TKC全国会のテレビコマーシャルなどで、「経営承継サクセスプラン2008」の文字を見られたことはあるでしょうか。日本全国3,000件以上のTKC会員事務所が、同名のセミナーを10月6日から12月の半ばまで全国一斉に開催しています。これは「事業の将来性、後継者不足、相続人間の遺産分割や遺留分、相続税の問題など、日本経済を支えるべき中小企業の事業承継には様々な問題があり、その解決を図ることは、雇用の確保や地域の経済活力維持の観点からも重要である。……」(平成19年度自民党税制改正大綱)のもと、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)の平成20年10月1日の施行を踏まえて、経営者及び後継者の皆さんに法律の周知徹底を計るとともに、せっかくの新法の早期の有効利用の為に企画しています。
当事務所も皆さんに既に通知した通り、11月6日大同生命ビル10階で開催しました。会場の雰囲気は別添のペーパーで感じて頂くとして、「円滑化法」の概略だけをお知らせします。同法は次の三つの柱から成っています。
1.民法の遺留分に関する特例
2.金融支援
3.相続税の課税の特例
1の遺留分に関する特例は、「贈与株式などを遺留分算定基礎財産から除外出来る。」ようになりました。遺留分とは民法が相続人に保証している2分の1の割合をいいます。現在の民法は「法定相続分による法定相続を原則」としています。簡単に言うと兄弟は皆平等、自社株や事業用不動産など事業を継ぐ人には、なくては成らぬ財産でも、2分の1以上相続しようとすると、他の兄弟姉妹から必ずクレームが出て相続ならぬ争族になるのが現状です。そこで、今回は法的(民法)に後継者に贈与した株式などを遺留分算定基礎財産から除外出来るようになりました。もう一つ「贈与した株式の評価額を固定化出来る。」がありますが、此処では説明を省略します。施行は21年3月の予定です。
2の金融支援は、①法人による自社株式などの取得資金融資制度、②後継者個人による経営安定化のための融資制度、③M&A支援に関する融資制度の三つがあります。いずれも日本政策金融公庫が7億2千万円を15年以内で貸し出します。目玉は②の後継者個人に対する貸付が可能になった事でしょうか。例えば長男(後継者)が次男、長女などから、自社株や事業用資産の買取資金を借りられるようになりました。この金融支援は他の法律に先駆けてすでに20年10月1日から施行されています。
3の相続税の課税の特例は「相続によって取得した株式の課税価格の80%に対応する部分の相続税が納税猶予される。」ことになりました。猶予であって免除ではありませんのでご注意下さい。ただし、5年間は継続して地域経済産業局に報告書を提出し、①代表者で有り続けること、②雇用の8割以上を維持すること、③相続した対象株式を継続して保有することを義務づけられます。
それと、相続税の計算の仕方が大きく変わります。現行の「法定相続分課税方式」から「遺産取得課税方式」になります。現行法は、取り敢えず法定相続分で相続したと仮定して、まず相続税の総額を計算し、その後各人の実際の相続分で按分しました。誰がどう相続しても、全体の相続税の金額にはあまり変わりがありませんでしたが、例えば誰かが相続した不動産の評価額が税務調査後変わった時、その不動産を相続していない人の相続税まで変わってしまい、追徴課税を受けると言うようなこともありました。
これに対し、遺産取得課税方式は一人一人の相続分から、一人一人の基礎控除を引き税率を掛けて算出します。法定相続分課税方式では全体の相続財産が分からないと、申告そのものが出来ません。そのため兄弟喧嘩でもしているとみすみす無申告になる恐れもありました。遺産取得課税方式では自分だけで申告できるのでそういう問題は無くなりそうです。相続税の改正は21年度税制改正で20年10月1日に遡って適用されます。
以上、駆け足で「事業承継円滑化法」の概略を述べましたが、これら三つの法律の適用を受ける為にはすべて事前に、経済産業大臣(地域経済産業局)に「申請書」を提出し「確認」をとっておく必要があります。その上で「申請」もしくは「申告」をする事になりますので、関心のある方は早めに事務所にお問い合わせ下さい。