「櫻井、まさか......」
ここに残るなんて言わないよね?
「だって、会社は?」
会社、辞めるつもりなの?
「............」
「どうして......」
どうして答えないの?
どうして「違う」って言わないの?
「どうして会社を辞める必要があるの?」
櫻井は何も悪いことしてないじゃん。
「それともあれ?
オレが怪我をしたから?」
櫻井を庇って背中を切られたから、だから責任を取るっていうの?
俯き加減の櫻井の肩がピクンと揺れた。
「オレ、言ったよね?
あれはオレが勝手にしたことだって」
誰に頼まれたわけじゃない。
オレがそうしたいから飛び出しただけ。
「だから、櫻井は何も悪くないんだよ」
そんなことで責任を感じる必要なんてない。
「でも......」
「それとも櫻井」
まさか、結子さんと結婚するつもりなの?
会社を辞めて、故郷に残って
そして、あの人と......
「それはない」
「だったらどうして......っつ!!」
ベッドから身を乗り出し、全身に力が入り過ぎたせいか、背中の傷がズキッと痛んだ。
「おい、大丈夫か!?」
「触んないで!!」
櫻井はオレを心配してくれただけなのに
その櫻井が、今いったい何を考えているのかわからなくて
オレは伸びてきた手を思い切り払い除けた。
つづく