そして再び君に出会えたなら その瞳を孤独にさせはしない
『もう一度tenderness』(浜口司・作詞)
ネタバレありです。
93年にテレビで放送してたのをみてました。高3でした。
たぶん半分以上はみてたと思います。
ビデオに録ってたけど、あの頃の夕方のアニメってコロコロ放送時間が変わったんで予約録画があんまりあてになんない。
見逃すともうみる手段がなかった。再放送しないしオンデマンドなんかないどころかレンタルにも並ばない。当時、ガンダムのレンタルは映画かOVAだけで、テレビ版はなかったはず。(ああ、LDは高くって手が出なかった)
あれから31年、全51話、みてみました。
いやあ、おもしろかったです。テンポよくみれたし。
Zガンダムはテンポよくみれなかったんで、そういう忍耐を強いられると思ってたんですが、そんなことはなかった。
失敗作とか迷作とかってきいたけど、立派な名作です。ガンダムの中でも、ガンダム以外のアニメと比べても。
Vガンダムは、ザンスカール帝国とレジスタンス組織リガ・ミリティアの戦争なんで、ZガンダムやGレコに比べると、わかりやすいのもよかったところ。
どうせ敵も味方も一枚岩じゃなくって内部抗争も描くんだから、戦争は2つの勢力にしとくのがちょうどいいんじゃないかしら。
人がどんどん死んでいく話だという印象が強かったけど、やっぱりどんどん死んできます。
もともと不幸な人たちが戦争を通じてもっと不幸になるという話といっていいかも。
話の展開として、味方がピンチになる場面を作ると、話が盛り上がる、引き込まれるという効果があると思います。
どんどん死んでいかなくても話を盛り上げながら展開していけたと思うんですけど、パイロットは死なせずにモビルスーツが大破するだけにするとか。
序盤から味方が次々に死んでいくんだから、なりゆきとかじゃなくって、はなっからそういう展開にするつもりだったんでしょうね。
主人公ウッソ・エヴィンの年齢を13歳にして、低年齢のガンダム・ファンを獲得するという目論見があったといいますが、こういう相反する要素がもりだくさんなのがガンダムの味わい深いところなのかも?
ウッソ・エヴィンが13歳ということで、それまでのガンダムの主人公が十代後半だったのが、十代前半になってます。
80年代の女子大生から90年代後半の女子高生にブームが年齢の低い方へ移っていったり、4年後の97年に14歳という年齢が注目されたり、今から振り返ってみると、時代を先取りしていました。
ウッソを活躍させるために、味方は頼りになる成年・青年男子ってほぼいなかったですね。その分、活躍していたのは女性や高齢者で、ここも時代を先取りしてました。
また、マリア主義という人類を破滅させることを目的とする新興宗教の危険さを、95年の地下鉄サリン事件の2年前に、描いているのも先取りしています。
ウッソは両親を探すためにリガ・ミリティアと一緒に戦ってきて、やっとの思いで再会した親があんなひどいなんて、みてるこっちも暗くなるっていう。悲惨さとか暗さも先取りしてました。
これらは、当時は先取りしすぎていて、全くピンともチンともきていなかった要素でした。
そして、Vガンダムといえば、カテジナ・ルース。
味方から敵になるという、レコア(Zガンダム)、クェス(逆襲のシャア)と同じパターンの女です。
最初はウッソのあこがれのお姉さんで反戦的だったのが、好戦的で凶悪なラスボスになるんだから、アニメとはいえ、人生ってわからんもんです。
カテジナがラスボスになったのは、クロノクルがウッソのライバルとして存在感を出せなかったからといいますが、卑劣で狂気に満ちた悪女という新しいキャラを造れたし、Vガンダムは女性がメインな話ということで、これでよかったんじゃないかしら。
ウッソはカテジナにかまってほしくてピーチャカと動き回りますが、空回りばかりしてます。ウッソはシャクティと仲良くしてればいいのにって思ってみてました。
最終回でのカテジナとシャクティが出会う場面はいろいろな解釈がされてます。
いろんな想像ができる懐の深いシーンだし、よくわからなくっても言葉にならない感情が胸にこみあげる、全51話を締めくくるのにふさわしい名場面です。
最終回はオンエアのときみてたんですが、カテジナが生きていた、今までキャラを死なせまくってきたのに残虐な敵だったカテジナは死なせなかったことに驚きました。
そのカテジナは視力も記憶も、生きる気力も、失ったように見えて、さらにショックでしたね。
シャクティと話し、戦争で破壊された故郷へ帰ろうとするカテジナは涙を流します。
カテジナの涙は、全てを失った虚しさ、失ったものはこの先何一つ取り戻せないという黒い確信が流させるんだと思います。
カテジナを見送ったシャクティはどうして泣いたのか? カテジナに同情しつつ、忘れようとしていたあの戦争の悲しみがまだ終わっていない、これからも続いていくという予感に恐ろしくなったんじゃないかしら。
マーベットは亡くなったオリファーとの子供が産まれるようで、死なないでよかったです。
マーベットはウッソたちのお姉さんというよりお母さんをしていて、この悲惨な話に明るさを灯してくれていました。
最後に、森の中で雪が積もるVガンダム。戦争の虚しさが印象に残りました。
”そして再び君に出会えたなら その瞳を孤独にさせはしない”
と、エンディングが歌われますが、カテジナがウッソに向けて歌いたかったのか、ウッソに歌ってほしかったのか、と思うと切ない。いい曲だし。
音楽もいいのでサントラ借りたい。