小説です。「百輪村物語」の番外編です。

             ↑

番外編は(番:通し番号〇)にします。

 

 

小説と漫画をまとめた目次はこちら→ 百輪村物語 目次

 

 

登場人物名は、アルファベット表記です。

(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)

 

 
【今回の登場人物たち】
R(EとKの息子)    陸 ライアン(ジュニア)
E(村長&小学校教諭)  栄一  エデン
K(理容師・Eの妻)   加恵  カーラ
 
◎(Rの同級生)     介人   カイト
$(Rの同級生)     透    トール
#(Rの同級生)     翔太   シュート 
◆(Rの同級生)     大司   ダイン

 

 

 

前話「見えない比較」の続きの話です。

 

 

 

 

では、どうぞ。↓

 

見えない放課後(3)

 

 

その日の夕食後。

 

リビングで、Rと父親のEが紅茶を手にします。

 

お茶を運んできた母親のKもお盆を脇に置いて、

一緒にソファーに座りました。

 

Rは両親に相談しました。

 

「この間、うちに謝りに来た◎なんだけど、

 友だちになりたいってすごくしつこいんだ。

 

 無理矢理、マンガを貸そうとするし。

 

 今日、しかたなく一緒にゲーセンに行ったら、

 お金を小学生から取ってるし、

 後で来た高校生に父さんの昔のあだ名を出して

 まるで僕を仲間みたいに言い放つし。

 

 ・・・どうしたらいい?」

 

Eは紅茶を一口飲んで、カップをテーブルに置きました。

 

「R。その◎って子に、何か言ったかい?」

 

「”父さんをダシにしないで。

 君は僕の友だちじゃない”、って言った」

 

「うん。そうしたら?」

 

「”お前はそう思っててもいいけど、

 オレはお前を友達だと思ってる”、って言われた」

 

「そうか。すごいぞ、R。ちゃんと距離が出来てる」

 

Rは父Eの言葉に驚きました。

 

「え?距離?すごくそばに来るよ?」

 

「嫌なことを嫌だ、と言ってる。

 それで十分、距離が出来てる。

 巻き込まれまい、と線を引いている。それでいい」

 

「でも、でも、それだけじゃだめでしょう?

 なんか、逃げる方法とか、戦う方法とか、・・・無い?」

 

「だめだ。それは、距離の縮まるやり方だ」

 

「えー?」

 

「Rの今のスタンス、すごくいいと思う。

 今後、何か言われても、その距離を忘れるな」

 

「わけわかんないよ」

 

「大丈夫。Rのやり方でいいんだ。

 父さんはいつでもおまえの味方だからな」

 

「私もよ、R」と母のKも微笑みます。

 

「・・・うん・・・」

 

Rは(距離って何?)と首を傾げつつも、

ティーカップのぬくもりを両手で感じました。

 

 

翌日。

学校の休み時間に、◎がRの席にやってきました。

 

「よう。ジュニア。今度はちがうやつ」

◎はマンガの入った袋を机に投げ置きました。

 

Rは◎の方を見上げて、言いました。

「読まない。持って帰って」

 

「なんでだよ。好意を無にするのかよ」

 

Rは心の中で、

(距離を取るんだ)と何度も自分に言い聞かせました。

Rの口は自然と閉じ、ただ◎の顔を見るだけです。

 

「・・・」

 

「マンガじゃなくて、菓子がいいか?ガム食う?」

 

「・・・」

 

「なんか言えよ」

 

「・・・」

 

「・・・ッ!・・・お高く留まりやがって!」

 

◎は机の紙袋を乱暴につかむと、Rの机の脚を強く蹴り、

自分の席に戻っていきました。

 

教室内が少しざわつきます。

 

Rはすっと席を離れて、廊下の階段脇に行きました。

 

 

(なんなんだよ、◎・・・。もうやだ・・・)

 

(距離、距離を取りたい・・・。父さん、助けて・・・)

 

怖さで自然とあふれる涙をそっと指で拭きながら、

乱れた呼吸を整え続けました。

 

次の授業の鐘が鳴ったので、Rは再び教室に戻りました。

 

 

 

(続く)