鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2026年2月8日号)

*講演DVD発売

 昨年12月13日に世日クラブで行った講演のDVDが発売された。「戦後80年 東アジア情勢波高し:高市政権の国防政策を問う」という演題の110分の録画である。

https://senichi-club.net/dvd_library

 この講演では、中国の対日レアアース禁輸や中国の空母開発、習近平政権の内幕などを解説しているが、特に強調しているのは2023年台湾侵攻作戦の失敗である。

 

 2023年7月6日に中国の習近平主席は台湾侵攻を決断した。ところが、この情報がただちに米国に漏洩したため、習近平政権内部に米国のスパイがいることが明白になり、習近平は作戦を中止せざるを得なくなったのである。

 最初にスパイと疑われたのは秦剛外相で同年7月25日に外相を解任された。次いで8月1日に李玉超戦略ミサイル軍司令官が解任され、10月24日に李尚福国防相が解任され、翌2024年6月には魏鳳和元国防相が粛清され、2025年10月には何衛東中央軍事委員会副主席、苗華中央軍事委員、林向陽東部戦区司令官が粛清された。

 今年に入って1月24日に張又侠中央軍事委員会副主席、劉振立軍統合参謀長が重大な規律違反で調査を受けているのは周知の事実だろう。つまり中国軍は米国とは戦争をしたくない良識的な将軍たちで占められていたのである。

 詳細はDVDを視聴されたい。

 

 軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹(かじとしき)

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鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2026年2月4日号)

*米国の防衛戦略

 1月23日にトランプ政権はNDS(米国防衛戦略)を公表した。「西半球重視」とか「同盟国にGDP5%の防衛費を要求」などと概要が紹介されているが、この戦略の本質をわきまえていないとしか言いようがない。

 この戦略で驚愕すべきは、第1列島線に強固な防衛態勢を構築するという対中戦略である。第1列島線とは、もともと中国軍が設定した、中国を防衛するための防衛ラインであり、フィリピンの西側、台湾の東側を通り日本に連なる。

 つまり中国が台湾を自国領と考えて設定しているラインなのである。その線を米国が採用しているのだから、米国は台湾を守らないと宣言している様なものである。現にこの戦略には台湾に対する直接的な言及がない。

 

 さらに興味深いのは朝鮮半島について、米国が韓国への支援を限定しても韓国は北朝鮮を抑止できるとして、在韓米軍の削減を示唆している点だ。つまり米国は韓国も守らないことになろう。

 1950年1月、米国の当時の国務長官アチソンは、東アジアにおける米国の防衛ラインを発表した。いわゆるアチソン・ラインであるが、のちに中国が設定した第1列島線に近似しており、違いは日本と韓国を隔てる対馬海峡を通っている点である。

 当時のトルーマン政権は、台湾も韓国も守らないと宣言した訳であり、中国の毛沢東は、これを受けて台湾侵攻の準備を命じ、北朝鮮は、同年6月、韓国に侵攻した。結局、米国はアチソン・ラインを撤回し、韓国も台湾も防衛する羽目に陥った。

 

 アチソン・ラインは米国外交史上、大失敗とも言えるのだが、驚くべきことにトランプ政権は、76年ぶりに、このラインを復活させたのである。

 トルーマン時代、日本も韓国も経済的にも政治的にも軍事的にも破綻状態にあった。従ってアチソン・ラインは絵に描いた餅に終わった。

 しかし、現在では日本も韓国も政治的にも経済的にも軍事的にも大国だ。トランプは、韓国は韓国自身が守るべきだし、台湾は日本が守るべきだと考えているのであろう。

 

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鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2026年1月23日号)

*グリーンランドの運命

 6日、ホワイトハウスのレビット報道官が米国のグリーンランド領有を巡って「米軍の活用も選択肢の一つ」との声明を出した。彼女は保守強硬派として保守論壇で人気の美人報道官だが、さすがにこの声明は、保守派を含めて全世界を驚愕させた。

 なにしろ米軍がベネズエラに侵攻して3日後に、米軍がグリーンランドにも侵攻する可能性を示唆したのも同然なのだ。グリーンランドはデンマーク領であり、デンマークはNATO加盟国であり、NATOは米国を中心とした集団防衛組織である。

 

 NATO加盟国がNATO加盟国に侵攻したら、NATOは空中分解だ。従来なら米国がそんな馬鹿なことをする訳はないと一笑に付される所だが、トランプは、9日に「米国が行動しなければグリーンランドが中露に占領されてしまう。」と述べ侵攻の可能性を否定しなかった。

 新年早々にNATOは解体の危機を迎えた訳で、12日にNATO事務総長ルッテは、NATOの加盟国は「北極圏の安全保障が重要との認識で一致している。」とトランプの危機感に寄り添う姿勢を見せた。

 

 つまり「グリーンランド防衛の重要性をNATO加盟国は認識していますよ。米国だけでなくNATO全体でグリーンランドを防衛する体制を整えますから、米国が領有する必要はありませんよ。」とのトランプへのメッセージである。

 そして同時に公表された北極圏防衛作戦は、英仏独が中心となって展開する見通しである。これが、トランプの最初からの狙いだったのだろう。21日、トランプはダボス会議でルッテと会談し、米軍侵攻の可能性をようやく否定した。

 

 どういう事かと言うと、グリーンランドを防衛するためにグリーンランドを米国が領有するとなると米軍の負担が莫大なものになる。そこでグリーンランド防衛の負担を英仏独に負わせたいのである。

 要するにトランプは初めからグリーンランドに侵攻する気などなかった。グリーンランド防衛のために全く動こうとしないNATOを動かすために一芝居打ったのである。

 

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