小説です。「百輪村物語」の第三部です。

 

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登場人物名は、アルファベット表記です。

(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)

 

 
【今回の登場人物たち】
Z(靴屋)       九頭雄 ザックス
Y(Zの妻)       八千代 ヤスミン
A(ZとYの息子)    悪久太  アーク

C(村の守護霊)   千太郎  クリス
老人・師匠(守護霊・Cの先生)

 

 

今回のお話は、Z目線の話です。

 

第49章と第50章の後日談ですが、

読み直さなくても、たぶん大丈夫だと思います。

 

一応、貼っておきますね↓

 

 

 

 

 

 

 

では、どうぞ。↓

 

見えない殻(5)

 

 

「どんな、って・・・

 良い人間になろうと努力してきただけだ。

 それなのに、心が真っ暗だなんて言われて、

 納得できるか」

 

「・・・”良い人間になろう”とした?

 では、その動機が暗かったんじゃないですか?」

 

「動機?」

 

「”なぜ”良い人間になろうとしたのか、ってことです」

 

オレには理解できなかった。

どうして、”なぜ”を問う?

 

「良い人間を目指すのは、人として当たり前だろうが!」

 

「ふうん。あなたにとって、”当たり前”って何ですか?
 ”良い人間”って何ですか?」
 
イライラする。生意気な奴め。
もはや腕づくでしゃべらせるしかない。
 
拳が、息をするように前に出た。
が、オレの右手は、むなしく目の前の男を貫通する。
 
「・・・いいかげんにしろよ、若造が。
 つまらねえ御託はいらねえんだよ。
 殻を破る方法をとっとと吐け!」
 
何度も殴りかかるが、拳は一つも当たらない。
幽霊同士のせいか、すり抜けてしまうようだった。
 

「ふふふっ。

 暴力でのコミュニケーションは不毛ですよ。

 それに、さっきから親切に教えてるじゃないですか。

 あなたの思い込みも、その殻を破る方法も」

 

「どこが思い込みだ?!

 きれいごとをぬかしやがって!!」

 

「”良い人間になろうとした”。

 それが”きれいごと”だったんでしょ、あなたにとって」

 

「何?!」

 

「・・・残念ですが、時間切れのようですね。

 ゆっくりとカプセルで考えてください。さようなら」

 

「おい、待て、待て!・・・まだ話は・・・」

オレの体は小さなブラックホールに吸い込まれていった。

 

 

最後に遠くで小さく声がした。

 

「師匠、難しかったです。あの人、殻が硬すぎて」

 

「C、おぬしもよくやったよ。

 人の殻は割れんが、気づきの種は植えられる。

 それで十分じゃ。ふぉふぉ・・・」

 

 

 

 

 

 

ending music
 
Let me battle - 9Lnana