと言ってよさそう。
サンサーンスやフォーレ、ドビュッシーを「弾いた」のではなく、彼らと直接の交流があったという。
音楽は、私が思う様なこの時代のフランス的では全くない。
このCD集にしてもフランス、と言えるのはフランクの一曲。
それにショパンとリストが少し。
かっちりとした所はドイツ、あるいはブリティッシュピアニズムを想起する。
派手さ、けれんみはないかもしれないが、何とも言えない落ちつく演奏。
熱演タイプで、唸りに近い息遣いが時折聴こえる。
ナットが作曲家・音楽と向き合っている空間を共有させて貰っている、というような感覚を持つ。
超絶技巧的でもなく、並外れた音色を持つわけでもない気がするが、じわじわ味わう音楽。
ウクライナ生まれでフランス風ショパンを弾くブライロフスキー、フランス生まれながらドイツ音楽を弾くナット、そしてドイツ音楽という言葉では言い尽くせないケンプのピアノ。
しかもブライロフスキーもナットも、あたりまえだが自国の郷土色の様なものを底辺に感じさせる。
生まれ育ちというのは大きな影響はあり、そこから抜け出せるものではなく、また抜けだすものでもなく、そう言ったものを包含して一人の芸術家の個性が形作られる、という何とも当たり前の結論なのだろう。