原始星によるダイナミックな磁束放出 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 ・赤ちゃん星が起こしたダイナミックな磁束放出

 アストロアーツ4月17日付記事、元は九州大学です。

 赤ちゃん星が起こしたダイナミックな磁束放出 - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>原始星が磁束を一気に放出して作ったとみられる構造がアルマ望遠鏡の観測で発見された。人間の“くしゃみ”にもたとえられるこの現象は、長年の謎であった星の誕生の理解を大きく進めるものになると期待される。

 

 >太陽をはじめとする恒星は、「分子雲コア」と呼ばれる星の卵が重力で収縮することで誕生する。この分子雲コアは磁力が働いていて、分子雲コアが収縮して原始星(赤ちゃん星)が誕生する際に、磁力線がたばねられた磁束も一緒に星に持ち込まれる。

 

 宇宙空間に存在する物質の大部分(約3/4)は水素で、残りのほとんどはヘリウムです。

 水素は、水素分子、水素原子、水素イオンという3つのあり方で存在していますが、このうち集まって星を形成できるのは水素分子だけです。

 

 分子雲コアは磁束が貫いていますが、分子雲コアが収縮するにつれて磁束密度も上昇します。

 

 >しかし、磁束が全部持ち込まれると、現在の太陽や既知の原始星が持つものより何桁も大きい磁力が発生してしまう。そのため、星が誕生する過程で磁束が捨て去られる必要がある。長い時間をかけて、一定の割合でじわじわと磁束が抜かれ磁力が弱まっていくという考え方が主流だが、仕組みはよくわかっていない。

 

 私は、これまで「星が誕生する過程で磁束が捨て去られる必要がある」という点を理解していませんでした。

 勉強になります。

 

 >この「磁束問題」に迫るため、九州大学/国立天文台アルマプロジェクトの徳田一起さんたちの研究チームはアルマ望遠鏡を用いて、おうし座分子雲内の「MC 27」という分子雲コアに潜む原始星を高解像度で観測した。この分子雲領域は約450光年の距離にあり、星の誕生現場としては最も近いものだ。

 

 分子雲コアは、赤ちゃん星の揺りかごのようなものです。

 逆にいうと、赤ちゃん星を観測するためには分子雲コアが邪魔になるわけです。

 

 >その結果、従来の考え方とは異なり、一気に磁束が捨て去られたと思われるスパイク状の構造が見つかった。この構造は原始星周囲の円盤から数億kmにわたって伸びている棘のようなものだ。また、約2000天文単位(3000億km)に及ぶ弓状のガス雲も観測された。

 

 これまでは星の誕生の過程で徐々に磁束が捨てられていったと考えられていたが、一気に磁束が捨てられた証拠が見つかったというのです。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。

 左側の(a)は、MC 27に潜む原始星周囲のガス構造です。

 中心の星印は原始星、灰色は弓状のガス雲、緑色と青色は原始星の過去のアウトフロー活動を示す双極性星雲を、それぞれ表します。

 右側の(b)は、原始星周囲の拡大図です。

 灰色は原始星円盤とそこから突き出た棘構造、赤色と青色は最も最近のアウトフロー活動の跡を表します。

 クリックしても拡大しません。キャプションも英語だし、あまり親切ではないですね。

 

 >「データの分析から、原始星系円盤から数天文単位に伸びる“スパイク状”の構造が見つかりました。それは磁束、ダスト、ガスが放出されたもので、磁場の不安定性が原始星円盤内のガスの密度の違いと反応して、磁束が外側に放出されたものです。人間がほこりやウイルスを空気とともに一気に押し出すくしゃみを思わせるので、赤ちゃん星の“くしゃみ”と名付けました」(徳田さん)。

 

 磁束の放出が、赤ちゃん星の“くしゃみ”なのだそうです(^_^

 

 >棘のような構造は、中心星と円盤の質量に起因する重力不安定性や他の分裂メカニズムでは説明できない。徳田さんたちは、磁束輸送現象として、円盤の縁に磁束が集中した際に原始星から離れる方向に浮力が働く現象「交換型不安定性」に着目し、棘は不安定性が起こった瞬間に作られるガス空洞の端の濃い淀みであり、磁束が抜ける現場をとらえたものだと考えている。一方、弓状のガス雲は、過去の「くしゃみ」によって生じた空洞が毎秒200m程度の速度で成長した結果生じた構造と考えられる。過去にも「くしゃみ」が起こっていたという予想外の可能性を示唆するものだ。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の真ん中の画像をご覧ください。

 左側は、(a)が原始星を取り巻く弓状ガス雲の存在を示す、HCO+分子の電波放射です。

 (b)は、原始星円盤に付随する棘構造の存在を示す、原始星近傍の濃いガスに含まれる塵の電波放射です。

 (c)想像図とありますが、(b)についての解説です。

 右側は、交換型不安定性前後のガスと磁束分布の変化です。

 くしゃみが起こる前は円盤の縁に磁場が拡散していき、降り積もってきたガスがさらに磁束を持ち込むため、円盤の端で相対的に磁場の強い場所ができます。

 円盤の縁に磁力が集中した際に重力中心の原始星から外側に向かう浮力が働き、突発的な爆発現象のようにして短時間で磁束が放出されます。

 放出された磁束は広がって、密度が低くなるのですね。

 画像クリックで拡大表示します。

 

 >分子雲コアと原始星との間には、磁束問題以外に、両者の角運動量に5桁以上の差がある「角運動量問題」も存在する。つまり、星の誕生を理解するには、星の卵による回転の勢いと磁束の捨て去りという2つの大きな問題を解決する必要があるが、磁束と同様に角運動量も星の収縮段階で失われると考えられる。この、星の回転を弱める角運動量の輸送には、赤ちゃん星の「うぶ声」として知られる、原始星円盤の上下に噴き出すアウトフローが密接に関わっていることがわかっている。

 

 角運動量とは、一言でいうと「回転の勢い」です。

 こちらについては、以前から「原始星円盤の上下に噴き出すアウトフローが密接に関わっている」ことが知られています。

 私は、磁束の問題にも同様にアウトフローが関わっていると思い込んでいましたが、どうやら違うようですね。

 

 赤ちゃん星は、「うぶ声」のアウトフローで角運動量を放出し、「くしゃみ」で磁束を放出していると整理できそうです。

 

 >今回見つかった赤ちゃん星の「くしゃみ」は「うぶ声」より少し穏やかな現象で、磁束が捨て去られる磁束問題の解決に直結するものとみられる。「うぶ声」と並んで「くしゃみ」は、赤ちゃん星の誕生と成長の謎を明らかにする大事な要素になり得るものだ。今後、「くしゃみ」が起こる条件を理論計算や観測で詳しく調べることにより、赤ちゃん星の形成過程や、原始星円盤とその中に含まれる微粒子などの特徴の理解が進むと期待される。

 

 まだ一例だけなので、同様の事例を集める必要があるでしょう。

 ただ、「磁束問題」の解決に向けた大きな一歩だと思います。

 

 

 ★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス199

   ni’o «lu ju’o mi na me la .adas. —sei .abu cusku— .i ki’u bo ge lo kerfa be ri cu clani sarlu gi ky be mi cu na sai sarlu

  [新段落] 「エイダじゃないのは確かだわ。」とアリスは言いました。「エイダの髪の毛は、とっても長い巻き毛になるけど、あたしの髪は全然巻き毛にならないもの。

 ju’o : 確かに。よく知っている/確信できる。心態詞(修飾系)UI5類

 me : 項→述語変換。項の前に付いてそれを「x1はx2(性質)において○○的」という述語にする

 ki’u : ~という正当な理由で。法制詞BAI類 <- krinu

 ge : 論理積。~と~。接続詞(論理・前置・項/述語/文)GA類 後部は gi でつなぐ

 kerfa : 毛/髪だ,x1は x2(本体)・x3(箇所)の。-kre- [生命・動物・肌派生部分]

 sarlu : 螺旋/渦巻だ,x1は x2(端)・x3(次元)の。 [空間・線]

 sai : 強。心情や態度が強いことを表す。心態詞CAI類

 

 引用符内は2つの文からなります。

 最初の文は { na me la .adas. } 「エイダではない」が主述語で、そのx1が mi です。

 その後ろにメタ言語命題挿入 { sei .abu cusku } が付いています。

 2つ目の文は、ge ~ gi … による前置論理接続構文です。

 前半の主述語はtanru { cu clani sarlu } 「長い巻き毛だ」で、そのx1は { lo kerfa be ri } です。

 照応代項詞 ri は直前の項 { la .adas. } 「エイダ」を受けています。

 後半の主述語は { cu na sai sarlu } [否定] [強]「巻いている」=「全然巻き毛にならない」で、そのx1は { ky be mi } です。

 (実はx1は元は { lo me mi moi } なのですが、これでは全く意味が通じないので英語原文から私が作文しました。)

 出典は、

 lo selfri be la .alis. bei bu'u la selmacygu'e (lojban.org)