「物」や「サービス」生産と「お金の誕生」の間には密接な関係があることが分かった今、経済規模(物やサービスの年間での生産総量)と「お金の総量」の間には密接な関係が有りそうだ・・・と言うことが推察できます。

ここで、経済規模(物やサービスの年間での生産総量)とは、国民総生産とも呼ばれるもので、1年間に人々が働いて生産する物やサービスをお金に換算して集計したものです。

物やサービスの生産とそれらを生産するための労働の流れ、そしてその流れとは逆向きにお金が流れてゆきます。その様子を単純にモデル化すると下図の通りです。

物・サービスと労働そしてお金がうまくクルクルと回ることにより経済がうまく動くことになります。 したがって、物・サービスの生産量・経済規模と世の中に出回っているお金の総量には密接な関係がありそうですが、どういう関係があるのでしょうか・・・?

 

 

物・サービスの生産とお金の総量の関係を見るために、もう少し詳しく物の生産がどのように行われるのかを見てみたいと思います。 例として自動車の生産を考えてみます。

 

仮に100億円分の自動車の生産を考えてみます。 自動車生産の親会社は銀行から100億円を借り、25億円は従業員の給与に、残りの75億円は関連会社への部品の発注をするとします。75億円の発注を受けた関連会社は、銀行から75億円の資金を借りて生産の準備をします、25億円分は従業員の給与に、50億円は配下の子会社に部品や材料の発注をします。 50億円の発注を受けた子会社は、同様に銀行から50億円の資金を借りて生産の準備をします・・・。

こうして、100億円分の自動車を生産するのに、関連企業全体で銀行から100億円+75億円+50億円+25億円=250億円の資金を調達することになります。 すなわち、100億円の生産をするのに250億円のお金が創造されたことになります。

仮に100億円分の車の生産が1/4四半期で行われるとすると、1年間で400億円分の車の生産が行われ、その間、250億円のお金が企業、家計の間をクルクル回転することになります。

また、町のラーメン屋さんでは、日々の運転資金として常時50万円程度のお金を銀行口座に保有しているかもしれません。

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ここまでくると、1国の1年間の総生産額(経済規模)とお金の総量には適切な関係があることが感覚的に理解できます。(約500兆円の日本の総生産量に対して、何兆円のお金が必要なのかの理論的な数値は別の問題として・・・)

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平易な経済の解説で人気があったアメリカのノーベル賞経済学者ガルブレイスは一国の生産量と必要なお金の関係を「経済の鍋」と言う例えで説明しています。

鍋の中に、生産者である企業、労働者であると同時に消費者である家計が、一つの鍋の中でひしめきあっている、鍋には”お金”と言う水が適切な量で満たされて、うまくクッキングできる・・・と言う説明です。

この「経済の鍋」の例えは、”経済規模”とそれに対する適切な”お金の量”があることが感覚的に理解できます。

 

次回はこの10年間の日本の”経済規模”の推移と”お金の量”を見て、この10年間のお金の量が適切だったのか? そして、お金の量が適切でないと何が起こるのか?・・・について考えてみようと思います。