櫻井の実家までわずか数十メートル。
オレが一歩歩けば、櫻井に一歩近づく。
一歩、また一歩
吐く息が白い
どこからかジングルベルの歌が聞こえる。
今日はクリスマスイブ
そして、オレの20歳の誕生日。
奇跡を期待しているわけじゃない。
奇跡なんて起こらなくても構わない。
ただオレは
オレは櫻井に会いたい。
櫻井に会って確かめたい。
いや、確かめることなんて本当は何もない。
ただオレは伝えたいんだ。
櫻井が好きだって伝えたい。
「はぁ~」
冷たくなった指先に息を吹きかけ、インターホンを押そうとしたその時だった。
急に目の前の玄関ドアが開き
「えっ、」
「あっ……」
櫻井?
慌てるように出てきたその人に
「…………!!」
オレはそのまま抱き締められた。
つづく