中国のお茶 | 松山市はなみずき通り近くの漢方専門薬局・針灸院 春日漢方

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        中国のお茶

 

 ある患者さんから、友人のお土産にもらったからと、中国茶のセットをいただきました。

 

 

 

 漢方屋として、中国のお茶には興味がありました。

 40年くらい前から、中国物産展なんかで、中国のお茶を買って飲んだりしていましたが、本当にアレっと思ったのは、30数年前に新婚旅行で北京に行った時です。

 空港のお土産屋で、日本人のおっさんが、「ウーロン茶おくれ。」といったときに、後ろの棚にはびっしりと数百のお茶の箱や缶が並んでいるのに、店員が手に取って見せたのは、たった二種の缶でした。おっさんは少し怪訝な顔をしましたが、そのどっちかを買ったのでしょう。

 

 そこで分かったのは、中国茶=ウーロン茶ではない。たぶん、ウーロンは中国茶の数あるブランド中の一つに過ぎない。日本茶なら、例えば「八女茶」みたいな。

 その時は、わたしは「緑茶」と書いてある缶を買って帰りました。淡い黄色のお茶で、さっぱりと爽やかな飲み味でした。

 

ウィキペディアや伊藤園のサイトの解説によると、中国のお茶は、製法の違い=発酵のどあいによって、<緑茶ー白茶ー黄茶ー青茶ー紅茶ー黒茶>に分けられると。

 このお茶の発酵とは、酒やヨーグルトの発酵とは違い、生の茶葉に含まれる酸化酵素を働かせることで、火を加えれば酵素は分解して発酵は止まります。

 

1、緑茶=不発酵茶

 茶葉を摘んですぐに釡で炒って乾燥させたもの。代表的な銘柄は写真の上左の「龍井茶」

 中国ではお茶の8割近くはこの緑茶に加工されているらしい。

 2010年に中国にいったときもこの「龍井茶」を買いましたが、これが一番高くて、100gが   

1700円もしました。 特徴は「豆の香りがする」というのですが、穀物の香りが一番、高級   なんだというのが、中国人の感性なんですね。

 

2、白茶=弱発酵茶

 産毛の生えているようなごく若い茶の芽を集めて、浅く発酵させてから自然乾燥させたお 

茶。若い芽を集めて作るので、もっとも高価なお茶にになります。

 

3、黄茶

 軽度の発酵をさせたお茶

 

4、青茶=半発酵茶

 写真の上右。ウーロン茶に代表される、発酵部分の褐色と不発酵の緑が混ざって青く見えるから。大陸の福建省と台湾とで生産されます。凍頂烏龍茶、武威岩茶、鉄観音などの銘柄があります。

 

5、紅茶=発酵茶

 イギリスの紅茶文化の影響を受けて中国で発展したお茶。代表的には「キームン」。燻したような独特の香りの紅茶。

 

6、黒茶=後発酵茶 写真 下の左

 できあがった茶葉にコウジカビを発生させて発酵させて作るお茶。代表的な銘柄は「プーアール茶」。

これが伊藤園のサイトの説明ですが、ウィキペディアによると本来のプーアール茶は、生茶をそのまま数年間、発酵を進めさせたもの。それを短期間で作るために、1970年代から、加熱処理をしてコウジカビで発酵させるようになったと。

 

7、花茶  

 できた茶葉に花の香りをつけたもの。代表的には「茉莉花茶=ジャスミン茶」 写真下の右

 黒い茶葉のあいだに白い花弁が混じっています。

 沖縄ではこのジャスミン茶をよく飲んでいます。私も夏の蒸し暑い時期には気分がさっぱりするので飲んでいます。

 

 さて、漢方薬屋のサイトなのに中国茶の話をしてきたのは、日本では、お茶といえば、ほぼ緑茶に決まっています。上の中国茶の分類でも、緑茶。摘んだ茶葉を日本では蒸して発酵を止めて、揉んで乾燥させたもの。

 製品のランクは、玉露から番茶までいろいろありますが、製法は同じです。それ以外の別の製法のお茶は、「抹茶」があるくらいです。

 いまほうじ茶を調べてみましたが、緑茶が茶葉を蒸すのに対して、ほうじ茶は葉を強めに炒って作るので、緑茶の一種に入れるようです。

 日本人のお茶は、味も香りもほぼ一手。これがお茶の味、というものの幅が決まっています。それから外れたお茶というものは市場にありません。

 

 それが中国に行くと、製法で6、7種類に分けられるような色んな種類のお茶が作られています。中国の「緑茶」の風味は日本のお茶とかなり共通なので、さっぱりとした爽やかさは楽しめますが、それの高級品の「豆の香り」が良いのだとかは、日本人は考えないでしょう。

 いっぽう「プーアール茶」になると、あの味は、どう考えてもカビ臭いとしか思えなくて、これを美味しいと思う中国人の感性は分かりません。

 また「ウーロン茶」も渋みが強くなると日本人には向かないでしょうし、「キームン茶」の燻した香りも好まない人が多いでしょう。

 

 一つのチャという植物の葉の加工品が、中国ではさまざまな味のバリエーションをつけて楽しまれています。いっぽう日本では、お茶の味は一手に決まっている。

 

 こういう文化の指向性の違いが、日中の漢方医学にも反映されているのじゃないかということを感じています。日本の漢方は指向性が一手に、それも淡白なほうに偏っていないかと、考えないといけないでしょう。

 そんなことを考えるきっかけは、たとえば「人中白(じんちゅうはく)」という生薬があります。

昔の男子の小便器の周りに白っぽい物がこびり着いてきます。それを削り取ったものが「人中白」。いまの清潔なトイレには着きません。

 本草書でそれを見るたび、昔の人は変な物まで薬にしたんだなあ、というものだと思っていましたが、 漢方仲間が台湾の製薬メーカーの工場の見学にいったとき、倉庫に「人中白」の100kgの箱が積み上げてあったのを見たそうです。

 昔ばかりでなくて、いまも変な物を薬に使っているんだなあ、と感心したしだいです。

 

 

 こちらも中国茶の缶と一緒にもらったもの。「槐花(かいか)」=エンジュのつぼみは生薬として使われますが、生薬としてはえらくきれいに仕上げられていると思ったら、ウィキペディアの、茶葉を使わないお茶のなかに、「玖槐茶(まいかいちゃ)」というのがありました。

 

  容器のラベルには、「行気・解欝・和血・止痛」=気を巡らし、欝を散じ、血を和し、痛みを止める、と書いてあります。

 これを下さった方は近ごろ生理痛に悩んでいるので、このお茶を飲んでみられたらいいんじゃないかと思えます。