KADOKAWAのマンガ誌「月刊ドラゴンエイジ」7月号でスタートしたばかりの「異世界転生者殺し-チートスレイヤー-」(作画:山口アキさん、原作:河本ほむらさん)の連載中止が発表された。
「異世界転生者殺し」は、「ソードアート・オンライン」や「Re:ゼロから始める異世界生活」「オーバーロード」などを想起させるキャラクター「転生者」たちが登場。尊敬する「転生者」たちに故郷の村を焼き払われた主人公は、謎の魔女に協力して「転生者」たちに復讐を誓う……という内容。
「転生者」は、モデルになったキャラとそっくりだが、性格は違っていて「最低」という言葉がぴったり。一部の人たちが嫌悪するであろう過激な描写もあった。
近々で知ったので偉そうな事は言えないが、元々異世界転生モノと言うのは、「小説家になろう」というサイトの投稿されるアマチュア作家の作品群であり、「なろう系」と称される。
今回話題になっているのはハイファンタジーと言われるジャンルのタイトルだと言う。
現世で冴えない主人公が不慮の事故で亡くなり、異世界に転生したら、トンデモ無い能力を身に付けており、無双しまくると言う話なのだろうが、私はこの「自分の都合良い世界で、偶然手に入れたチート(いかさま)的特殊能力で、お気楽に無双する」と言う設定が大嫌いである。
生粋のリアリスト兼モラリストであるこの私、かとぅにとって現実は辛い事ばかり。
トンデモ無い苦難の連続に打ちひしがれ、先の見えない暗闇を前に途方に暮れ、それでもその先にある光を目指して、這い蹲いながらも前へと進む。
そして、その様な苦難を乗り越えて手にした経験やスキル、そして栄光は、何にも代え難い、勝ち得た本人だけの価値として、その身に宿るのだ。
私にとってソレこそが真実であり、その人物の全てと言っても過言では無い。
他人と違う能力や、圧倒的な力と言うモノは手に入れる事も困難であれば、手に入れた後も只では済まない危険なモノでもある。
ソレに葛藤し悩む事すら有れ、力に溺れ、お気楽に無双する様な者に、一片の魅力など感じる事は無いし、同時にソレを書いている作者にも言い得ぬ嫌悪感を感じてならない。
この様な「現実逃避の上で、チート能力で無双する都合の良い空想に浸る」などと言った、馬鹿げた話に終始する作者本人に、苦難を乗り越えて手にした経験やスキル、そして栄光と言った、私の求める真実など求めるべくもない。
自ら苦難を乗り越えた者にとって、この様なご都合主義を認められる訳も無いのだ。
だから、「存在の耐えられない軽さ」を感じずにはいられない異世界転生モノや、その作者、そしてファンを私は嫌悪する。
なろう系 vs みん就
https://ameblo.jp/katoo-the-world/entry-12653873300.html
今回問題となっている「異世界転生者殺し-チートスレイヤー-」はそんな空虚なる御都合主義に対するアンチテーゼとして、現実で生きる苦難や理不尽さを、我々に雄弁に突き付けるモノであった事であろう。
しかしその嫌悪が些か行き過ぎてしまったらしい。
「異世界転生者殺し」は、都合の良い異世界転生キャラが次々と殺戮される訳で、虚構に生きるファンからは大いに反感を買ったのだ。
株式会社KADOKAWAドラゴンエイジ編集部は「ご指摘を受け、編集部としてあらためて検証いたしましたところ、キャラクターの意匠、設定等が他作品との類似性をもって表現されていること、特定の作品を貶める意図があると認められるだけの行き過ぎた展開、描写があること、またそれらに対する反響への予見と配慮を欠いていたことなど、編集部での掲載判断に問題があることを認識し、連載中止の決定に至りました」と、異例の1話打ち切りを報告した。
異世界転生モノはKADOKAWAにとっても人気の売れ筋商品であった様で、此処迄の騒動となってしまった今、平に謝罪するより他無かったのであろう。
しかし私は「1話打ち切り」という前代未聞の騒動に於いて、「異世界転生者殺し-チートスレイヤー-」は成ったと考える。
「【悲報】生殺与奪の権を竜に握られた人類、竜国の使者を「田舎者」呼ばわりしてしまう~俺は学院生活を楽しみたいだけだから気にしないけど、俺を溺愛する竜王族の姉は黙ってないかもしれません~」
そんな訳の分からない作品と「俺を溺愛する竜王族の姉」とか言っている主人公と、現実逃避の虚構に生きるファン。
「1話打ち切り」と言う最終奥義を以て、その全てを屠る。
せめて一刀両断にて安らかに眠れとも思うし、四肢を捥がれ藻掻き苦しみながら眠って貰っても、私は一向に構わん。
ともかく異世界転生モノは虚しさだけが残る、現実的に辛すぎる話だ。
もう辞めておけ。
かとぅ