先生という立場の人の言葉の重みについて徒然なるままに | 受験で実力を得点に変えよう(家庭教師の心がけ)

受験で実力を得点に変えよう(家庭教師の心がけ)

家庭教師歴約25年。医学部東大など難関大学受験生中心に教えてきました。ちょっとした工夫でケアレスミスを防ぎ実力が点数に反映させる実践的方法や受験生の質問の多かったポイントや過去問などのブログにする予定です。ご連絡あればkatekyo424-public@yahoo.co.jpまで。

最近数学物理化学を教えて、昭和医学部などに正規で受かった生徒がいました。結果から優秀な生徒であっとたことは想像つくと思います。ご両親ではなく、本人からこのブログをみて依頼したいと直接メールがあり、体験依頼、正式な依頼など全て自分で手続きをする珍しいケースで、「しっかりしてるなぁ」という印象が残っています。本人から当時のこと書いていいとの許可は以前にもらってはいますが、迷惑がかからないように少し内容をぼかして書きます。


その生徒は、全教科バランス勉強するのが苦手で、一科目ある時期に集中して勉強するタイプで、バランス良く勉強した方が受かりやすいという受験のセオリーの真逆でしたが、その分クオリティの高い努力をします。無理に矯正するとしんどそうだったので、「本人のやりやすいようにやらせて、仕上がりのクオリティだけは可能な限りあげれば、その貯金でなんとかなるだろう」と不安半分で判断した記憶があります。


また、学生時代に学校や塾で質問した際に先生から「なんでわからない」的な心ないことを言われ、妙に自分ができないと思い込んでいて、本来備わっていた自分の才能を全く使える状態になっていないようでした。そのせいだけではもちろんないとは思いますが、少しメンタルが弱るときがあり、一回目の受験の時には直前にメンタルが不調になり、受験期にはまともに受験できる状態じゃなくなってしまいました。

 

ですが、翌年二回目も挑戦したいということで、再度教えてほしいと依頼がありました。驚くと同時に引き受けるべきか正直かなり悩みました。そこで、「メンタルのことは僕にはわからないので、勉強を教えることのみに集中する」「今年度は、勉強計画のアンバランスさを凌駕するくらいできる状態にすることで、不安を軽減することを目指す」ということを条件に引き受けることにしました。わかりやすい化学を例にすると、阪大の高分子を解けるレベルで、フィッシャーからアキシャルもエクアトリアルも余裕で、液相線の圧力組成図も理解している状態だったと記憶しています。


本番かなり緊張したようでしたが、結局受けた大学は全部受かりました。ちゃんと難問でも解ける状態にしておけば、「過去問対策は軽め」であっても、「勉強計画がセオリーに反していても」中堅医学部なら余裕で全勝できることを改めて教えてもらえたような気がします。

 

で、本題なのですが、彼はとにかく基礎的な概念で深く悩むタイプでした。わかりやすい例を一つあげると、化学の混成軌道で「なぜこんなことになるのか」深く悩むタイプでした。前述したように先生に言われたせいで、渋々わからないことはわからないまま全部覚えて解くしかないと思い込んでしまい、その結果、考えた方が良いところまで放棄して本質を掴めないまま「応用になるとできないから自分がだめだ」という負のループに入って抜け出せなくなっていたように思います。

 

そこで僕が心がけたのは、「今わからないのはなんの問題もない」とはっきり伝えるために「大学で習う内容を教えるのではなく見せる」ことです。前述の混成軌道の形を理解するには、「水素原子でのシュレディンガー方程式とその解の意味つまり波動関数の意味を理解すること、また解くために球面調和関数や偏微分方程式の級数解法ラゲールやルジャンドルの陪多項式」といった内容を全て理解してやっと電子の存在できる軌道確率領域分布があんな妙な形になると言うことが理解できます。

 

当然これらを全部やれるわけはないのですが、なるべく「具体的にこういう勉強をすれば混成軌道が理解できるようになる」という自分の辿ったルートや、その結果の動径波動関数のグラフや球面調和関数の分布図といったものから、自分の量子力学の捉え方の一端を見せるように心がけました。その上で、駿台などで大学の有機化学の冒頭でやるようなことまで踏み込んでやっているやり方に対する僕自身が感じている「メリットは高校化学でただ覚えさせられたことにもう少し理由づけをすることができる」「デメリットは結局量子力学はブラックボックスなので、時間をかける価値が本当にあるかは微妙」という本音を伝え、「自分でどこまで踏み込んでやるか、どの程度で割り切るか、を好きなように選択させていく」ようにしました。

 

すると元々深く自分で考える生徒なので、考える前に放棄することなくちゃんと考えるようになり、あとはもう質問に答えるだけで勝手に出来るようになってくれるという「楽」な仕事になりました。質問の内容は、高校のレベルを超えるものも多くそういう意味では「楽」ではなく「大変」ですが、教えていて「楽」しい仕事でした。こういう仕事をすることは珍しいですが、良い経験をさせてもらいました。

 

こういう潜在能力を持っている子が、学校や塾の先生の心ない一言のせいで、「考えてもどうせわかんない」と思い込み、自分ができないと心から信じていたことに恐怖というか少し怒りを覚えたのを今も覚えています。おそらく本当はそういう能力をもちながら、訳のわからない思い込みでやる気を失った子供も数えきれないくらい存在しているような気もします。もったいない。。。

 

集団授業のため各生徒のバランスを考えるのが難しいのは理解できますが、生徒の質問に対して「なんでわからない」ということを一方的にいうのは、教師側が絶対にやってはいけないことのように思います。量子力学わからないのに化学教えるなということが言いたいのではなく、少なくとも量子力学をちゃんと勉強していない先生でも、「自分もちゃんとやっていないけど、こういう風に割り切ってイメージを大事にしているとこういうメリットがあったよ」といった生徒を腐らせないような言葉を選べばいいだけだと思うのですが。。。

 

ですから、もしこれを読んでいて、過去に先生にそういう心ないことを言われた経験がある方は、本当にそういうのは全て無視して欲しいです。「なんでわからないんだ」って多分本当にできる人は絶対に言わないというか、本当にできる人ほど「わからないのには理由がある」と思っているはずです。なので、そんなことをいう人の方がわかっていないものだとわりきって、「自分が納得するまではわからなくてOK。むしろわかっていないことに気づいてることが素晴らしいくらい」で、もし受験で時間がないなら「受験に間に合わせる程度に妥協して、わかるのは受かった後でもOK」といった感じのバランスをとってくれればなんて思います。

 

とりとめない文章になってしまいましたが、結構言える範囲で本音を書いたつもりです。未来ある若い子が一人でも多く自分の能力を素直に伸ばしてくれることを願ってやみません。

 


 

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