水の話1 | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 目次

  0.水という物質

  1.水分子の構造

  2.水の三態

  3.水の相図

  4.水の水素結合とその効果

 

 

  0.水という物質

 

 今回は、われわれの最も身近にあり馴染みの深い「水」という物質について、自然科学的見地からその性質と重要性を見ていきたいと思います。

 水を入口にして、物理、地球科学、生物学などにも視野を広げていこうという試みです。

 参考にしたのは主にwikiです。

 

 水は、室温で液体です。

 (室温や常温という用語は、分野ごとに異なる温度(幅)を意味するので、具体的な数値で温度を指定する方が望ましいです。ただ、室温が氷点下を意味することは絶対にないでしょう。)

 また、無味無臭、無色透明とされます。

 ただ、厳密には可視光では赤色光をわずかに吸収するので、分厚い水の層あるいは巨大な氷は青っぽく見えます。

 

 標準大気圧下で、体積 1 m3 の水の質量はほぼ 1 000 kg (=1 t ) です。

 1 立米(りゅうべい)とか 1 トンとか言われても、大きすぎてピンと来ないよという方には、

体積 1 cm3 の水の質量はほぼ 1 g と言い換えましょう。

 (今回の記事は、水という物質に関してざっくりした理解を得ることを目的とするので、細かい数字は載せません。この後出てくる数字も同様です。)

 

 融点、沸点、またさまざまな物質を溶かすという性質については、後で説明します。

 

 

  1.水分子の構造

 

 次は、水をミクロ的に分析することにします。

 物質を、その性質を変えずに細かく分けていくとき、一番小さな単位は分子(molecule)です。

 気の利いた小学生でも知っていそうなのは、「水の分子は H2O である」ということです。

 つまり、水の分子1個は酸素原子1個と水素原子2個から構成されています。

 水素も酸素も同位体が複数ありますが、水素は原子量1、酸素は原子量16のものがほとんどなので、水の分子量はほぼ 16+1×2=18 となります。

 ちなみに、福島原発の処理水で問題となっているトリチウムは、水素の放射性同位体で原子量3です。

 (トリチウムは、人体や水を含め自然界に多数存在するものであり、恐れる必要はないというのが私の判断です。)

 

 原子どうしの結合にはいくつか種類がありますが、重要なのは共有結合、イオン結合、金属結合です。

 水分子の場合は、原子どうしが共有結合で結びついています。

 酸素原子は8個の電子をもちますが、うち共有結合に参加できるのは2個の不対(ふつい)電子です。

 一方、水素原子は1個の不対電子をもちます。

 そのため、酸素原子と水素原子はそれぞれ1個の不対電子を出し合って、共有することにより安定的に結びついています。これが共有結合です。

         ..          ..

    H ・ + .  O  . + ・ H  → H : O : H

         ‘’           ‘’

 (子ども向けであれば、酸素原子は手が2本、水素原子は手が1本あるので、握手すると・・・というのが分かりやすいですかね)

 (上の図では、酸素原子のもつ電子のうちK殻(1s軌道)の2個は表示していません。)

 

 水の分子 H2O はどのくらいの大きさ、どんな形をしているのでしょうか。

 水の分子においては、酸素原子Oと水素原子Hの間の距離は、96 pm です。

 「pm」は「ピコメートル」と読み、1 m の1兆分の1(10-12倍)の長さを意味します。

 したがって、大ざっぱにいえばOとHの距離は 1 m の百億分の1(10-10倍)程度です。

 次に、酸素原子と2つの水素原子の作る角度は、約 104° です。

  つまり、水分子は一直線ではなく曲がっているのです。

 (これに対して、たとえば二酸化炭素分子 CO2 は O=C=O という一直線の形です。)

 

 水素原子と酸素原子の共有結合(O-H 結合)では、酸素原子の方が電子をより引き付けるので、酸素原子側が電気的に負、水素原子側が正となります。

 このような組合せを電気双極子といいます。

 電気双極子は、磁石の電気版のようなものと考えればよいでしょう。(私の理解なので間違っていたらご指摘ください)

 水分子全体も、分子が曲がっているために、極性(部分ごとに正負の電荷をもつこと)をもちます。

 

 

  2.水の三態

 

 水は、1気圧では 0℃ で凍って固体の氷となり、100℃ で沸騰して気体の水蒸気となります。

 すなわち、水の融点は 0℃、沸点は 100℃ です。

 水の特徴の一つとして、液体である温度範囲が 0℃~100℃ と広いことが挙げられます。

 (その理由は後で説明します。)

 なお、水蒸気は気体であり、目に見えません。

 やかんの水を沸騰させて出てくる湯気は、水蒸気が液体の水に戻り、細かい水滴として空気中に浮かんでいるものです。

 空に浮かぶ雲も、同様に細かい水滴が浮かんでいるものです。

 

 融点と沸点について、丁寧に見ていきましょう。

 物質の状態として、通常は固体、液体、気体の3つが挙げられます。

 さらに、4つ目としてプラズマを加える場合もありますが、今回はプラズマは扱いません。

 (プラズマは、別の状態として立てないのであれば、気体の一種として扱われます。)

 固体、液体、気体を物質の三態と呼びます。

 

 純物質の状態は、温度と圧力により決まります。

 特定の気体物質について、圧力一定の下で温度を低下させていくと、ある決まった温度で液化して液体となります。

 この温度が沸点(boiling point)です。

 その液体について、さらに温度を低下させていくと、ある決まった温度で凝固して固体となります。

 この温度が凝固点(freezing point)です。

 逆に、特定の固体物質について、温度を上昇させていくと、ある決まった温度で融解して液体となります。

 この温度が融点(melting point)です。

 ヒステリシス(履歴効果)がない場合には、凝固点と融点は一致し、通常は融点と呼びます。

 液体について温度を上昇させていくとある決まった温度で気体となります。

 この温度も沸点です。

 

 沸騰について説明しましたが、液体が気体になるのは沸騰時だけではありません。

 沸点未満であっても、液体はその表面からわずかずつ気体になっており、これを蒸発(evaporation)といいます。

 干した洗濯物が乾いたり雨降りでできた水溜りが晴れて干上がったりするのは、蒸発によります。

 

 ただし、温度が沸点を超えても沸騰しない過熱(superheating)や、融点より下がっても凝固しない過冷却(supercooling, undercooling)という例外的な場合がありますが、これらは真に安定的ではなく大きな刺激があると沸騰・凝固します(準安定状態)。

 

 相転移は、常に 固体 ⇋ 液体 ⇋ 気体 という順序で起こるわけではありません。

 固体が液体を経ずに気体になる現象を昇華(しょうか、sublimation)といいます。

 逆に、気体が液体を経ずに固体になる現象を凝華(ぎょうか、deposition)といいます。

 (凝華は、以前はやはり昇華と呼ばれていたのですが、正反対の現象に同じ用語を用いるのは不都合があることから日本化学会の提言により近年「凝華」を用いるようになったとのこと。)

 

 液体・固体が気体に変化する現象には、沸騰、蒸発、昇華の3種類があり、それらを合わせて気化(vaporization)といいます。

 

 ある物質(系)が温度と圧力の違いにより固体、液体、気体という三態をとるという点を強調する場合には、固相液相気相という用語を用います。

 ある相から別の相へ変わることを相転移(phase transition)といいます。

 (熱力学・統計力学において、相あるいは相転移はより一般的に定義されます。ただ、最も典型的な相転移は、固体、液体、気体という三態間のものです。)

 

 融点や沸点は、圧力に依存して変化します。

 圧力が極端に高い場合や低い場合には、以上で説明したような三態ではなくいずれかが欠けて二態になります(後述)。

 われわれが地表で生活している1気圧前後の圧力(常圧)では三態が現れる物質が多く、水はその典型です。

 (しかし、二酸化炭素 CO2 は、常圧では液体にならず、-79℃で凝華して固体(ドライアイス)になります。)

 

 ここで、固体、液体、気体についてあらためて解説します。

 気体(gas)とは、一定の形と体積をもたず、自由に流動し圧力の増減で体積が容易に変化する状態のことです。

 気体は、無限に拡大することが可能です。(実は、重力を考慮すると限界があります。)

 ミクロ的にみると、気相では分子どうしが十分離れていて、分子間の相互作用は分子のもつ電荷に由来します。

 

 固体(solid)とは、内部の原子どうしが互いに強く結合している状態です。

 液体と気体に比べて、変形も体積変化も非常に小さく、したがって密度変化も非常に小さいのが特徴です。

 ミクロ的には固体を構成する単位は原子、分子、イオン(これらを以下、構成粒子と呼ぶ)ですが、それらが整然と同じパターンを繰り返す場合と不規則に並ぶ場合とがあります。

 前者を結晶(crystal)といい、後者をアモルファス(amorphous)といいます。

 いずれにしても、物質内の構成粒子どうしの結合する力が熱振動(格子振動)よりも強く互いを拘束して移動できない状態です。

 

 液体(liquid)は、気体と同様に流動的で、容器に合わせて形を変えます。

 一方、気体に比べて圧縮性が小さく、気体とは異なり容器全体に広がることはなく、またほぼ一定の密度を保ちます。

 ミクロ的には、物質内の構成粒子どうしの結合する力が熱振動よりも弱く、互いの位置を拘束しないために自由に移動できるのですが、構成粒子どうしの結合する力も無視できず他の構成粒子とのつながりが常に存在する状態です。

 

 物理学では、気体については気体分子運動論、固体については物性物理学でミクロ的な基礎からの研究が進んでいます。

 ただ、中間的性質をもつ液体については、21世紀になっても気体や固体ほどミクロ的な解明が進んでいないようです。

 

 液体の水について有名なのは、次の諺です。

 「水は方円(ほうえん)(うつわ)(したが)う」

 出典は、韓非子外儲説(がいちょせつ)左上。

 水が器の形に従って形を変えるように、人も環境や友人によって良くも悪くも変わるというたとえです。

 

 密度の高い固体と液体を合わせて、凝集系と呼ぶことがあります。

 また、流動性を有する液体と気体を合わせて、流体(fluid)と呼びます。

 

 一般的には、共有結合による分子からなる物質の融点と、イオン結合や金属結合による物質の融点とを比べると、またそれらの沸点どうしを比べると、共有結合の方がずっと低く、イオン結合や金属結合の方がずっと高いという傾向が見られます。

 そして、共有結合による分子でも分子量が大きいほど、融点・沸点が高いという傾向が見られます。

 単体の炭素などは、共有結合で非常に大きな分子をつくるために昇華点が高くなります。

 

 ------------------------- 続 く ------------------------

 

 蒸発みたいに小学生でも知っていることもあれば、凝華のように今回の記事をまとめる過程で私自身初めて知ったこともあります。

 

 

 ★ 昨日6月17日(月)、藤井聡太棋聖に山崎隆之八段が挑戦する第95期棋聖戦五番勝負第2局が、新潟県新潟市「高志(こし)の宿 高島屋」で行われ、後手番の山崎八段が向飛車に振りましたが、111手で藤井棋聖の勝ちとなりました。山ちゃん得意のチョイ悪勝負術が棋聖に全く通用せず、山ちゃん自身が悪くなるだけでした。これで、あと1勝で棋聖5連覇となり、永世棋聖の称号獲得が近づいています。

 また、中2日置いて6月20日(木)には、いよいよ伊藤匠七段との運命の叡王戦五番勝負第5局となります。泣いても笑っても決着が付くでしょう、持将棋にならない限りは。いずれは匠七段にもタイトルを取っていただきたい気持ちはありますが、今は藤井八冠の期間がもう少し長く続いて欲しいというのが一ファンの勝手な希望です。