物理のエネルギーの使いこなし術(その3)です。前回はストックエネルギーの代表格である運動エネルギーと位置エネルギーをお金に例えました。ここではそれを含めた代表的な5つのエネルギーが、どこにどういう形でエネルギーをためているかを言語化してみます。
(念のためこんな感じで細かい補足を、少し文字を小さくして付け足しておきました。微積分も余裕なので難問も対処したい!とか物理学科に行きたい!という方以外は読み飛ばして全然問題ないです。)
以下では、イメージの核となるものを緑で強調してあります。あとは、熱の内部エネルギー以外は定数になることが多いものを大文字、変数になることが多いものを小文字にしておきました。逆になることも問題によっては当然あり得るので、あくまでも目安です。
(文字定数と変数についてはこちらに詳しくあります)
運動エネルギー
運動エネルギー(kinetic energy)をKとして、質量M[kg],速度v[m/s]をもつ物体(質点)ならば、上図(1)のように表せます。
イメージは重ければ重いほど、速ければ速いほど大きくなる感じです。物体の質量は大抵の問題では定数とできるので、その物体自体に速さという形でストックされたエネルギーと考えて良いでしょう。
(補足→速さというよりは運動量(p=Mv)という形でストックされるとイメージしておいた方が、大学で解析力学や量子力学やるときに困らなくなるので、余力のある方は運動量という形でその物体にストックされるエネルギーとした方が良いです。原子物理は実は前期量子論と呼ばれる量子力学のほんの入り口なのですが、このあたりから速度は主役の座を運動量に奪われていきます。)
位置エネルギー
高校物理で出てくるのは、上図(2)〜(4)にある重力、復元力、万有引力による位置エネルギーP[J]の3つくらいで、それぞれ位置エネルギーを求めるときには、基準点と今いる位置を考えてその値を代入して計算するはずです。つまり位置エネルギーというのは、保存力の存在する場所にストックされているエネルギーと考えるのが一番シンプルです。
(正確には、保存力の種類と今運動を考える主役の物体などと基準となる場所が確定しないと位置エネルギーが決まりません。良く使われる基準点は0と無限遠ですが、これは積分を計算した時に引き算の方が0になるものを選んだだけです)
のちに述べる予定ですが、僕は位置エネルギーは微分してマイナスつけたら保存力になるものというイメージしかないです。あえていうなら「場の全体を支配している保存力の支配者」ってイメージかなぁ?良くあるような速さに変わる仮想の坂道のようなイメージとしても良いでしょう。
保存力については、今まで1番質問されたような気がします。色々イメージしたり積分使ったり微分使ったりして、なんとなく理解させることはできますが、僕の本音は保存力という言葉については深く考えるのは大学に入ってからで十分というものです。高校物理の間は、どんな動きをしようとも、その運動ができる場所全体に存在している力とでもいえばわかりやすいでしょうか?そうでもないかな。。。
(補足として、保存力は位置エネルギーを各方向に偏微分してマイナスをつければ出てくる力のことで、そうすると線積分の過程で経路に依存せずエネルギー保存則が成立するといえるというのが、1番正確な定義でわかりやすいはずです。なので、あまり深く考えて悩むより、ベクトル解析やってから完璧に理解するのが得策だと思います)
それより重要なのは保存力と位置エネルギーの関係はちゃんと理解しておくことで、そこをサボると電場(電界)と電位の関係が理解できなくて困ります。
コンデンサーのエネルギー
詳しくは別記事で書きますが、実はコンデンサーのエネルギーは、電場(電界)の強さE[N/C]の2乗に比例しています。つまり、そのエネルギーは、コンデンサーの内部空間に存在する電場(電界)としてストックされていると考えて良いでしょう。
コイルのエネルギー
コンデンサーと似ているのですが、コイルのエネルギーも磁場(磁界)の強さH[A/m]の2乗に比例しています。つまり、そのエネルギーは、コイルの内部空間に存在する磁場(磁界)としてストックされているといえます。
気体の内部エネルギー
今考える主役の気体がn[mol]、定積モル比熱がC_v、温度がT[K]のときの内部エネルギーは式(4)のようになります。ここでは、内部エネルギーは温度という形で気体内部にストックされているとします。
(ここではしれっと温度という形と書きましたが、これは気体を巨視的にざっくりと考える熱力学的立場で、温度の定義が実はされていないということには目をつぶりました。実は大学の熱力学で温度というものを再定義するので、これをイメージとするのはやや問題があります。ここでは理解しやすさの方を重視したいので、温度は生活に密着しているからいいかという根拠だけで、温度という形でストックすると無理やり言い切ってしまいました。これが気になるなら微視的な統計力学的立場から、気体の分子運動論の方に着目して、気体分子の運動エネルギーの和という理解の方が良いかもしれません。)
ざっくりまとめるとこんな感じですかね。まあ、なんとなくそんなイメージかなぁという程度で流して読んでおいてもらっておき、自分で演習したときに体感しながら理解していけばいいと思います。
次回軽くフローエネルギーに触れてから、ストックとして扱っている感じを具体的な例題を通して掴んでいけるようなものを扱っていきます。細かい説明は後回しにしましたが、後から記事にアップし次第リンクはる予定です。
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