滝沢さんの隣りにおーちゃんが座り
その隣りに僕と、僕の手を握ったままの翔くんと。少し離れて流星が。
そんな僕らと向かい合うようにカズくんと潤くんが座った。
「社長の若い頃の話しはしましたよね」
「はい……」
母さんが亡くなった後、僕を訪ねてきた滝沢さんが教えてくれた。
母さんと出会った時、父さんは既に結婚していて奥さんがいたこと。
だから母さんは、自分が妊娠したことを告げずに黙って父さんの前から消えたこと。
勿論、子供が出来たと伝えたところで、父さんにとっては迷惑でしかなかっただろうし
下手すれば「堕ろしてくれ」と言われていたかもしれない。
そういった意味では、一人で僕を生んでくれた母さんには感謝してるけど
でも、母さんはどうだったんだろう。
愛した人と結ばれることなく、呆気なく終わってしまった人生を後悔してなかったんだろうか。
「確かに、雅紀さんのお母様と出会った時
社長には既に奥様がいらっしゃいました。
でも、会う度に雅紀さんのお母様に
惹かれていった社長は……」
奥様と別れ、雅紀さんのお母様と一緒になるつもりでいたんですよ。
「え……」
父さんが母さんと?
驚く僕の隣りで、流星は俯き唇を噛み締めていた。
つづく