なんてことない非日常 -15ページ目

なんてことない非日常

スキビ非公認二次創作サイトです。
駄文ばかりの辺境館ですが、広いお心で読んでいただける方歓迎しております。

すっかりご無沙汰でございます。

皆様、インフルエンザの流行に巻き込まれていないでしょうか?



さて、すっかり蜘蛛の巣があちこちにはびこりだしました我が絶壁の孤城にあいも変わらずお越しいただきありがとうございます!


今晩22時にすっかり停滞していました、『アラビアン・ナイトは眠れない』の最終話をアップします。


本当にお待たせいたしました!!


実は11月中に大半は書けていたのですが、後半が納得いかずに・・・

そうしている内にリアルが大変なことに!?


そして気が付けばもうこんな時期に・・・『マリッジ~』も気になっているのですが、とにかく先に『アラビアン~』を上げたかったのです。



『アラビアン~』を書くきっかけは、以前も書きましたがアメンバー申請をして下さる方から『霧の孤城』をお気に召してくださっている方が非常に多くて、自分の中では初期に出した話でもありますし書ききれなかったことが多かった話なのでリベンジのつもりだったのです。


リベンジなので、できれば年内中に!!

ということもありまして、『マリッジ~』よりも先に出すことをお許し下さいね。



まだまだリアルは落ち着きそうにありませんが、暇を見てはカタカタしていますのでたまに蜘蛛の巣を払いにお話を置いて行ったときにはご覧いただけると嬉しいです。


キョコ誕もクリスマスも・・もしかしたら蓮誕も・・・企画モノは手を出していられそうにありませんが、来年も変わらぬご愛顧を頂けるととても喜びます。



少し早いですが、皆様よいお年をお過ごしください。



※間に合えば年内中にも『ルート』など上げていきたいと思います。



来年もどうぞよろしくお願いいたします。



ユンまんまでした・




§ルートX 72





 (ぎゃあ!?携帯の充電が切れてる!)



キョーコがそう叫んだのは、ようやく本日の仕事が終わり強制的に乗せられたリムジンの中でだった。




*************



「・・・・ほら、ボスに連絡したまえ『私にこの仕事は荷が重すぎました』って」



クーがそう言いながら渡してきた受話器を受け取りながら、キョーコは頭をフル回転させていた。



(どうしよう!このままじゃ、本当にクビにされちゃうっ)



冷や汗が滝のように流れているのをひた隠し、キョーコは恐る恐る受話器に耳を当てた。

クーがダイヤルした後、数回コール音が聞こえ間もなく何度か聞いたことのあるローリィの秘書が電話に出た。



『はい、宝田でございます』



「あ、あのっ最上ですが・・・社長さんは・・・」



『社長はただいま別件で手が離せないのですが・・・何か御伝言はございますか?』



「いえ・・・・」



『そうですか・・・それでは失礼いたします』



「あっ・・はい!・・・」



カチャリと通話が途絶えたがキョーコはそのまましばらく待った。



(どうしよう・・・・・・・・そうだ!)



キョーコはクーの目の前で、咄嗟に嘘をついた。



「あ!最上です!!夜分に申し訳ありません!!」



クーの目の前で、ローリィと話しているフリをすることにしたのだ。



「・・いえ・・・・」



キョーコはローリィに何か言われ、頷いているようにしながらチラリとクーを見ると腕組みをして監視を続けているのが目に入った。



(無言で降参するように圧力をかけられてるわ・・・・・)



内心、今すぐこの仕事を降りて蓮の待つマンションに帰りたかった。



(でもっ)


キョーコは、ぎゅっと受話器を握りしめた。



「いえ!ご心配なく!ヒズリ氏は私の料理を喜んでくださいました!明日からも頑張ります!!」



「なっ!?」


キョーコの言葉にクーが度肝を抜かれた表情になってもキョーコは構わずに続けた。



「ええ・・・はい、ヒズリさんは社長さんの言うとおりとても素晴らしい方ですね・・・え?・・・はい・・・・少々お待ちください」



キョーコは呆然としているクーに受話器を差し出した。



「社長になにか言われますか?」



これは賭けだった。

泣いてすがれとけしかけた本人にその言葉を言わせようと、受話器を向ける。

こうすることで確実に相手がいるフリが出来ると踏んだのだ。

そしてもう一つ、キョーコはクーが自分のプライドで告げ口のようなことはしないとわかっていた。


クーはキョーコの予想通り受話器を受け取ることはなかった。


「もういい!」



予想通りにいったとはいえ、キョーコは大きく安堵の息をついてゆっくりと受話器を元に戻した。

ここで急いで切って怪しまれないようにすることも出来、キョーコはようやく落ち着きを取り戻した。


そして改めて部屋の中を見て、呆然とした。


クーがせっせとビニール袋にキョーコが作った食事を投げ入れていたからだ。



「ちょっと~!?何すんのよ!?」



「ふん!まだ居座るつもりならキッチリ仕事をしてもらいたいものだね?この生ごみをキッチリ片付けろ!!」



ドザドザとキョーコが苦心の末作った料理たちをビニール袋にまとめると、作った本人に突きつけた。



「生ごみにしたのはあなたでしょう!?あなたこそ、作らせたんだからキッチリ食べなさいよね!!?」



キョーコは一度収まった怒りを爆発させると、ビニールをひったくりどんぶりにビチャッと盛った。



「こ・・この私に・・・ハリウッドの大スターであるこの私に、生ごみ同然のねこまんまを食えというのか!?」



「はんっ!ハリウッドの大スター様は、できないことを突きつけられたら怖気づくヘタレ野郎なんですね!?」



「なんだとぉ~!!?プロ根性なめんなよ!?」



売られた喧嘩を買ったクーは、キョーコからてんこ盛りに乗せられたねこまんまを奪い取った。

そこでキョーコは正気に戻った。



「あ・・・あの・・・本当に・・・食べるんですか?」



思わず喧嘩を売ってしまったが、先ほどまで食事出来る状態だったものがモザイクがかかりそうな代物になってしまっているのを目の当たりにし青ざめた。



「お前が差し出してきたんだろう!?男に二言はない!!」



大変な有様のねこまんまのなかに、青ざめたままクーは内心後悔しながら箸を突き立てた。

そして意を決して一口、口に運んだ。



「!!」



「あ・・あのっもういいですから・・・」



「何を言っているんだ!?食材を無駄にしたらバチが当たるだろう!!?」



(あなたが言う!?)



しかし、キョーコが呆気に取られている間にクーはおかわりしてまですべてを平らげてしまったのだ。


その食べっぷりは、ローリィからもたらされた情報で知ってはいたが間近で見ると感心しぱなしだった。



(コーンももう少し食べてくれたらいいのに・・)



そう思いながら片づけをしていると、ムスッとしたままクーがやってきた。



「もう遅い・・・車を回すようにフロントに伝えたから、それに乗っていくように」



「え・・・・いえっそんな・・・・」



(あんなに大ゲンカけしかけて、どの顔で車を使わせてもらうなんて・・・)



そんなキョーコの心情などお見通しのように、クーは鼻で笑った。



「あんなことぐらいでフェミニストの心を捻じ曲げるようなことはしない・・・それに大ゲンカした後帰路で君に何かあったら目覚めが悪い」



「・・・・さようですか・・・」



胸を張ってそう言い放たれると、遠慮している方がバカらしくなってしまいキョーコは渋々クーの手配した車に乗って帰ることとなったのだった。



*************



「心配してるよね・・・・」



タクシーの中の時計はすでに午前2時を過ぎていた。


今日のことはもちろん蓮に伝えてない。

伝える暇がなかったのだから仕方がないのだが、携帯の電源が切れてしまっていたことは完全に自分の不注意だった。



「ちゃんと話し・・聞いてくれるよね?」



先日自分の思い上がりな行動で、蓮に怒られたばかりで『連絡が付かない』『帰ってこない』という事態はキョーコ自身で危機を招いているようなものだ。


キョーコは、部屋の前に来ると意を決して鍵使い中に入った。



「ただいま・・・・」



蓮が寝ていると思い、小声で伺うように声をかけた。

しかし部屋の中は静まり返っている。

それどころか、明かり一つ付いていない。



「・・・・・・・・・え?」



キョーコは驚きながらも、明かりを付けながらリビングに足を踏み入れた。

しかしそこには蓮の姿はなかった。

寝室も、バスルームも、トレーニングルームも、客室も・・・すべて見て回ったが蓮の姿はどこにもなかった。



「・・・まだ・・・お仕事中?」



しかし、帰宅したら話をしようと言っていた。

キョーコは慌てて携帯を充電器に繋ぎ、電源を入れた。


連絡が入っているのかもしれないと思ったのだ。

だが、何の連絡も入っていなかった。


キョーコは、携帯を操作すると蓮の番号を呼び出した。


もし仕事中ならば、メッセージだけでも残しておこうと思ったのだ。



『ピルルルルル・・・・ピルルルルル・・』



「・・・へ?」



キョーコが驚いたのも無理はない。

蓮の携帯はソファーの上に投げやられたまま放置されていたのだ。


ということは、蓮は一度この部屋に帰ってきてそれから出て行ってしまったことになる。



「コーン!?いったい・・・どこに!?」



キョーコは、蓮の携帯を拾い上げると胸元でぎゅっと握りしめるのだった。





73へ






















§ルートX    71





キョーコは息も絶え絶えになりながらも、口の端をニヤリと釣り上げた。


ダン!!


ギラつく刃をよく磨かれた大理石で出来たキッチンの上に叩き置く。



「・・・や・・・ったわ・・・・59分34秒・・・26秒も残して、封印していた記憶を紐解きながら作った会席料理!!汁物はおすまし!魚は煮物と焼き物を両方用意!!ご飯はお櫃に入れて、京野菜たっぷりの煮物や天ぷら先付けですら京野菜にこだわった品!!許しを請いながら食すがいいわっ!あの母国語を忘れた似非日系俳優め!!!!」



キョーコはそう吐き捨てるのも無理はなかった。


蓮のことを言われ放題にされ、ぶち切れしたキョーコがクーの車からクー自身に降りろと無茶な命令をするとはじめは呆気に取られていたクーも意識を取り戻しキョーコに一時間以内に自分の注文した通りの料理を完成させるように言ってきたのだ。


売り言葉に買い言葉でも、キョーコは意地になって料理を完成させた。



『ミスター・ヒズリ?!食事の用意が出来ましたよ!?』



寝室となるプライベートルームのドアを叩くと、そう声をかけたキョーコに中から不機嫌全開でクーが出てきた。



『・・・叫ばなくてもわかる』



会うたびに不機嫌を重ねるクーに、キョーコはもう取り繕うことはしなかった。



『そうですか?ご自分の仰られたことをすっかりお忘れになられているから、耳もモウロクしているのかと・・』



その態度にクーは頬を引きつらせつつ言い返した。



『なんだと!?・・・しかも何だこれは!?こんなに味のない料理は始めただぞ!?・・・やっぱり先輩がダメなら後輩も・・・』



しかし、キョーコは無表情のままクーの喚きを一蹴した。



『これだからモウロクは・・・ご自分で一時間後に夕食を食べるって仰ったのに、こんなジャンクフードにスナック菓子を食べてたら繊細な味付けの京料理を味わうことなどできないって何でわからないんですか?』



キョーコが落ちたスナック菓子の空き袋を拾い上げ、クーを見やるとクーはにっこりとほほ笑んで備え付けの電話に手を伸ばした。



「ああ、フロント?先ほど突然部屋に大量の生ごみが発生してね?引き取りに来て欲しいんだ・・・それと夕食も頼もう・・ん?ああ・・・フランス料理でもなんでも美味しければ何でもいい」



(なっ!?・・・まごみ!!?しかも日本語で・・・しかもっしかも!美味しければ何でもいいですって!!!?)



クーのあまりの言いようにキョーコが震えていると、それを見つけたクーは満足そうにほくそ笑んだ。



「そうそう・・・粗大ごみも一つあってね?この際だから台車一つ借りようかな?」



キョーコの頭上に【粗大ごみ】という言葉が降ってきて、キョーコ自身を潰した。



「そういうわけだから、俺はこの通り日本語も忘れていないし似非日系俳優でもないしどんな理不尽な状況も打破できる金も権力もある・・・君のような小娘などでは俺のはむかえるはずがないだろ?どうせなら君の尊敬する先輩と束になってかかってくればいい・・・・・ほら、ボスに連絡したまえ【私にこの仕事は荷が重すぎました】って」



クーはフロントと話し終わった電話をキョーコに向けて差し出してきた。


キョーコはそれを無言で受け取ると、クーが番号を押すままに受話器を耳に当てた。




*********



「おう!俺だ」



電話だと秘書がやってきたことで、ローリィはピンときて機嫌よく声をかけた。

しかし、電話の相手は予想していた相手ではなかった。



『何考えているんですか?』



「・・・・・・・・・なんだ・・蓮か」



ローリィは心底がっかりしながら、先ほどまで遊んでいたプールから上がった。

プールの中ではニシキヘビの『ナツコちゃん』が、寂しそうにローリィを見送っていた。



『なんだじゃありませんよ・・・・どういうことですか?』



「あん?何がだ?」



プール上がりの一服をするローリィに、フランス王族でも身に付けそうな豪華な刺しゅう入りのガウンを秘書がかけるとローリィは簡単な手の合図をその秘書に送った。

それにコクリと頷いた秘書は、音もなくその場を離れた。



『・・・あの人に・・・キョーコちゃんを付けましたね?』



蓮の怒りがこもった声も、ローリィは右から左に流すだけだった。



「・・・随分他人行儀な言い方だな?・・・自分の父親に対して」



ローリィは蓮が沈黙するのがわかってて、あえてそう言った。

予想通りしばしの沈黙が落ちる。

その間にガウンに袖を通すと、ようやく蓮が言葉を発した。



『・・・あの子に・・・言ったんですか?』



「何をだ?」



『・・・彼が・・俺の父親だと・・・』



「言ってないぞ?・・・お前はどうなんだ?あの子には手の内をほぼ見せているようだが?」



『・・・・・俺の本名を知っています・・・でも、彼のことは教えていません・・・』



「・・・本名知っていれば気付くだろ?」



『・・・・そこらへんがキョーコちゃんの凄い所というか・・・たぶん・・しばらくは気付かないかもしれません・・・』



「・・・・・・・・・・・まあ・・・なんにせよ、俺はお前たち親子の心情など無視して純粋にラブミー部の仕事として彼女にしてもらっているだけだ・・・役者になったばかりの彼女にあいつはいい刺激になるだろうからな」



『・・・本当に・・・それだけ・・・ですか?』



「ああ、そうだ・・あいつだって今回は映画の告知でこっちに来てるんだ・・・そうそう暇じゃないさ・・・それでもお前のことは気にしているだろうからな・・・もし話がしたいなら俺から取り次いでやってもいいが?」



『・・・・いえ・・・・いいです・・・・俺はまだ・・・あの人たちに顔を合わせる事なんてできません・・・』



プツリと切れた電話に、ローリィは深いため息を付いた。



「まあ・・・連絡をしてくるだけでもいいとするか・・・・」



そんなローリィの声が聞こえていたかのように、蓮は通話を終了させた携帯を睨み付けていた。



「蓮?話し終わったのか?」



「・・・・ええ・・・キョーコちゃん、やっぱりクー・ヒズリの付き人をしているそうです」



「そっかあ~・・テレビでちらっと姿が見えた時は心臓が飛び出たけど、よく考えたらうちの事務所からハリウッドに羽ばたいていった人だし社長のお気に入りのラブミー部からキョーコちゃんが出てもおかしくもないからな」



「・・・・社長もそう言ってました・・・」



「そっかそっか・・・・まあ・・あんなカッコいいハリウッドスターの側に彼女がいるのは心配だろうけれど、キョーコちゃんは心配いらないよ・・・そんなことでフラフラする子じゃないし・・・」



「わかってます!!」



思わず大声を出したことに、社ではなく蓮の方が驚いていた。



「あっ・・・すみません・・・・」



そんな蓮を見て、社はわざと苦笑してみせた。



「いや・・・そんなに心配ならキョーコちゃんに電話、してみたら?案外もう家に帰っているかもしれないぞ?」



「・・・・・はい・・・」



しかし、社の慰めも簡単に打ち砕かれた。


明かりのついていない自分の家に足を踏み入れた途端、蓮は携帯でキョーコの番号を呼び出していた。

しかし、無慈悲なアナウンスはキョーコの携帯が通話できない状態にあることしか繰り返さなかった。


蓮は玄関にそのまま座り込むしかできなかった。





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