門を叩くと、現れた黒服に思いっ切りイヤな顔をされた。
お前俺のコト嫌いだろ。知ってる。
なんかコイツの空気は俺と合わない。
絶対コイツもそう思ってるはずだ。
「何の用だ」
「食材を貰いに来た」
「……お前が?」
お。何その意外そうな顔。
俺が買い物に来るのがそんなに変?
俺がお利口な行動をしているのがそんなに可笑しいか?
失敬な!
「相棒は今風邪引いてるんだよ」
「ふーん。アイツなら這いつくばってでも来そうだけどね」
「……お前は、相棒が必死こいてまで此処に来るワケとか知ってんの?」
「さぁね?」
……俺、やっぱりコイツ嫌い。
何やら理由を知ってる様子。
俺よりアイツのコトを知ってるなんて、俺嫉妬しちゃう!
そんなコトを思いながらもいつの間にか女王の部屋へ。
アレ此処謁見の間じゃなくね?
もしかして私室?もしかしてレア?
「何の用だ」
うわまた赤良様にイヤな顔されちゃったよ。
しかもセリフ黒服と一緒だよ。
「食材を取りに来たらしい。いつもの方は今臥せてるらしい」
「病気か?」
「風邪だと」
「それで貴様が来たのか…」
女王が読んでた本を閉じてムスッとした顔で見る。
ゴメンね本読んでるトコ邪魔して。
…おお、そうか此処書斎か。
……にしちゃあ、ちょっと汚くね?
「此処の部屋何?」
「俺の部屋」
「……俺って……お前?」
「俺」
え。え。何何。
此処が黒服の部屋で。
そこに女王様?
しかも此処に案内したってコトはコイツは自分の部屋に女王がいるってわかってたってコトで?
ってコトはついさっきまで此処に二人でいたかもってコトで?
「え。何何、ふたr」
「重要な書類等は此処に保管している。だからチェックに来ただけだ」
うわ女王否定早ぇ。
俺まだハッキリとは何も聞いてないけど。
ま、いいやいいや。
それよりも今は食料だ。
「そういえば食料の補給だったな」
「そうそう」
「ユウ、メモ」
「ん」
右手にペン、左手で用紙を押さえてこっちを見る。
何か聞く準備万端って感じ。
……てか女王ペン持ってる姿似合うな。
事務作業の似合う女王。どんだけぇ~。
とか思ってたらオモクソ険しい表情。
イカン心が読まれてる!?サトラレ!?サトラレ!?
「早く言え」
「えーと。人参、お米、あと肉と~ダシの元。あとキャベツに~」
「……で?」
「タマゴと~トウガラシと~」
「……」
「ミカンと~鶏肉と~、サツマイモと~……コレ何て読むの?」
「どれだ。…菠薐草(ほうれん草)だ」
「それと、チーズとちくわとあとドラゴンフルーツ」
「………」
「………」
黒服と女王が眉を寄せて俺を見る。
何俺注目の的?
「何を作るんだ?」
「お粥」
「……チーズにちくわにサツマイモにトウガラシにドラゴンフルーツ?」
「え、何か変?」
「どう考えても一番最後のはいらねぇだろ!」
「えー、名前カッコイイじゃん。食べたら元気になれそうじゃん?」
「…まぁ、いい。用意してやる。とりあえず、お粥を作るんだろう?」
「うん」
「じゃあ適当な具も用意してやる。アララギ!何処だ!」
女王が声を上げる。
もしかしたら女王が大声を出してるの聞くの初めてかも。
するとしばらくもしない内にパタパタと足音が聞こえて扉が開けられた。
「何でしょう?」
「コレを用意してこい」
「……あーハイハイ。わかりました」
「で、帽子屋、お前は私についてこい」
「え?あの使いの人についてくんじゃないの?」
「あっちは肉や主菜の材料。果物や副菜の材料は私が取る」
「あの黒服は?」
「イブキも基本向こう」
「じゃあ何、女王と俺二人っきり?」
「ついてくぞ俺は」
「………」
「………」
いやん黒服君。
気配もなく背後に立たないでよ、ビックリしちゃうでしょお兄さん。
しかも超睨んでる。
コイツの警戒心の強さはね、借りてきた猫とかそんなカワイイもんじゃない。
忠誠心の強い犬というか。
そのドーベルマンの様な姿勢の奥底には確実に噛み千切られそうな獅子並の凶暴さもあって。
だけど空気で解るんだ。
コイツは頭がキレる。
要するに、敵に回したら絶対痛い目見る。
だから女王が右腕として置いてるんだろうけど。
ま、俺だって強いけど~。
って自己主張してみる。心の中で。
「お粥の材料がこっち。こっちはとりあえず頼まれた食材だ」
「おうセンキュー」
なんだかんだでちゃんと袋が分けられてる。
でもタマゴを入れる女王の様子はちょっとウケた。
ドレスでちまちまと袋入れるとか。
しかも手袋つけたままとか。
袋を受け取るとすぐさま黒服が腕を掴んで出口へと案内しだした。
え、そんなに俺が城の中にいるのイヤ?
あ、使いの人肉持っててくれてる。この人いい人~。
とか思ってたら黒服のヤツ廊下を歩いてる途中で俺の腕を放した。
「お前ついでだから案内してくんね?」
「いいよ」
「頼んだ」
……何だよ!俺を連れ出したのはお前のクセに!
連れ出した後の案内を面倒臭がるとは何事だコイツ!
俺がムキーッとしてると、使用人が宥めてくれた。
「アイツは元々案内係は仕事じゃないですから」
「え、そうなの?」
「人が少ないからね。手が空いてる時に誰かがやるんだけど、イブキは女王の護衛と一緒に城の警備担当だから。大抵は門番してて、そのついでに案内してるだけ」
「ふぅん。…女王もっと人雇えばいいのに」
「あんまり群れるのが好きじゃないんですよ。薄っぺらい人間関係が嫌いな人ですから」
そんな雰囲気してる。
合点がいったところで、俺は使用人に聞いて見た。
「ところでさ、アンタは俺の相棒がちょくちょく此処に来る理由知ってる?」
「もう一人の帽子屋ですか?わかんないですねぇ」
「そっか。俺も知らないんだけどさ。…でも、アイツ知ってそうだよね」
「イブキですか」
「そうそう」
「よくはわかんないですけど。でも、イブキが言わないっていうんなら、あんまり近くの人が首を突っ込んでいいもんじゃないんじゃないでしょうか?」
「でも俺も”帽子屋”だぜ?知る権利くらいあるんじゃねぇの?まぁそんなのよりもただ単に俺より相棒のコト黒服が知ってるのが気に食わないんだけど」
「まぁまぁ、いつか本人に聞いてみればいいじゃないですか。あ、もうすぐ出ますよ」
「あぁ、ありがとな」
「いえいえ。また何かあったらいつでもどうぞ」
そう言って使用人に送り出されて家路につく。
その後衝撃に顔をひきつらせるともしらずにルンルン気分で。
家に帰ってみて部屋の扉を開けると、相棒がベッドに縛りつけられていた。
そしてそのすぐ側には澄み切った笑顔のチェシャ猫。
「何があったの…?」
精力尽き果て魂が浮遊している相棒を見つめて、俺は呟いた。