最近の脳研究について
ブログ『超脳力の秘法』の執筆に当たり、本年(2021年)2月頃よりあらためてここ20年間ほどの脳科学や脳神経生理学の成果に触れた文献に目を通しています。
その研究の進化に驚いている次第です。
従来の失語症などの脳障害を持つ人の症状と、脳の病変の関係から脳機能を推定する医学的なアプローチに加えて、最近は電気的な測定によって脳の活動を捉えてきた電気生理学と、脳細胞の活動を画像で観察したアプローチが、微細な神経の構造や働きを観察できる顕微鏡技術など測定機器やデータ処理技術の飛躍的な進歩で見えなかった世界が見えるようになってきたことによるものです。
それと同時に、つい30年ほど前まで定説として広く認識されていた学説の誤りも指摘され、まだ推定段階ですが脳の活動や能力に関する新しい考え方や学説も数多く提唱されています。
例えば、脳科学や学習に関する内容に関係して、きまって出てくるものに
「脳の三層構造説」(三位一体脳)というのがあります。
わたし達の脳は、爬虫類的脳(生理脳:生命の根源を動かす)の上に、新しく大脳辺縁系といわれる哺乳類脳(情動脳:感情を司る)が新設、発達し、さらに人間脳(大脳新皮質:理性を司る)が発達したという三層構造になっているという学説です、
この哺乳類脳と人間脳のコンプレックスが原因で、もの事がうまくすすまない。この二つの脳を調和すれば、素晴らしい脳力を発揮するというわけです。
1973年代にカナダのポール・マクリーン博士が提唱したものです。今でも多くの書籍やインターネット上の脳の解説にこの三層構造説を根拠にした書き込みが多く見られます。
この学説が遺伝子の研究からも間違いであることがわかってきたのです。
これら脳幹、小脳、大脳は、はるか昔に登場した魚類や両性類の脳にもあったのです。
当然、鳥類や哺乳類にも存在します。わたし達の脳は、新たに新築、増築されて今のように大きく、複雑に発達したわけではなく、必要に応じてもともと備わっていた各部分を大きさやバランスを拡張したものでした。
こうなると、この学説を根拠にした心理的葛藤やそれに対する対応、学習法なども本当に正しいのか、見直しや検証が必要になりそうです。
また、わたし達ヒトの脳には1000億を超える神経細胞(ニューロン)が存在し、それぞれが複雑に交わって膨大なネットワークを構築するといわれています。
しかし、脳の中にはニューロン以外の神経膠細胞(グリア細胞)がその三倍以上も存在しています。今までは、電気的信号をやりとりするニューロンが花形で、ニューロンに栄養をわたしたり、脳内の修復をするグリア細胞は裏方さんと考えられる地味な存在でした。
ところが最近の学説では、このグリア細胞の働きが「人間の心の有り方」、新しいものを見つけたり、発見するといった「知性」や、好き嫌いや悲しいとか面白いといった「感情」に関わる心の働きに関係しているのではないかと考えられはじめたそうなのです。
(毛内拡著『脳を司る「脳」』ブルーバックス)
筆者が学んだ「超能力の技法」のいくつかは、こういう最近の脳科学や大脳神経生理学と無縁な2000年以上前の仏教やヨガの技法を淵源とするものもありますが、一方で1980年代に色々な大学や研究機関で当時の学説を元に、脳科学や心理学をベースに開発された様々な技法も数多く含まれています。
こうなりますと、現在の科学的理論に照らし合わせて、大きな間違いがない内容か、検証する必要があるとの結論に達しました。
従いまして、「超脳力の技法」に関してのブログ記事は当面掲載を中止します。
いずれ稿を改めて、本ブログで紹介したいとの思いはありますが、時期は未定です。
「幸福の技法」は、次回から新しい視点で日々の生活に役に立つものを紹介していきたいと思います。