名古屋めしの代表であるあんかけスパゲティーの店、ヨコイが関東初出店し、盛況だと言う。
一体いつから、あんかけスパゲティーが名古屋名物となったのか私は存じ上げないが、あんかけスパゲティーのみならず、ひつまぶし、味噌煮込みうどん、天むす、味噌カツと、名古屋めしについて語る時、私は虚ろである。
それは名古屋出身として、故郷の味を恥じているからでも、不味いと思っているからでも無く、只々単純に私は名古屋めしを食べていないからに他ならない。
「名物に美味い物無し」と言う言葉があるが、言い得て妙だと思う。
何せ、これだけ流通が発展した現代に於いて、美味いモノは何処ででも需要があり、名物などと言う狭い枠で語る必要など無いのだ。
松坂、飛騨、米沢と黒毛和牛の名産地はあるが、今や全国的に需要が高まり、何処ででも食べられる。
ご当地ラーメンなる名物ラーメンも一時期流行ったが、ラーメンも全国区な食べ物な訳で、北海道味噌ラーメン、九州とんこつラーメン、喜多方醤油ラーメンと、何処でだって食べられる。
逆に名物も何も無い不毛の地が、町興しの為に無理やり黒毛和牛を育てたり、ご当地ラーメンを作るのだ。
そんな名物と言う概念が崩れ去った現代に於いて、未だに「名物」として君臨し、畏怖の念すら感じさせる名古屋めしに、私は多大なる敬意を払うが、如何せん、私は名古屋めしを食べた事が殆ど無い。
コレは私だけでは無いと確信しているのだが、如何だろうか？
味噌カツを食べて、故郷の味だわ～とか思うか？
あんかけスパゲティーを食べて、やっぱり名古屋めしと言えば、コレだね！とか言う名古屋人いるか？
断言しよう。
名古屋人は名古屋めしなど食べない。
あんかけスパゲティー、ひつまぶし、味噌煮込みうどん、天むす、味噌カツと、名古屋人はどれも食べない。
味噌カツにはソースをかけるし、ひつまぶしなんて高過ぎて食べたくても食べられないし、味噌煮込みうどんに至ってはうどんが生煮えで固くて食えたモノでは無い。
そのゲテモノ感こそが、名古屋めしを孤高の名物たらしめているのだ。
しかしながら、そんな私も舌を捲く名古屋めしがある。
その名も「名古屋名物台湾ラーメンアメリカン」。
出鼻から「名古屋名物じゃねえ！」とラジカルに叫んでしまうグローバルさではあるが、このデタラメ感こそが名古屋を象徴しており、私は名古屋が好きでならないのだ。
かとぅ