劇作家の宮沢章夫が9月12日に死去した。65歳だった。
宮沢は以前から入院して療養中だったが、うっ血性心不全のため都内の病院で亡くなったという。葬儀はすでに執り行われている。遊園地再生事業団のアカウントでは、ファンや関係者に向けて感謝のコメントを綴り、「宮沢章夫は幸せ者です。いま、『牛への道』で安らかに夢を見ていることでしょう」と締めくくっている。
宮沢自身のTwitterアカウントでは、8月20日の投稿が最後となった。投稿内容は「それにしても眠い。さよなら。宮沢章夫」。
28年前に拝読した宮沢章夫著のエッセイ集「牛への道」は私にとって天啓に等しい書籍であった。
冒頭の”スポーツドリンク”の下りからして、その不思議な世界に巻き込まれる。
28年前の記憶なので誤差は有るかも知れないが、大筋は下記と記憶している。
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自動販売機で缶コーヒーを購入したら、スポーツドリンクが出て来た。
ボタンを間違ったかと思い、再度缶コーヒーのボタンを押したら、またスポーツドリンクが出て来る。
流石に業者の入れ間違いとしてもそろそろだろうと、再度缶コーヒーボタンを押したら、またスポーツドリンクが出て来る。
試しにスポーツドリンクのボタンを押すと、スポーツドリンクが出て来た。
何故だ…。
いや、スポーツドリンクのボタンを押したのだから、スポーツドリンクが出て来るのは当然か…。
それにしても、全くスポーツドリンクなど飲みたくないのに、どうすれば良いのか…。
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瞬発力こそ無いが、そんなジワジワくるエッセイが満載で、気付いた時にはドップリと宮沢ワールドにハマっていた。
また「わからなくなってきました」では、9回裏、8点差のゲームが3点差に。2死満塁で絶好調の3番打者登場、緊迫した場面で、アナウンサーが発する「わからなくなってきました!」という叫びに疑問を呈している。
「よくわからないねじ」では「引出しの中に転がっている正体不明のねじは、いつか役に立つことがあるのか」と問題提議する。
いや、シビれる。
方々より”シュール”とか”謎”とか言われる宮沢章夫だが、この感覚を共有出来ない方々とは、一切関わりを持ちたくない次第だ。
そして「私も彼の様な物書きになりたい!」と思い、早14年に渡り、当ブログにて駄文を書き散らかしている。
入場料1,500円の本屋 vs トレジャーハンターかとぅ
https://ameblo.jp/katoo-the-world/entry-12431687102.html
そんな我が師でもあられる宮沢章夫が亡くなった。
65歳だと言う。
本人とも面識は無いし、書籍以外で本人の人となりも存じ上げないので、悲しいとか、寂しいとか意外にもそんな感情は無い。
ただ、「牛への道」との衝撃的な出会いから、早28年経過した事に驚いている
そしてその衝撃を28年忘れる事が出来ず、未だに日々駄文を書き散らかし、「牛への道」を歩み続ける自分にも驚く。
私自身が「牛への道」に至るにはまだまだ果てしないが、宮沢章夫が最期にTwitterに残したツイート「それにしても眠い。さよなら」を見るに、氏が遂に牛に至ったのはどうやら間違いなさそうである。
私にとっての天啓をお示し頂き、有難うございました。
そして、お疲れ様でした。
宮沢章夫さんのご冥福を、心よりお祈りいたします。
かとぅ