人口、寿命、出生率の国際比較 | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 このブログでは、これまでさまざまな指標で日本と世界各国の比較を行ってきました。

 今回は人口関連の諸指標で比べてみたいと思います。

 言い換えれば、人口関連の諸指標で世界を捉えようという試みです。

 取り上げるのは、人口、平均寿命、合計特殊出生率の3つです。

 

 人口は、世界におけるその国の重要性をある面から表すものと考えられます。

 平均寿命は、その国の生活の豊かさ(客観的幸福度)を一面から表すものです。

 合計特殊出生率は、極端に高ければ現在あるいは将来における諸問題・混乱を招き、極端に低ければその国の長期的存続可能性に関わるものと考えられます。

 

 具体的な内容に入る前に、平均寿命と合計特殊出生率について技術的解説をしておきます。

 ある国で、ある年齢の人が今後平均的に何歳生きのびるかを表す数値を、その年齢の平均余命といいます。

 平均寿命は、零歳における平均余命です。

 零歳児はその年に生まれた赤ちゃんですから、平均寿命はその年に生まれた子どもが平均的に何歳まで生き延びるかを示すものです。

 

 合計特殊出生率の方はより分かりづらいです。

 まず日本語の出生率(読みは「しゅっせいりつ」あるいは「しゅっしょうりつ」、どちらでも良い)は、普通出生率と合計特殊出生率のどちらの略語にもなっていますが、両者は全く異なる概念であり、関連はしているものの数字の大きさや見方も異なります。

 

 普通出生率は英語では “birth rate” といい、1年間の出生数をその年の人口で割ったもので、通常は人口千人当たりの数値です。(「人口千人対」と書く)

 これと対になるのが死亡率で、両者の差が自然増減率となります。

   (普通)出生率 -死亡率 = 自然増減率

      6.0 - 13.0 = △7.0   ・・・ 2023年

 日本の場合は、2007年以降毎年、死亡率が出生率を上回る人口減少が続いており、近年人口減少が加速しています。

 昨年2023年には、死亡数が出生数の2倍を上回っています。

 

 もう一方の合計特殊出生率は、英語では “total fertility” といいます。

 まず特殊出生率とは、女性人口を年齢別(通常は5歳階級別)に区分して、その年齢の人口でその年1年間に彼女たちが生んだ子どもの数を割った数値です。

 合計特殊出生率とは、その年の特殊出生率の全年齢に関する合計です。

 つまり、その年の生み方で女性が一生の間に生む子どもの数です。

 母の年齢5歳階級別といっても、統計表をみると一番上と一番下は「19歳以下」と「45歳以上」となっていて、ひとまとめです。

 一組の夫婦、結婚していない場合もあるので一組の男女が2人の子どもをつくれば、親の世代と子の世代が同数になるはずです。

 ですから、合計特殊出生率 2.0 が長期的に人口を維持する水準になります。

 (厳密にいうと、女性が誕生してから出産可能になるまでに死亡することも勘定に入れなければいけないのですが、その点は先進国ではほぼ無視できます。)

 2023年の日本の合計特殊出生率は 1.20 であり、2015年の 1.45 から毎年低下が続いています。まさに危機的状況です。

 ある年の普通出生率は、出産可能年齢にある女性人口と合計特殊出生率に依存します。

 合計特殊出生率は、長期的な人口動態を決定するものと考えればよいでしょう。

 

 今回合計特殊出生率を取り上げたのは、人口増加率と普通出生率のデータが資料出所のグローバル・ノートでは有料だったこともあります(^^;

 

 次にどの国を取り上げるかです。

 世界には200強の国と地域があるわけですが、次の基準で選びました。

 (後ろの括弧内は地域(Am米州、APアジア大洋州、Afアフリカ、E欧州)と人口(単位百万人)。世銀統計2023年)

 1.人口2000万人以上の欧米系の先進国 ― 計8か国

  米(Am)、独(E)、英(E)、仏(E)、伊(E)、西(E)、加(Am)、豪(AP)

 うち、G7に属するのは米、独、英、仏、伊、加の6か国です。(漢字一文字で表記)

 2.アジアの先進国・地域    ― 計5か国・地域(すべてAP)

  韓国、台湾、イスラエル、香港、シンガポール

 中東などの産油国も所得水準だけでいえばアジアの先進国ですが、たまたま足元に石油が埋まっていたという理由で豊かになった国を先進国扱いするのは私にとって違和感があったため、比較対象から除いています。

 3.東アジアの近隣諸国    ― 計5か国・地域(すべてAP)

  中国、韓国(再掲)、北朝鮮、台湾(再掲)、香港(再掲)

 4.人口大国として、日本より人口の多い11 か国

  インド(AP)、中国(AP,再掲)、アメリカ(Am,再掲)、

  インドネシア(AP)、パキスタン(AP)、ナイジェリア(Af)、ブラジル(Am)、

  バングラデシュ(AP)、ロシア(E)、メキシコ(Am)、エチオピア(Af)

 5.新興発展途上国として、BRICS5か国

  ブラジル(再掲)、ロシア(再掲)、インド(再掲)、中国(再掲)、南アフリカ

 

 日本を含め重複を除いて、合計26か国・地域を対象とします。

 「生活水準の国際比較(2024/7/22)」との違いは、南アフリカを加えたことです。

 この国はそれなりに興味深い点があるものの当面世界地理シリーズで取り上げる予定がないので、この際BRICSの一角として含めることにしました。

 

 データはすべてグローバル・ノートからの再引用です。

 ただし、台湾のデータはグローバル・ノートが追加したものです。

 数値と順位を示します。順位はグローバル・ノートが付けたものです。

 掲載順は、それぞれの順位によります。

 

 

  a.総人口(2023年、世銀統計)

 総人口とは、国籍にかかわらずその国に居住している人口で、一時的難民を含まない。

 単位は百万人で10万人の位で四捨五入した。ただ、1千万人未満の国は有効数字を二桁確保するために、10万人の位まで表示した。

 

  順位  国名  人口(単位:百万人)

   1位 インド    1,429

   2位 中国     1,411 

   3位 米       335

   4位 インドネシア  278

   5位 パキスタン   240

   6位 ナイジェリア  224

   7位 ブラジル    216

   8位 バングラデシュ 173

   9位 ロシア     144

  10位 メキシコ    128

  11位 エチオピア   127

  12位 日       125 

  19位 独        84

  21位 英        68

  22位 仏        68

  24位 南アフリカ    60

  25位 伊        59

  29位 韓国       52

  31位 西        48

  37位 加        40

  55位 豪        27

  56位 北朝鮮      26

  57位 台湾       23 

  95位 イスラエル     9.8

 104位 香港       7.5

 115位 シンガポール   5.9 

    世界計     8,025

 

 ・桁が変わるところに区分線を入れました。

 ・人口が14億人を超えるインドと中国の2国が圧倒的に大きく、3位の米国はその1/4未満です。

 ・地域別には、南アジアあるいはインド亜大陸に属すインド、パキスタン、バングラデシュの3か国が10位以内に入っています。

 ・わが日本は以前は11位でしたが、最近エチオピアと逆転して12位に落ちました。

 ・人口1億人以上の国は他にフィリピン、エジプト、コンゴ民主共和国があり、計15か国です。

 コンゴ民主共和国って一人当たりGDPが1千ドルに達しない最貧国なので、さすがにそこまで視野に入れる必要はないと判断しました。将来的な世界の不安定要素ではありますが。

 ・西欧諸国は、独84~西48まで人口に極端な差はありません。まあ小国は除いていますが。

 比較すると、東アジアでは中国の人口が圧倒的に大きく、また韓国は日本の半分未満など差が大きいので、国際協調という面でまとまりにくいと思います。

 

 

 ここで、平均寿命を取り上げる意義に触れておきます。

 生活の質というと、経済水準にばかり目を奪われがちですが、健康状態も重要です。

 いくらお金があっても早死にしては意味がないでしょう。

 そして、一国の健康状態を集約したものが平均寿命と考えられます。

 常識的には経済水準と「一致」(強く相関)しそうなものですが、必ずしもそうなっていないこと、またその理由が興味深いです。

 

  b.平均寿命(2022年、男女計、世銀統計)

  順位  国名 平均寿命(単位:歳)

  3位 日        84.00

  4位 香港       83.66

  8位 豪        83.20

  10位 西       83.08

  13位 伊       82.90

  14位 シンガポール  82.90

  17位 イスラエル   82.70

  19位 韓国      82.68

  21位 仏       82.23

  23位 英       82.06

  33位 加       81.30

  38位 台湾      80.86

  41位 独       80.71 

  54位 中国      78.59

  64位 米       77.43 

  85位 メキシコ    74.83

 104位 バングラデシュ 73.70

 106位 北朝鮮     73.58

 110位 ブラジル    73.43

 117位 ロシア     72.55

   世界計       72.00 

 153位 インドネシア  68.25

 155位 インド     67.74

 161位 パキスタン   66.43

 166位 エチオピア   65.65 

 190位 南アフリカ   61.48 

 209位 ナイジェリア  53.63

 

 ・分かりやすいよう、5歳刻みで区分しました。

 ・日本はここに掲載した主要国の中では最上位です。

 日本は、経済水準(1人当たりGDP)をみると昨今の円安もあってG7 の最下位ですが(もともとあまり高くなかった)、健康面では最先進国として誇ってよいでしょう。

 ・ちなみに、1位はマカオ、2位はリヒテンシュタインで、前者は人口70万人、後者は4万人なので、どちらも無視してかまわないと思います。

 ・ほとんどの先進国は80歳以上となっており、健康面では80歳以上を先進国として良いでしょう。

 ・ところが、米国は77歳台であり、先進国水準にかすりもしません。

 それどころか、中国よりも低いです。

 米国は、健康面ではとうてい先進国とは言えないのです。

 その理由は、先進国では不可欠の公的医療保険(日本の健康保険)が存在しないからです。

 ・平均寿命は、戦争や治安の極端な悪化、コロナ禍のような死亡率の高い感染症流行などがなければ通常は毎年少しずつ伸びていくものです。

 しかし、米国では2014年の78.84歳がピークであり、コロナ禍以前から頭打ちとなっていました。

 ・低い方に注目すると、ナイジェリアが54歳台、南アフリカが61歳台、エチオピアが65歳台と下から3位までがアフリカの国となっています。

 これは、アフリカにおけるエイズの蔓延が原因です。またこの時期はコロナ禍の影響もあると思います。

 南アフリカはBRICS5か国に含まれているものの、他の4か国よりずっと低く、またエチオピアより4歳も低いことが衝撃的です。

 

 

  c.合計特殊出生率(2022年、世銀統計)

 順位  国名   合計特殊出生率

  8位 ナイジェリア   5.14

  28位 エチオピア   4.06

  48位 パキスタン   3.41 

  60位 イスラエル   2.89

  86位 南アフリカ   2.34

   世界計        2.26

  97位 インドネシア  2.15

 105位 インド     2.01 

 112位 バングラデシュ 1.95

 120位 メキシコ    1.80

 124位 仏       1.79

 125位 北朝鮮     1.79

 138位 米       1.67

 142位 豪       1.63

 144位 ブラジル    1.63

 154位 英       1.57

 172位 独       1.46

 177位 ロシア     1.42

 188位 加       1.33

 199位 日       1.26

 200位 伊       1.24

 202位 中国      1.18

 203位 西       1.16

 206位 シンガポール  1.04 

 209位 台湾      0.87

 211位 韓国      0.78

 212位 香港      0.70

 

 ・3.00、2.00、1.00 のところに区分線を入れています。

 ・1位はニジェールの 6.75 です。

 1位~14位まではアフリカの国が続きます。

 ・逆に、東アジア系の香港、韓国、台湾、シンガポール、中国、日本はいずれも低いです。

 (シンガポールは地理的には東南アジアですが、中国系なので東アジア系とみなしました。)

 合計特殊出生率低下の傾向は、日本が先行しましたが、他の東アジア系の国々も北朝鮮を除いて同じ傾向であることが分かります。

 ・合計特殊出生率と平均寿命を合わせてみると、両者はおおむね逆相関の関係にあります。

 つまり平均寿命が長ければ合計特殊出生率が低く(日本や韓国)、平均寿命が短ければ合計特殊出生率が高い(ナイジェリア)という関係が見られます。

 早死にの国は子沢山というわけです。

 (26か国だけ取り上げているので、200以上ある国々全体で成り立つかどうかは不明。)

 ・ただし、平均寿命80歳以上の「先進国」だけ取り上げると、逆相関は成り立ちません。

 ・「先進国」なのに合計特殊出生率が 2.89 と異常に高いのが、イスラエルです。

 これは、ユダヤ教の宗教的理由によると考えられます。

 ・欧米先進国のなかでは、フランスが合計特殊出生率 1.79 と比較的好成績です。

 一方、スペインとイタリアは東アジア系諸国並みの低さであり、同じラテン系の国でなぜこれほど異なるのかは不明です。

 ・一つの国のなかでも、人種・民族・宗教などの違いにより集団ごとの合計特殊出生率が異なる場合があります。

 これは、合計特殊出生率低下の動きを緩和しますが、長い目で見ると国内の政治バランスを崩して政治的緊張をもたらすかもしれません。

 

 

 ★ 今度は南海トラフ地震の心配です。天災大国日本に住んでいることをつくづく実感させられます。

 

 ★★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス215

   ni’o «lu ba’e jaa jibni rivbi 

  [新段落] 「いまのはまさに危機一髪だったわ」

 ba’e : 強調。次に来る語を強調する。BAhE類

 ja’a : 命題肯定。主にselbriの前に付いて命題全体を肯定する

 jibni : 近い/近似している,x1は x2に x3(性質)に関して。-jbi- [空間・相対位置]

 rivbi : 避ける/回避する/逃れる,x1は x2(事)を x3(事)によって。-riv- [動作・自己移動・活動的]

 

 引用されているアリスの発言は短いのですが、sei から最後の { cu cusku } まで「メタ言語命題」の長い挿入が入っています(次回掲載)。

 アリスの発言はtanru { jibni rivbi } 「近くで避ける」です。

 出典は、

 lo selfri be la .alis. bei bu'u la selmacygu'e (lojban.org)