22024 正月 東京ツアー 1
< 元日 >
お正月、恒例の東京ツアーです。
妻の実家が東京なので、元日から4日まで、都内の安ホテルに泊まって、あちこち、見て回ります。
元日。 朝、7時の飛行機で松山を出発。
ご覧のように、天気は快晴。 しかし、気温は低く、また東京は強い風が吹いていました。
お正月から、開いているのは、ここしか無いので、毎年、ここに来ることに。
六本木の森美術館
『私たちのエコロジー』 という、今風のテーマを掲げた展覧会。
こういうテーマの展覧会で、説教臭くならないように、いろいろ考えて作ったのでしょう。
会場に入ってすぐ目の前に来るのが、この展示。
ニナ・カネル 「マッスル・メモリー(5トン)」
北海道のホタテ養殖場の産業廃棄物、ホタテの貝殻、5トンが敷き詰められています。
お客は、入っていいんですか? 踏んでいいんですかと会場係りに確かめて、おそるおそる靴で貝殻をバリバリ割りながら、中に入っていきます。
自分の足で貝殻をバリバリ踏んだりするので、それなりに面白かった。
中西夏之の60年代の作品
プラスチックの長径30センチのボールの中に、哺乳瓶が封じられている。
40年くらい前に、京都の「60年代 日本の前衛芸術」という展覧会で、別の衣類や汚れたバスケットシューズなどを封じ込めた、いくつもの作品を見て、とても面白かった。
40年後に、ここで会えるとは。
ジュリアン・シャリエール 「制御された炎」
この写真では、何のことだか分かりませんが、15分ほどかかるビデオ作品
今回、いちばん長く楽しめました。
真っ暗な部屋に入ると、壁面に青白い光の粒が、いくつか上昇していて、そのうち、光の点が連続して光の帯になり、その長い帯が瞬時に縮んで点になって消える。
花ビラのように開いた5本の帯が、縮んで点になって消える。
ここまで来て、やっと分かりました。
打ち上げ花火の動画を、逆回しに見せられています。それも、次々と打ち上げる花火を、ドローンを空中で縦横に飛び回らせて撮っています。
花火が打ち上げられて、上昇し、破裂して開いて、点になって消える、という当たり前の過程を、逆回しにすると、花火だからそれなりに美しいのに、すごく違和感のある映像になります。
当たり前に進行することが、時間が逆に進むのを見せられる、という作品。
モニラ・アルカディリ 「恨み言」
大きなボールの下に行くと、紅海あたりのかつての、天然真珠の産地の人々の独白が流れます。
このボールは、真珠という見立てでしょう。
しかし、現地の言葉に被せて日本語訳が鳴るが、音は小さめで、聞き取れません。
展覧会の宣伝媒体にも使われる、衝撃力のある絵柄ですが、作者の意図は伝わらない。
ダニエル・ターナー 作品名はない?
いまインドの造船所で、解体中の日本のケミカルタンカーから取ってきた気圧計を、会場の壁面に擦り付けた痕跡。
だから、何なの? という現代アートらしい作品。
この壁面を切り取れば、「作品」として売れるのでしょうか?
作者・作品とも不明 作品名のファイルが公開されていますが、10ページにもなるので、わかりませんでした。
プリミティブな人々の絵画を思わせますが、そのまま信じてよいか?
額に入れられ、ここに並んでいる以上は、プリミティブその物ではないですね。
アサド・ラザ 木漏れ日
ここは、巨大高層ビルの51階。
照明も空調も、巨大なエネルギーを浪費して成り立っています。
そこに、ざっとした足場を組み上げ、天井の一部を除けて、室内照明を消して、外の光を入れています。
もし、この足場に上がれて、外が覗けたら、わたし的には完璧な作品になるのですが。
この武骨な足場が、展覧会の最後の作品でした。
六本木駅のマクドナルドで、安いお昼を食べます。
松山みたいな田舎と同じ値段で、都会でも同じメニューを出しているのに感心しつつ、これで、店内のBGMがもっと静かなら、とか田舎の老夫婦の感想。
昼の2時すぎに、新宿の武蔵野館で映画
ケリー・ライカート監督 『ファースト・カウ』
この監督の映画を、去年、松山のシネマルナティックで、2本見ています。アメリカにもハリウッド大作ではない、マイナーな映画を作ってる人もいるらしい。
1本(デビュー作?)は、しょうもない映画でしたが、『ウェンディ&ルーシー』という映画が良かった。
さて、最初の牝牛とは何じゃろな、ということですが、舞台は西部開拓時代のオレゴン。
森の奥の開拓地。ビーバーなどの毛皮は、ソフト・ゴールドと呼ばれて、西欧の都会で大人気。それを求めて、インディアン、駐屯地の軍人、移民の白人、中国人、ロシア人が入り込んでいる。
法律など通用しない、実力だけが頼りの、無法地帯。
シナモンにハチミツ、チーズにバター。保存の効くものは金さえ払えば、開拓地でも手に入るが、新鮮なミルクだけは、そうはいかない。
毛皮取引でボロ儲けした仲買人が、新鮮なミルクやクリーム欲しさに、遠くの町から牝牛を取り寄せた。
これが、その地のファーストカウ。
主人公の料理人と、商才に長けた中国人が出会って、料理人いわく、あの牝牛のミルクがあれば、ボストンやロンドンにも負けない味のクッキーが焼けると。
夜中に、こっそり仲買人の牛の乳を搾りに行って、それで焼いたクッキーは、森の奥の暮らしにうんざりしている連中に、衝撃の美味しさ。
なかでも、当の仲買人が、まさにロンドンの味だ! と絶賛。
たちまち、不細工なクッキー1枚が、銀貨5枚に。
銀貨はずっしっり溜まってきた。
二人の夢は、大都会のサンフランシスコでホテルを開業。
仲買人が、自分の牝牛の乳の出の悪いのを気にしているのは、分かっているが、ホテル開業にはまだまだ遠い。
映画を見ているお客は、ここらがもう潮時だよと言ってるのに、もう一稼ぎしてからと、夜中に忍んで行けば、やっぱり見つかって、死にもの狂いの逃走。
しかし、この二人、一方が隠してあった銀貨の袋を取り出すと、相方をさがして一緒に逃げようとする。
この男の友情に、お客はグッと来るんですね。
しかし結果は、映画の冒頭の、犬を散歩させていた人が、森の奥で犬が掘り返す落ち葉の下から、2組並んだ白骨遺体を見つけるシ―ンとつながります。
実は、この映画の2時の回に行くと、すでに満席。
松山にいて、自分たちの見る映画が、満席になるなんて想像もしてなっかた。
シネマルナティックは、お客が10人を越えると、大入りと言われます。
4時の回のチケットを買って、いったん秋葉原のアパホテルに荷物を置いて、お茶を飲んだら、また新宿に戻ります。
映画館で、遠くにいる子供からラインで、東京の電車とか、大丈夫なの? と。 何のことだか分かりません。
東京も震度3だったらしいけど、電車に乗っていて、まったく気がつきませんでした。
東京ツアー 元日の部は、ここまで。