経済規模に対してお金の総量を増やし過ぎるといろいろ困ったことが起きます。

 

本題に入る前にお金の創造と総量のオサライ・・・

お金の量が増える要因には、①”市中銀行が貸し出しを増やし過ぎる”場合、②中央銀行(日本なら日本銀行)が金利を下げたり、債券を購入したりして、市中のお金を増やすことがあります。

 

 

・・・・

・・・・

お金の量には経済規模(国民総生産)に応じた適正量があります。 このことは、お金が生産活動の中でどのように創造されるのかを見れば、感覚的に理解できます。

・・・・・

・・・・・

適正量を超えてお金が増えすぎると成長期の経済であればインフレがおこります。

インフレは”物の値段”も”労働者の給与”もすべて上がるので、”ガルブレスの経済の鍋”が見かけ上大きくなるようなものです。この見かけ上の経済の拡大は”名目GDP(国内総生産)”拡大と言うことになります。 

インフレは成長期にある経済では景気が過熱するとよく発生しました。かっての日本でもインフレがたびたび発生し日本銀行が金利を上げて景気の行き過ぎをコントロールするということがたびたびありました。 インフレは貨幣価値が下がることを意味しており経済活動を不安定にするのでよいことではありませんが・・・、見かけ上の企業収益の増加をもたらすので肯定する人もいますが、給与労働者にとっては収入が変わらず物価だけ上がれば生活の質を落とすことになり良いことではありません。

 

もう一つの現象は”バブル”の発生です。 あまりにも多くのお金が増えすぎると、”ガルブレスの経済の鍋”から多くのお金が流れ出してしまいます。 流れ出したお金は経済活動に参加することなく銀行預金の形で眠っていて投機のチャンスが来るのをじっとまっています。 このような投機マネーが株式に向かうと”株式バブル”になります、また土地購入に向かうと”土地バブル”をひきおこします。かって日本では1980年代の末に”土地バブル”とその崩壊を経験しました。 この時を境に日本経済は低迷を続けており失われた30年、あるいはアベノミックス以降に対して失わた10年などと威張れています。

バブルと言うのは人々の欲望が未だ上がるだろうと、株あるいは土地を買いあさることで発生しますが、永遠にこれらの価格が上がり続けることはありえません、誰かが高すぎると気づいて売り始めると奈落の底に落ちるがごとく暴落します。 

1980年代末の土地バブルが崩壊したときには、銀行が土地購入を目的に貸し出していたお金が銀行に戻ってくることはなく、前代未聞の不良債権の山が銀行に残りました。 銀行は本来業務である企業の生産活動のためのお金の貸し出しすらできなくなりました。 政府は銀行の責任者の退陣(これは当たりまえの条件でした)を条件に、公的資金を投じて銀行を正常化しようとしましたが、時の各銀行の頭取は退陣を拒否しました。 以降、日本の金融環境の正常化はズルズルと尾を引き、日本経済は長い不況におちいることになりました。 

日本の土地バブルの発生とその崩壊については書くことが沢山ありすぎるので、それはまた別つの機会としてガルブレスの名著の紹介にとどめます。ジョン・K・ガルブレイス著の「バブルの物語」がオモシロくて面白いですヨ、最近復刻版がでたようです。

 

最後に、注目すべき事実について一言加えます。

土地バブルの崩壊の後始末が始まった1990年代以降、アベノミックスを経て今2024年までに膨大なお金が積みあがっていることです。

このことは、前回の記事「お金とは何か⑤」のグラフを見れば明らかです。

 

この膨大なマネー”ガルブレスの経済の鍋”からあふれ出ているマネーは何をひき起こすのでしょうか?  インフレ、バブル、それとも、すでにバブルが始まっている・・・?