鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2024年7月22日号)

*バイデン撤退後の米国

 バイデン大統領が11月の米大統領選への出馬を取りやめた。現職の大統領が次期大統領選への出馬を取りやめるのは1968年のジョンソン大統領以来、56年ぶりの異例の事態である。

 当時のジョンソン政権もバイデン同様、民主党政権だったが、類似点はそればかりでない。60年代、ベトナム戦争は民主党のケネディ政権で始まり、続くジョンソン政権で拡大し、泥沼に陥った。

 米国内では反戦運動の嵐が吹き荒れ、本来、民主党支持である筈のマスコミや学生たちがジョンソンに批判の矢を浴びせかけたから、ジョンソン再選は危ぶまれていた。そこでジョンソンは健康上の理由で出馬を取りやめたのである。

 

 これは、アフガニスタン撤退で躓(つまづ)き、ウクライナとパレスチナで泥沼に陥り、学生たちの批判を浴び、認知症が疑われるバイデン現大統領の状態と、完全に重なる。ならば今後の推移も当時の推移と似るのではないか?

 1968年の大統領選に勝利した共和党のニクソンは、米軍をベトナムから撤退させることに成功し一時的に東南アジアに平和をもたらしたが、政治スキャンダルで失脚し、東南アジアは再び紛争の巷(ちまた)となった。

 

 共和党のトランプは、ウクライナとパレスチナの戦争を終わらせると公約しており、ゼレンスキーやネタニヤフもトランプの停戦交渉に期待を示し始めた。米国の政権が交代することにより停戦交渉が進展する例はしばしばあり、トランプは停戦を実現できるかもしれない。

 しかしニクソン同様、政治的スキャンダルで失脚する可能性も否定できず、その場合、世界は再び戦争の危機に連れ戻されるかもしれない。

 

 軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹(かじとしき)

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